初めての "女一人旅" で、世界中の宗教を巡る-松井鈴果

松井鈴果

早稲田大学政治経済学部4年の松井鈴果さんは、ワシントンDCにあるAmerican Universityへの留学後、そのまま「宗教」をテーマに世界一周をし、各地の聖地を訪ねた。大学生の彼女のこれまで、海外体験、そしてこれからを伺った。

 

001 ワシントンD.C.から、「聖地」を巡る旅へ

松井鈴果

Q.

松井さんはワシントンDCにあるアメリカン大学への留学を終えたあと、そのまま世界一周をはじめられました。帰国せずに世界一周をしようと思ったきっかけは何ですか?また宗教というテーマを設定した理由を教えてください。

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もともと留学する前から世界一周をすることを考えていました。小・中・高と途上国支援に関するボランティア活動に携わっていたこともあり、アフリカや南米などの途上国を自分の目で見たいという思いが強くあったのです。世界一周をしようとはじめから考えていたわけではなく、行きたいところをピックアップしたら、世界一周の旅というかたちになっていました。
テーマを設けたのは、青木優さん(旅アスリート2)のアドバイスにもとづいています。なにかしらの軸をもって世界一周をしなければ、スタンプラリーを回っているような感覚に陥ると指摘されたのです。私は小中高とカトリックの私立一貫校に通っていたので、キリスト教を信仰はしていないものの、宗教には強い関心がありました。キリスト教は私のアイデンティティ形成にも影響しています。そこで世界の聖地を回ることをテーマとして設定しました。

002 聖書の世界、現実の世界

松井鈴果

Q.

南米ではペルー・ボリビア、中東ではドバイ・モロッコ・イスラエル、西ヨーロッパや南アフリカへも訪れた松井さんですが、その中でも特に印象的だった地はどこですか?

 

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まずはイスラエルとパレスチナです。聖書の中で何度も登場する地だったので必ず訪れたいと考えていました。3大宗教の聖地が集まるとされているエルサレムですが、どの聖地でも大の大人が号泣している姿を何度も目撃し、宗教が人に与える影響の大きさを目の当たりにして圧倒されました。

ベツレヘムはイエス・キリストの誕生の地、エルサレムは命を落とした地です。現在は前者はパレスチナ、後者はイスラエルという2つの対立した地域になっています。パレスチナとイスラエルを隔てる壁や出入国審査の厳重警備を目の当たりにしたとき、キリスト教を重点的に学んできた私にはワンセットの両地が、宗教・政治など様々な問題により対立する地域となっている現状には強い違和感を覚えました。
またフランスのルルドの泉も印象的でした。私の母校の校長先生の部屋にはルルドの泉からくんだ水があって、生徒や家族が病気やけがをしたらわけてもらえたものです。その不思議な水が幼いころから身近にあった私は、その源泉であるルルドの泉を一度この目で見たいと思っていました。泉へはパリから電車で行くのですが、車内は聖職者と病人が8割を占める、ものものしい雰囲気でした。みんながルルドの泉を信じて、同じ目的地へ向かっているという姿に圧倒され、世界にまだこのような場所があったことに驚きを覚えました。幼い頃のおとぎばなしの世界に放り込まれたように感じられたのを覚えています。

003宗教を「信じる」ということ、「好き」だということ

松井鈴果

Q.

聖地をめぐり、いろいろな宗教を信仰する人々と出会ったことで宗教観は変わりましたか?

 

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私の宗教観自体に大きな変化はありませんでした。しかし、自分自身の宗教の捉え方について納得できたように思います。私はキリスト教を信仰はしていないけれど、キリスト教の教義自体は好きで人格面にも大きな影響をうけています。でも私の曖昧な捉え方は、宗教への関心が少ない日本の中では理解されることは多くありませんでした。私自身それについてしっくりこないところもありました。
しかしいろんな国を見て回る中で、いろいろな形の信仰の仕方があることを実感しました。
旅の中で、敬虔なカトリック教徒の家に生まれながらも私と同じような捉え方をしているイタリア人にも出会いました。敬虔な国でも、信じる度合いや信仰の表し方にさまざまなかたちがあるのです。自分のように、キリスト教を信仰していないけれど教えは好き、という宗教の捉え方でもいいのだと思うことができるようになったのです。

004 社会のことを知らなければ、社会のことは分からない

Q.

聖地をめぐり、いろいろな宗教を信仰する人々と出会ったことで宗教観は変わりましたか?

 

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これまで途上国支援や障碍者支援などのボランティアに関わってきましたが、新卒でこの分野の仕事を目指す気持にはなりませんでいた。ボランティアに参加する中で、人のお金を集め活用する側にも大きな価値がありますが、私は、自分の力でお金をつくることにまずチャレンジしたいと思うようになったからです。
これまでNPOセクターで勉強させて頂く事の多かった私は、資本主義経済のもとで回る競争社会を経験し幅広く学びたいという思いで銀行に就職することを決めました。現時点では、このフィールドで勉強させて頂きながら、いつか自分が情熱を注ぎたい対象を見つけ、ボランティア×お金の流れという形でアクションを起こしたいと思っています。若気の至りかとも思いますが、自分を信じ続けられる大人になりたいです。

005 新たな幸せの価値観

松井鈴果

Q.

海外生活を経験し、今日本の大学生として毎日を送られている松井さんですが、現在は何をしていらっしゃるのですか?

 

a2

現在は皆さんが想像される「普通の大学生活」をしていると思います(笑)その傍ら、ソーシャル・インパクト・ボンドという、投資家の利益と社会的課題の解決を両立させる制度を日本に導入するお手伝いをさせて頂いています。具体的には政府が投資家に成功報酬というインセンティブを与えて、NPOなどの中間支援組織の協力も交えながら社会的課題の解決を進めるというものです。投資家への金銭的なリターンを高めることができるので、社会的課題の解決は儲かるという意識改革を促すことが期待できます。

大学3年生までの忙しさとくらべれば、今がはじめて、大学生活の中で「何もない」時期だといえるかもしれません。ボランティア活動、学生団体、留学、世界一周をしているときは夢を追っているという疾走感がいつもあり、その忙しい生活がとても好きでした。しかし今のこのゆるやかな生活では、小さなしあわせを感じる瞬間がたくさんあります。今はこのゆったりとした時間の中で新たな幸せの価値観を楽しもうと思っています。

Tabi-Labo インタビューワー<平野咲子>早稲田大学政治経済学部1年生。いろんな話を聞いて、いろんなものをみるなかで、正解は一つではない、という感覚を養いたいと思っている。
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