「食で生まれる共感は、武力を使わない革命だと思う」- 楠本修二郎×久志尚太郎 -

カフェ・カンパニー代表の楠本修二郎さんと、TABI LABO代表 久志尚太郎の対談、後編は、「和食のもつ可能性」や「そもそも食べるということ」「瀬戸内の里海」についてなど、みるみる話が広がっていきました。

カフェ経営のみならず、地域創生や政府のクールジャパン戦略事業にも関わる楠本さんの独自の視点から、生き方や働き方へのヒントをもらいたいと思います。

前編はこちら

歩くよりも、走るほうが圧倒的に情報と熱量が多いんです

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久志 楠本さん、以前イベントで登壇していただいたときにすごく面白いな思うことをおっしゃっていて「出張先とか旅先で必ず、朝の町を走るんだ。匂いから風景を感じて、記憶に留めて、町のことを理解するんだよね」って。

楠本 うん、そんなこと言ってましたね(笑)。

久志 すごくいい言葉だなって感じて、あれからどこか行くたびに僕もやってるんですけど、確かにいいんですよ。町のことも理解できるし、体と匂いでインプットできるから、そのあとも想像力が働きます。より立体的に体に染み付く感覚があって、これからも絶対にやろうと思っています。

カフェとか新しい何かを生み出すときには、かなりのインスピレーションが必要だと思うんですけど、楠本さんって具体的にどうされているんですか?朝走るっていうのは、わかりやすい例だったと思うんですけど。

楠本 走るという行為は脳を活発化させて、五感を研ぎ澄ましてくれるんです。「歩いても五感で感じられるじゃん」って思うかもしれないけど、走るほうが圧倒的に情報と熱量が多いんですよ。

だから、匂いみたいなものも脳に強烈にガーンって入ってくるし、たぶん心拍があがってブラッドシフトしてるんだと思う。すごく強烈な印象で飛び込んでくるんですよ。だからそういう場をつくる記憶装置として、走ったり、自転車に乗って心拍をあげたり、町に飛び出すってのは絶対にいいと思う。あとは街の人の服装を見たり、物件を見たりと、少し意識するだけでまったくインプットが変わってきますよね。

あと、走ること以外にもうひとつあるとしたら、ニュースですね。僕テレビってほとんど見ないんですけど、ニュースは好きなんです。新聞も日経と朝日と読売を読むんだけど、朝日と読売の言い方の違いが面白いとか、どっち派とかではなく、視点が面白いっていう。

和食が地球をハーモライズする可能性

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楠本 あと、少し話は変わりますけど、和食を紐解くことはすごく面白いですよ。そもそも和食ってなに?と。和食が一番、とかではなくてね。その考えは敵対関係をつくるだけです。

和食っていうのは「和をもって尊しとなす」ものです。2050年には人口90億人になるって言われてるけど、地球をハーモライズすると考えたときに、もしかしたら和食が、経済とか社会とかいろいろなことを飛び越えて、ひとつのホールアースカタログ的な21世紀のソリューションになる可能性があると思っているんです。

久志 感覚的にはわかるんですけど、もう少し詳しく聞かせてもらえますか?

楠本 ひとつには「食べる」っていう行為にあると思っています。食べている時ってやっぱり共感があるし、会話があるし、1日×3食×365日の数十年間、誰と食べるか、なにをどう食べるかっていうことが、僕は武力を使わない革命だと思っているんです。キレイ事じゃなくて、本当にそう思っているんです。

久志 それ、すごいわかるなぁ。なんで詳しく聞いたかというと、言い方は違うんですが、僕も同じような視点を持っていて。日本食って体をつくる、人生をつくる、生き方をつくる、それらをインプットをするための、すべてがつまっている気がしているんです。

栄養という観点で見てもそうですし、コミュニケーションという観点や、食材・技術という観点でも同じで、体や人生をつくるのにすごく特化した食だな、と。嗜好品としての食じゃなくて、本当に昔からあったような、体をつくるため、人生をつくるための食、みたいなところに、これからの価値観はもっとシフトするんじゃないかなぁと。

「食べる」っていうのは、地球との関わり方そのものなんです

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楠本 マクロビの概念で「身土不二(しんどふに)」というのがあって、要するに、身と土は一緒だよっていう、地産地消的な考え方なんだけど、これって農耕文化、里山文化だから、より一層説得力がある。たとえば放牧民族は身土不二じゃないし、追いかけて狩猟する民族なんですよね。

いま、瀬戸内海がすごいきれいになってきています。昔は赤潮が発生して、どうしようもない海でした。当時「邪マモ」っていわれていた、アマモっていう食べられなくて、船をこいでいても邪魔な海藻があって、全部とっちゃったんですよね。結果的にミネラルが失われて、大量のプランクトンが発生して、赤潮になったと。僕が小学校のころは、瀬戸内海といえば、赤潮なんです。

ところが、いま瀬戸内は再生しました。ポイントになったのは、牡蠣の養殖。牡蠣が酸素を吸って、泳ぎながらプランクトンをとって、これでアマモを再生したんです。アマモっていうのは、言い方を変えると竜宮城のサンゴと一緒で、豊かな生態系のひとつ。つまり魚が育つわけです。瀬戸内がうまく再生できたのは、漁師たちがプレイヤーになったから。それがいま「瀬戸内モデル」って言われて、「里海」っていう言葉がグローバルワードになってきました。

それを見て、フランス人が驚いたわけです。なぜかと言うと、フランスでは漁師といえば、狩人なんです。狩人だから海を荒らす人って思われているのに、日本の漁師は海を守る人としてリスペクトされている。それがすごい、と。「フランスでも里海をやろうよ」と。

生態系を守って、その中で生きるっていう概念が「食べる」ということです。生活文化の仕方や、地球との関わり方そのものなんですね。

もうひとつ、グローバルな時代の中での和食の役割でいうと、たとえばナポリタンとか、ハンバーグとか、カレーうどんとかは「これ、なに食だ?」と。日本ってすべての文化をハーモライズして、自国の食にしているんです。

お茶だって、そもそもは中国から来ているわけです。それを中心に、日本に合う茶懐石をつくったりしている。舶来物を自国に取り入れて、編集していく。お互いおいしいものを食べあったら、それが僕は一番素晴らしいグローバル・コミュニケーションだと思っています。このローカルな視点とグローバルな視点。2つの意味でハーモライズするということかなって。

久志 いや〜、今日はすごい面白かったなぁ(笑)。ありがとうございました!

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楠本 修二郎

1964年生まれ福岡出身、カフェ・カンパニー株式会社代表。2001年に同社を創業して以来「WIRED CAFE」「Planet 3rd」など、その後の日本のカフェシーンを変えるきっかけともなる店舗を多数展開。その他設計デザイン、都市開発コンサルティング、地域活性化事業なども幅広く手掛ける。食文化についてはもちろん、そのライフスタイルや、既成概念にとらわれない独自の視点、経営哲学なども注目されている。

久志 尚太郎

1984年生まれ、株式会社TABI LABO代表。中学卒業後、単身渡米。16歳の時に飛び級で高校を卒業後、起業。帰国後は19歳でDELLに入社、20歳で法人営業部のトップセールスマンに。21歳から23歳までの2年間は同社を退職し、世界25ヶ国をまわる。復職後は25歳でセールスマネージャーに就任。同社退職後、宮崎県でソーシャルビジネスに従事。2013年より東京に拠点を移し、2014年2月TABI LABO創業。

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