Bose創業者・7つの伝説的エピソード「 イノベーションのために、上場しない」

マサチューセッツ工科大学の研究者、アマー・G・ボーズ博士。この名前に聞き覚えがなくても、世界的に有名な音響機器メーカーの「Bose」なら、知っている人も多いはず。1946年にBoseを創立したのが、このボーズ博士なんです。

日本ではあまり知られていませんが、彼は数々の伝説的なエピソードの持ち主。アメリカではグラハム・ベルやアルフレッド・ノーベルと並んで称される、発明家でもあるんです。


高校生でラジオ修理業をスタート。ルーツは幼少期の境遇にあった

博士が生まれた家は貧乏でしたが、ボーズ少年には新しいおもちゃは必要ありませんでした。なぜなら、壊れたおもちゃでも自分で直してしまうくらい、機械に夢中だったから。

修理の才能は、高校生のときに開花。当時は最先端のガジェットだったラジオの修理業を、自宅の地下室を改造してスタートさせました。あっという間に家計の助けになるほどに成長し、最終的には地元フィラデルフィアでしばしば話題となるほどの修理店になったのだから、その情熱には頭が下がります。

三角形のスピーカーに込められた、ボーズ博士の「夢」

MITを卒業し、会社を起こしたボーズ博士が最初につくったプロダクトは「スピーカー」。自信を持って世に送り出したものの、まったく売れませんでした。理由はあまりに値段が高すぎたから。

それから試行錯誤して、数々の名作を生み出していくわけですが、ここで知ってもらいたいのは、「なぜボーズ博士が最初にスピーカーをつくろうと思ったのか」

博士が昔コンサートホールで聴いた、心を震わせるバイオリンの音色…あの感動を再現できるスピーカーをつくりたい。博士が起業したのは、そんなシンプルで、ロマンチックな夢を叶えたかったから、でした。

「静寂」をつくりだす、画期的なノイズキャンセリング技術

騒音と逆の音波を流すことで、不快な音を打ち消すという画期的なこの技術は、ボーズ博士が飛行機で思いついたもの。ヘッドホンをつけているにも関わらず、機内で聴こえるエンジン音の大きさに衝撃を受けた博士は、その場ですぐに方程式を書き始めます。しかも着陸するころには、その理論が完成していたというから驚き!もっとも、実用化するためには、10年の歳月と、50億円という莫大な資金が必要となったのですが。

技術が確立されたおかげで、今では私たちが普段からつけているようなイヤホンにも、ノイズキャンセリング機能が使われるようになりました。

秘密兵器「オーディショナー」は、世界中の大型施設に必要とされている

サウジアラビアのモスク、アメリカのスーパードーム、日本の宮城スタジアム。何の関係もなさそうな、この3つの建物には、ある共通点がそれは、Boseの「オーディショナー」というオリジナルシステムを使って、スピーカーを取り付けていること。

ちなみにオーディショナーとは、反響を予測するシステム。まだ建物ができていなくても、音がどう響くのかを予測することができるこのシステムを使えば、設置してからでは手遅れになるスピーカーの誤設置を防止することが可能に。世界中で引っ張りだこのスグレモノなんです!

音響メーカーなのに、「クルマ」もつくっていた!

Boseはクルマもつくっているって知っていました?といっても、エンジンやボディをつくっているわけじゃありません。開発を進めているのは、クルマの乗り心地に影響するサスペンションシステム。
残念ながら実用化はまだまだ先のことですが、ウワサでは「高級車並みの乗り心地と、スポーツカー並みのハンドリング」を併せ持つとのこと。

このプロジェクト、実は数十年もの間、極秘裏に進められてきました。クルマの音響だけではなく、乗り心地にまで手を伸ばすBose。そこには博士のベンチャースピリットが影響しているのかもしれませんね。

株式公開しないのは、イノベーションを起こし続けるため

売上高3000億円、従業員数は1万人。株主は20名程度しかおらず、今も非上場を貫く。短期的な利益は追わないし、儲けは研究開発に充てる。さらに、株式配当金は"ゼロ”!

上場しないのは、飽くなき研究開発に邁進し、イノベーションを起こし続けたいがため。短期間で成果を求められる上場と、成果がでるまでに長い年月がかかる研究開発は、相性が悪い。つまりBoseにとって上場は、「する必要がない」のです。

ボーズ博士、最後の「贈り物」に秘められた想いとは?

2013年、ボーズ博士は亡くなりました。晩年、所有していた株式の大半を、自分が学び、教鞭を執っていたこともあるMITに寄付したことを知っているでしょうか?

MITが受け取る株主配当金は、研究者を育てるために使われます。優秀な研究者はMITを卒業し、Boseに入社することもあるでしょう。そこで利益を生み出してくれればMITへの配当金も増え、さらなる研究者の育成に力を注ぐことができます。

つまりボーズ博士は、自分がいなくても会社がまわる「エコシステム」を遺していったのです。

50年のすべてがここに。
『BOSE COMPLETE BOOK』

ここで紹介したボーズ博士のエピソードや、生み出した数々のプロダクトを全て収録した書籍『BOSE COMPLETE BOOK』が刊行されています。カタログとしてはもちろん、博士のベンチャースピリットを学びたい人たちに向けた「ガイドブック」としてもオススメの1冊です。

Sponsored by Bose