迷惑どころか「賞賛の嵐」。レストランが店先に冷蔵庫を設置した、ただひとつの理由

フランスを中心に欧州で拡大しつつある、売れ残り食品廃棄禁止への気運。しかし、ここで紹介するのは、新興国でのお話です。

舞台はインド南部。主人公の女性は、欧州での食品廃棄や環境問題に対する議論に胸を熱くさせていました。

24時間、いつでも利用可能
困った人のための冷蔵庫

インド南部の街コーチにあるレストラン「 the Pappadavada」のオーナーMinu Paulineさんは、2016年2月フランス全土で禁止された、大手スーパーの食品廃棄や売れ残り食品の寄付を受けて、自身もレストラン経営者として、食品ロスに切実な想いを抱いていました。

彼女はある日の夜、レストラン前のゴミ箱から必死になって食べものをあさっている女性ホームレスの姿を目にします。時計はすでに深夜12時を回っていたとか。

「想像してみて。誰もがベッドに就くような時間だっていうのに、外に出て食べるものを探さなければいけない状況。それくらい、お腹が空いているってことでしょ?」

何かを始めなければ、何も変えることはできない
Paulineさんは、画期的なアイデアとともに立ち上がりました。

余った料理をホームレスに提供しよう。人目を気にしてゴミの中から拾わせるのではなく、いつでも誰でも、それを持っていける仕組みをつくればいい。彼女の回答は、レストランの店先に24時間、誰でも自由に開けて料理を持ち出せる「冷蔵庫」を用意すること。

「nanma maram(=善意の木)」と名付けられた冷蔵庫の中身は、もちろんレストランで余った料理。けれど余り物といっても、お客が残した残飯ではなく“食べられるけど廃棄”となってしまう、いわば余剰分。これを小分けにして、冷蔵庫へミネラルウォーターとともに入れておくことで、24時間いつでも誰でも開けて食事を取って行くことができるようにしたのです。

冷蔵庫を介して広がる
地域コミュニティー

いま、Paulineさんの冷蔵庫を、多くのホームレスたちが利用しています。彼女のレストランからも、一日75〜80人分の食事(すべて売れ残りのまだ食べられるもの)が提供されるほか、近隣の飲食店からも提供があるんだとか。さらに、新聞やテレビの報道で冷蔵庫の存在を知った地域の人々までが、路上で生活する困った人たちのために、と食事やミネラルウォーターを差し入れにやって来ます。ここまでは、Paulineさんも予想ができなかった様子。

それでも、「善意の木」と名付けられた冷蔵庫は、それが意味するままに人が集まる地域のコミュニティーを形成しつつあるようです。地域の問題は地域で解決する。Paulineさんの希望は、しっかりと幹を太くし枝を伸ばし始めています。

お金はあなたのもの
でも、資源はみんなのもの

当初、レストラン前に設置した冷蔵庫に、客寄せの単なる“売名行為”だと非難の声も挙がったそうです。けれど、Paulineさんはお構いなし。批判を百も承知で、そのリスクを背負いこむ道を選んだ彼女の決心が、「The Independent」のインタビューからも見て取れますよ。

「たとえ、それがリスキーだったとしても、社会が良い方向に向かうならやろうと思ったんです。だって、これまで誰もそれをやって来なかった訳だから。結果、何も変わらなかったんです。

どれだけ自分で稼いだお金を浪費しても、それは自分のもの。でも、社会の資源を無駄につかっていい訳はないでしょ。資源のムダもダメ、食品ロスもダメなんです」

Licensed material used with permission by Pappadavada
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。