五郎丸選手が、サモア戦後に受け取った試合のMVPより「嬉しかったもの」とは?

ラグビーW杯イングランド大会、1次リーグ第3戦。日本は強敵サモアに26-5で快勝。初の1大会2勝を成し遂げると同時に、悲願のベスト8進出へ望みをつないだ。

この試合の主役は、間違いなくFBの五郎丸歩。PGを含む正確無比な6本のゴールキックで16得点を記録し、「マン・オブ・ザ・マッチ」に選出。W杯通算得点も、それまでの日本記録(40得点)を「45」へと更新した。

W杯通算3勝目となる歴史的勝利を自らの得点で手繰り寄せ、その試合でもっとも優れたプレーヤーと認められた―。本来であればこれだけでも充分なように思えるが、さらに嬉しいサプライズが彼を待っていたのだという。

実は対戦相手のサモアからもその実力を認められ、特別な“カップ”を受け取っていたのだ。

改めて説明すると、ラグビーには試合終了を意味する「ノーサイド」という言葉がある。これは、激闘を繰り広げたとしても、試合終了の笛が鳴れば自陣と敵陣はなくなり、勝敗に関係なく健闘をたたえ合うという意。

ただし、この言葉を使っている国が、日本くらいであることは意外と知られていない。世界的に使われていた時代もあったようだが、現代では「フルタイム」が一般的。もともと海外で使われていたものが、日本で拡大解釈され、定着したと言われている。

とはいえ、今回の一件で証明されたのは、たとえ言葉が変わろうとも“ノーサイドの精神”が脈々と受け継がれているという事実だ。勝者を称えることは、口で言うほど簡単なことではない。ましてや、サモアの“この”状況なら尚更だろう。

4年間の集大成であるW杯で、1次リーグ敗退が決まった。敗れた相手は“格下”の日本。しかも、通算対戦成績では圧倒的に分があったにもかかわらず…彼らが大きな失望感を抱くことなど、容易に想像できる。

だからこそ、今回体現された“ノーサイドの精神”には途方もない価値があった。ラグビーがこれほどまでに世界で愛される理由は、きっと、こんなところにもあるのだろう。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。