大きなビジョンより、規則正しい生活を。 キャリアを積む上で大切な「6つの心構え」

現代において、キャリアへの憧れは男女問わないものとなりました。女性の職場がまだ少なかった時代から長年トップCAとしてキャリアを形成してきた私ですが、いわゆる「できる人」だったのかというと、そうではありません。

仕事を長く続けたい、仕事で成功したい。そんな方にぜひ知っておいてほしい心構えを紹介します。

01.
大きなビジョンはいらない!?
目の前の仕事に全力で打ち込む

shutterstock_264713135_2

私がANAにCAとして入社したのは、1986年の8月。それからずっとCAひと筋でやってきました。私の人生のなかで、こんなに長く続けていることは、他に何ひとつありません。
就職した当初は、CAだって、これほど続くとは思っていませんでした。何しろ私はもともと就職する気がなく、短大を卒業して1年以上ブランクがあったからです。友人がANAの既卒採用試験を受けると聞き、なんとなく私も受けてみた、というのが本当のところなのです。

古くからの友人は、今の状況にとても驚いています。「美津奈ちゃんは変わったよね」と言われることも少なくありません。でも当時も今も「キャリア志向」とはほど遠く、目の前の仕事を一生懸命やってきただけだと自分では思っています。

大きなビジョンを描いて仕事に勤しむのもすばらしいこと。しかし、目の前の仕事にただ一生懸命に取り組み続けることも、のちのキャリアにつながるのです。

02.
新人時代の辛さは、
「たくましさ」に変わっていく

shutterstock_268459703_2

今でこそキャリアを成した私ですが、当然新人時代がありました。1ヶ月ほど続いた新入訓練のあと、乗務員にはカウントされないOJTフライトを6日間行い、やっとCA1名としてカウントされるようになります。新入訓練の時期は毎日がテストの連続で睡眠時間が3〜4時間ほどしか取れませんでしたし、フライトも緊張して、何をしていたかほとんど覚えていないほど。

それまで私はアルバイト経験すらなく、就職への意欲も希薄でしたから、社会人として働くというだけで大変でした。が、忙しさは私を鍛えてくれました。深刻に悩む暇などなかったのです。

体力仕事ですから、フライトの合間の短い時間で力のつく食べ物をとらないと体が持ちません。肉類も生の魚も苦手だった私の偏食は自然に直りました。先輩方と食事をするとき、好き嫌いなど当時の新人には言えなかったという理由もあります。
日々の業務をこなすことで自然に体力もつき、細かった体も、業務に耐えられるくらいになりました。

忙しい新人時代。辛さももちろんあるでしょう。しかし今思えば、ただ身を任せるだけで、自分をたくましくしてくれる期間なのかもしれません。

03.
規則正しい一年の生活が
のちの数十年のベースに

2

白状しますと、新人訓練を終えてからの一年ほどのあいだ、私は母と同居していました。実家は名古屋、職場は羽田ですから、母は名古屋と東京を往復しながら、私の世話を焼いていたというわけです。今考えると、なんという過保護でしょう。

甘えた環境だったわけですが、母との同居には、よい面もありました。それは社会人し一年目に、規則正しい生活をしっかり身につけられたこと。

当時の国内線CAのシフトは、3日乗務して2日休み、3日乗務して1日休み、を繰り返すもので、勤務時間も朝4時台に家を出たりお昼前の出社だったりと、生活リズムを作りにくいシフトでした。

母が一緒だと、休みの日も遅めの時間の出勤日も、毎朝同じ時間に起きる生活をするよう口すっぱく注意してくれますし、食事にも気をつけてくれました。少し無理をしてでも早く起きて規則正しい生活リズムに戻すほうが体が楽になることに、自分で気付くようにもなりました。

一年後には完全に一人暮らしをはじめた私ですが、今でもそのリズムは変わっていません。長年CAを続けてこられたのは、新人時代に規則正しい生活リズムを身に付けられたからだとしみじみ思います。

04.
厳しい先輩は
避けて通るべからず

shutterstock_265895570_2

私が新人だったころ、今よりもずっと上下関係は厳しかったように思います。そのころは乗務すると、お客様よりも先輩の顔色を見て仕事をしていたような気もします。本末転倒ですね。

しかし先輩たちは厳しかった反面、私たち新人のことをよく見てくれていて、手取り足取り仕事を教えてくれました。厳しい先輩というのは、高いプライドと責任感を持って仕事をしているものです。いろいろな質問をして、新人が覚えているかどうか確認をしてくれることもありましたし、私もわからないことは何でも教えてもらいました。

厳しい先輩や上司の言葉に、落ち込むこともあるかもしれません。私もびくびくしながら過ごしたこともありましたが、こうして今にいたっているのは、先輩たちに鍛えてもらったおかげなのです。

05.
与えられたチャンスには
期待を上回る努力を

shutterstock_331764563_2

私は子供のころから自分で積極的に何かを始める、チャレンジする、という性格ではありませんでした。しかし、与えられたことや期待を素直に受け止めて、期待よりも上の結果を出そうと思ってがんばってきたところがあります。CAの仕事でも、まさにそんなふうに続けて徐々にプロになっていったのです。

会社は大きいものから小さいものまで、いろいろなチャンスを与えてくれます。甘えた新人CAだった私がトップCAと言われるまでになったのも、そのチャンスを「うれしくて光栄」と感じ、ついついがんばってきた結果です。

06.
視野を広げてくれるのは
「同業社への感動」

3

私は国内旅行は新幹線か車、海外旅行は他の航空会社で、と決めています。他の航空会社や交通機関を利用すればそのサービスが参考になり、自社のサービスを見直すいい刺激にもなるからです。自社のサービスだけしか見ていないと、どうしても同じような、決められたやりかたになってしまいがちです。

例えば、以前キャセイパシフィック航空を利用したときのこと。50席ほどのビジネスクラスが満席だったにも関わらず、担当のフライトアテンダントがすべてのお客様を名前でお呼びしていたのに感動しました。マレー系とおぼしき方だったので、ヨーロッパやアメリカの名前にはそれほど慣れていないでしょうし、私の「SATOOKA」という名前だって発音しにくいはず。その読み方をすべて覚えた努力に感動しました。

他社のサービスに心打たれると、視野が広がります。その後の自分のサービスに深みが生まれるのです。

スーパーCAの仕事術
コンテンツ提供元:里岡美津奈

里岡美津奈/Mitsuna Satooka

人材育成コンサルタント。1986年全日本空輸株式会社(ANA)に入社。在職中、VIP特別機搭乗を務め、皇室、各国元首脳の接遇で高い評価を得る。2010年に退職。現在は人材育成コンサルタントとして、一般企業や病院でコミュニケーションスキルアップの指導にあたっている。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。