ALSで母親を亡くしたライター「ALSはまだ終わっていない」

社会現象となった昨年夏の「アイスバケットチャレンジ」。各界の著名人から市井の人々まで、だれもが頭から氷水をかぶりました。
Elite Daily」に掲載されたこの記事は、ライターLauren Santye氏がALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した母の闘病の日々を綴ったものです。今、あらためてALSという病の実態を考えるきっかけになればと思います。

 


昨年の夏、バケツいっぱいの氷水を頭からかぶる人々の姿がソーシャルメディアで拡散され、連日テレビを賑わしていました。とあるALS団体が呼びかけた「アイスバケットチャレンジ」です。私だけでなく多くの人々がきっと、最初にそれを目にした時は困惑したはず。正直に言って私はこう思っていました。
「他にもっといいアイディアなかったのか」
「こんなことしたところで、ALSやその他の難病を救う手だてになんてなりっこない」

The Ice Bucket Challenge changed the fight against this disease. But our work cannot stop until we live in a world without #ALS. Please stand with us. http://ow.ly/GCfRD

Posted by The ALS Association on 2014年12月30日

 Reference : The ALS Association

ところが現実は、皆さんご存知の通り。チャレンジは誰も想像しなかったほどの驚異的なスピードでSNSを介して、世界中へと拡散していきました。その結果、じつに約220億円がALS義援団体に、約115億円がALS協会に寄付されたそうです。
今、アイスバケットチャレンジを続けている人は、恐らく一人もいないでしょう。しかし、この取り組みで伝えたかったメッセージや人々の意識までもが消え去ることはありません。

そして、今年も私と家族にとって、一年で最も特別な時期である5月がやって来ました。ALSに対する「認知度を高める月間」です。母がALSと診断されたのは、今から7年前の2008年春。当時、私は18歳でした。

shutterstock_223409944

やがて、母は動かなくなった

両親は私を椅子に座らせ、母がALSにかかっていることが告げられました。そして、この難病が生死に関わる病気で、すでにゆっくり進行していくことも。
私は正直、理解ができませんでした。当時、ALSが何であるのか知らなかったし、心の中では母が病気なのは間違いないけど、あと20〜30年は当然生きていけるものと高をくくっていたのかもしれません。

やがて母は歩く時に杖を使うようになり、そのうち歩行器が手放せなくなりました。2008年の10月には母の腰から下は、ほぼ完全に麻痺状態に。我が家は、母が暮らしやすいように改修工事改造を実施しました。車イス用の傾斜、車イスのまま行き来ができるシャワーなどが完成しました。
間もなく、母には24時間介護が必要となり、シャワーを浴びたりベッドで横になるにも人の手が必要になりました。 まるで幼少期に逆戻りしていくのを見ているようでした。そのうち母はひとりでは、動くことも食べることも、そして話すことすらできなくなりました。

家から大学までは一時間半の道のり。大学の授業中はとにかく不安だったことを覚えています。家から電話がかかってくるたびに、母の容態が急変して別れを告げるときがきたのかもと思いました。とにかく1日24時間、それが毎日。常に気持ちが落ち着くことはありません。不安を抱えすぎて夜も眠れないほど。
私は、ほとんど毎週末、母と会うために実家へ戻りました。

shutterstock_213863872

信念を失わなかった母の遺書

ALSは、間違いなく私たち家族を闇へと引きずり込んでいきました。なかでも、もっとも辛い思いをしたのは母でしょう。筋肉の衰えは著しく、無意識に痙攣し、傍からは常に貧乏揺すりをしているようでした。
そして、ついに彼女は自分で息をすることもできなくなってしまいました。ALS団体から人工呼吸器が付与されることに。もう、私の知る母の姿はどこにもありませんでした。

2009年8月11日は、晴れていて暖かい火曜日でした。人生最悪の日の朝のことを今でも鮮明に憶えてます。ALSが母の命を奪っていったのです。
真夏の太陽が照りつける暑い一日でした。大地も空も同じように母の死を悲しんで欲しいと思いました。

日を重ねるごとに、母への悲しみは少しずつ増していきます。でも母は、最後に私に強さを与えてくれました。
母は自分がALSであると診断されたとき、寿命が長くないと分かっていたと想像します。しかし、彼女はただの一度も悲観的になったり、信念を失ったりすることはありませんでした。死期を悟ったとき、初めてその人の本当の姿がわかります。

shutterstock_204929038

後に分かったことですが生前、母は私たちに手紙を書き残していました。その手紙には、誰かの死によって悲しみや怒りに明け暮れ、自分の人生を台無しにしてしまった人を見てきたことがあるから、私たちにはそうはなって欲しくないと書かれていました。その手紙のメッセージは、今でも私の心に深く刻まれています。

人生で起こる様々な経験は人間を成長させ、生まれ変わるきっかけを与えてくれます。母は自らの死という出来事で、私たち家族がより成長することを望んでいたと思います。そして、家族は母のメッセージを重く心に受け止めています。
自分たちの痛みを和らげるためにも、そして同じ病気と診断された人たちのためにも、今、私はALS団体に身を投じ、支援金集めのイベントに積極的に参加しています。

ALSの治療法は
まだ見つかっていない

2015年現在、いまだにALSの治療法は見つかっていません。この先約15年をかけて、新しい治療法を開発するのには、約2,000億円がかかるという試算もあるぐらいです。
昨年のアイスバケットチャレンジによって集められた資金によって、ALS治療の研究を進める4つの共同研究機構が新たに創立されましたが、決して諦めることなく、ただ前へ。今はそれしかありません。

5月は私の最も好きな月です。
それは母が生まれた月だからだけでなく、ALSについて広められる月でもあるから。私たちは資金集めのためのイベントに参加したり、あるいは、自分たちで開催したりすることによって、ALSと戦っているすべての人たちを応援しています。

私たち家族のように、ALSによって辛い思いをする人がこれ以上増えて欲しくない。私の唯一の願いは、いつかALSに対する根本的な治療法が見つかること。それだけです。

Licensed material used with permission by Elite Daily

2016年7月25日、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の発症の原因となる遺伝子が新たに見つかったと発表されました。「Nature Genetics」に掲載され...
2014年の夏に話題となった「アイス・バケツ・チャレンジ」は、インターネットの影響力も加わったことで世界中に拡散され、大きな社会運動へと発展しました。氷水...
アイスバケツチャレンジを覚えているだろうか。ALS(筋萎縮性側索硬化症)の研究支援と、この難病を広く世の中の人に知ってもらう目的で、2014年アメリカから...
筋肉への伝達機能が徐々に失われ、数年のうちに歩行や会話、呼吸ができなくなる。それが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)だ。映画『ギフト 僕が君に残せるもの』は、...
「アイウェア型デバイス」によって、画像の撮影やメールの送受信、音楽の再生のほか、照明、テレビ、エアコン、車イス、ロボット、ドローンと、身のまわりのものを操...
普段から運動を行って筋肉量をキープすることができれば、「健康体を維持したまま長生きできる身体コンディション」は整っていきます。糖尿病や認知症といった病気の...
筋肉は、体全体の健康に大きく関わってきます。「若いうちから筋肉を落とさないことが大切」「いま運動しておくことが未来の健康につながるんですよ」と、全国各地の...
スティーヴン・ホーキング博士は、宇宙を語る上で無視できない天才物理学者。彼の人生を描いた映画『博士と彼女のセオリー』が話題になったことは記憶に新しいですよ...
あなたの周りに、11月になると急に口ひげを蓄え始める外国人の友人はいませんか?日本ではまだあまり知られていませんが、じつはこれ「MOVENBER」と呼ばれ...
かわいい笑顔を見せてくれるのは、米ユタ州に住むGianessa Wrideちゃん。まだ、7歳の彼女は、今年のはじめに「脱毛症」と診断されました。その影響に...
常日頃から筋トレをしている人って、歳を重ねても若々しいイメージがありますよね。ここでは、久野譜也さんの著書『筋トレをする人が10年後、20年後になっても老...
Doctors Me(ドクターズミー)医師、その他専門家「Doctors Me」は、医師、歯科医、栄養士、カウンセラー、薬剤師、獣医などに直接相談できる、...
自分の人生についてちゃんと考えている人は、未来の自分の健康のために、いま何を頑張ればいいかが分かっています。だからこそ、自分の筋肉に”投資”してなるべく若...
Doctors Me(ドクターズミー)医師、その他専門家「Doctors Me」は、医師、歯科医、栄養士、カウンセラー、薬剤師、獣医などに直接相談できる、...
筋トレをしている割に、一向に筋肉量が増えてこない。こう感じたことはありませんか?じつはこれ、効果的でない方法でトレーニングをしている証拠。医学的な根拠に基...
科学博物館にいた、見知らぬ少年へあなたが誰か知りませんが、私の息子(Kaden)と遊んでくれて本当にありがとう。Kadenが床に落ちていたボールを拾えない...
5月6日、科学誌「Oncotarget」に掲載されたレポートによれば、バークレー大学やスタンフォード大学、ニューサウスウェールズ大学の研究者たちが、今後の...
近年、目覚ましい発展を遂げるAI(人工知能)ですが、イギリスの医療研究機関MRC(Medical Research Council)の発表によれば、心不全...
デッドリフトと呼ばれる筋トレ(エクササイズ)の方法をご存じですか? メタボという言葉が一般化してからでしょうか、体を引き締める運動のなかでも、おなか周りを...
つらい思いをしながら、ときにはくじけそうになる痛みにさえ耐えながら、ただひたすら黙々と行うストイックな時間、筋トレ。健康やスポーツ、あるいはリハビリのため...