政府に内緒で、6万人に「インターネット」を届けた男性(ネパール)

ネパールの山奥に暮らす一人の教師が、インターネット環境のない村にワイヤレスネットワークを導入しました。それも政府に内緒で。今から13年前のことです。

オーストリア人ディレクターClemens Purner氏によるドキュメンタリー動画を紹介します。

メールチェックのために
2日間かけて山道を歩く

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ネパールで教師として働くMahabir Pun氏は、インターネットが接続できる環境から遠く離れた山村(ナンギ村)に住んでいました。彼は、メールのチェックをするために近隣の大きな町(ポカラ)まで、2日間かけて山を越えていかねばなりませんでした。

これまで6年間、Pun氏は毎月山を越えて、往復4日間の道のりを歩き続けていたのです。

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「自分の村にインターネットがあれば…」ついに彼は、環境を変える決心をしました。

2001年、Pun氏は何のつてもないまま「BBC」にメールを送ります。自分の暮らす山村で、インターネットの接続ができるよう援助が得られないか、と嘆願しました。雲をつかむような可能性だったはずです。ところが、何度かメールを送った後、ついにBBC側から返信が。

「ネットを繋げたい」その熱意に
ボランティアがやって来た

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「なぜ、ネットワークを繋げたいのですか?」「山奥の僻地に暮らしているから」「どのくらい環境は整っていますか?」「古いコンピューターのパーツを分解し、木箱で自作のデスクトップを作ったところ」

Pun氏の熱意はBBCを動かしました。2001年、彼の活動や山村の現状を紹介する記事がBBCから発信、すぐに「力になりたい」とボランティアが彼の元へと駆けつけてきました。エンジニアとメールを交わし、ポカラからインターネット信号を無線機器で受信するという解決策が伝授されました。ところが、専用のアンテナはありませんでした。

そこで、テレビ用パラボラアンテナで代用。こうして、2002年5月。山頂に設置したアンテナが、ついにワイヤレス・シグナルを受信したのです。

地域医療、教育、
人材育成に大きく貢献

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このプロジェクトの成功により、ナンギ村の医療や雇用促進、地域社会の若者への教育に影響が。これにより、国内で学習してから他国でより高いスキルを身につけたり、海外で活躍できるよう若者たちを世に送り出すことが可能になった、と動画の中でPun氏は満足そうに語っています。

ですが、彼の行動は自分の村だけでは終わりませんでした。 2002年、さらに40カ所の村にインターネットを普及させるため、「ネパール・ワイヤレス・ネットワーク・プロジェクト」を開始。今日、ネパールの山村でインターネット環境が普及する礎を築くことに成功しました。

こうした功績が高く評価され、Pun氏はインターネットの開発、普及に大きく貢献した人物に贈られる数々の賞を受賞することに。

実は、政府非公認の活動だった…

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さて、動画内では言及されていませんが、実は、これらの活動はすべて政府非公認のものだったと「Big Think」は伝えています。というのも、ネパールは1996年からおよそ10年間に渡る内紛に突入しており、Pun氏がアンテナを立て始めた2002年当時、ネパール政府は、ワイヤレス技術の輸入及び使用を禁止する政策をとっていました。

2006年4月、長きにわたり続いていた内戦にも終止符が打たれました。ようやく国内に安定が訪れ民主主義を取り戻したネパール国民。議会はワイヤレスネットワークの合法化を認め、国内での普及が本格的に始まったそうです。

Reference : BBC , Nepal wireless Network roject  
Licensed material used with permission by Clemens PurnerBig Think

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