君に伝えたいことがある。父が息子に宛てた書簡集『わが息子よ、君はどう生きるか』

私たちは、幼い頃に両親から教えてもらったことを、どのくらい覚えているでしょうか。大人になったいま、ふと思い返してみると、何気ない些細なひと言や、口うるさく思えた小言でも、幼い自分に見合った、教科書的な教えだったことに気がつきます。

18世紀のイギリスで、著名な教養人の一人と称され、大使、閣僚としても活躍したフィリップ・チェスターフィールド卿も、一人の男性として、そして、父親として、最愛の息子に向けて人生の心得を説きました。

彼が息子に贈った手紙をまとめた『わが息子よ、君はどう生きるか』は、限りない愛情と人間知に満ちた、父親から息子への書簡集の最高傑作。人生論の名著として、これまで世界1,100万人もの人々に読み継がれてきました。

今回はその中から、自分の「殻」が固まらないうちにやっておくべきことについてご紹介します。父親が息子に説いた教訓から、多くの知識を偏らずに身につける方法を学びましょう。

自分の頭でしっかり考えよう

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本を読んでいても、自分の頭で考えることをせず、書いてあることを次々と頭にたたき込んでいくだけの人が多い。それでは、やみくもに情報が積み上げられていくだけで、頭のなかが、ガラクタ置場のように雑多になってしまうだろう。読書をするときは、著者名だけで内容を鵜呑みにするのではなく、書かれていることがどのくらい確かなのか、著者の考察がどのくらい正しいのか、自分の頭でしっかり考えることが大切である。

人間は複雑で、矛盾だらけの生き物である。感情は激しく移ろいやすく、意志はもろく、心は体調に左右される。つまり、一貫したものはなく、その都度、瞬間的に変わるものなのだ。たとえば、何人かが集まって発言するとき、思いちがいをしている人もいれば、発言する際に、ニュアンスを誤る者もいる。人間がとる行為の理由について、どんなに究明しようとしても、憶測の域を出ることは難しいように思う。

また、過去の出来事を引き合いに出し、現在の問題を検討するのはいいが、それは慎重に行わなければならない。やたら今の問題と似ている事例を引っぱり出してくる人もいるが、物事は一つひとつちがうのだから、個々に論じるべきである。似ている事例は、あくまで参考程度にとどめておき、それを判断の拠りどころにしてはならない。

ほんとうの知識とは
目と耳と足で学んだこと

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どの土地を旅しても、その土地のことをしっかり把握して帰ってくる人がいる。たとえば、情勢や、他の土地との力関係、特産物、政治形態、憲法など。加えて、現地の人々と交遊を深め、土地独自の礼儀作法や人間性に触れてくる人もいる。旅したことが身につくのは、こういう人たちのことだと思う。旅をしても、目的地を転々とするだけで、宿のことや、次なる目的地までの距離などばかりに気を取られている人は、実にもったいない。

君も、どこかを観光することが決まったら、ぜひいろいろな情報を仕入れてほしいと思う。その国の内面的なことなら何でもいい。土地の歴史や現在の様子について簡単に紹介した小冊子などを読んでみて、わからない点については、内情の詳しい人物に聞いてみよう。得た知識がどれくらい役立つか、考えてみてほしい。想像以上だと思う。何にでも首を突っ込んでみることが大切だ。

外国でしてはならないこと

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海外へ行き、その国の言葉を一つも覚えずに帰ってくるのでは、せっかくの旅も水の泡だ。言葉を覚えるには、その国の人々と仲よくするのがいいだろう。老紳士は言葉づかいのお手本になるだろうし、若者とは一緒に遊べばいい。

しかし、7日間や10日間滞在しただけでは、自分が楽しむことはおろか、相手と親しくするのも難しいだろう。何カ月か滞在すると、だんだんと打ちとけ合い、よそ者の感覚がなくなってくる。これが旅の醍醐味ではないだろうか。世界中のどこでも、人間の持っている性質は同じなのだ。

分別のある人間は、どこへ行ってもその土地の風習を覚え、それに従おうとする。君が世界中のどこへ行っても、そうすることは必要だと思う。そのとき、一番役に立つのは、その場に見合った態度が振る舞える順応力だ。真剣な人に対してはまじめな顔ができ、陽気な人には明るく振る舞い、くだらない人物にはいい加減に相手をする。こういった能力を身につけるよう、精一杯努力をしてほしい。

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