【ジャズを知る】上野樹里がサックスを吹いた名曲「シング・シング・シング」はこうして生まれた

映画『スウィングガールズ』では、劇中で様々なジャズが流れます。なかでも「シング・シング・シング」は、ベニー・グッドマンの代表曲として有名です。

この曲が出来上がった時代のジャズやスイング、さらにはベニー・グッドマンについて、もう少し知りたいという方にむけて、油井正一さんの著書『生きているジャズ史』からご紹介します。

ゴージャスでノリが良く
メインストリームになった

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スイングは、1930年代から1940年代初頭にかけて流行ったジャズのスタイルのひとつ。それまでのジャズはアドリブが多かったことから、楽譜に頼らず耳でコピーすることが多かったのですが、スイングの場合はビッグバンド編成が取られ、楽譜をきちんと起こすようになったのです。

演奏は、バンドの入念な打ち合わせの上で行われ、アドリブソロよりも、緻密なアレンジが重視されるようになりました。ビッグバンドのハーモニーを重要視するアレンジのために編曲者が雇われるようになったのも、この頃です。

小編成の演奏に比べてゴージャズでノリが良く、ダンスにピッタリ。スイングは、あっという間にジャズのメインストリームとなりました。

ラジオとの相性が良かった
「スイング」

また、スイングは時代にもマッチしていました。当時のアメリカでは、唯一ラジオだけがリアルタイムに情報を伝えるメディアでした。ラジオで流す音楽は生放送という都合上、番組進行の時間通りに演奏される必要があり、いつ終わるか分からないアドリブのジャズよりも、演奏時間が決まっているスイングが重宝されたのです。

そんなスイングをけん引したのが、ベニー・グッドマンでした。

クラリネットを抱えた
天才少年

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ベニー・グッドマンは、ユダヤ系の白人の家庭に生まれました。10歳のときに初めてクラリネットを抱え、なんと翌年の11歳でデビュー。教わっていたのが元音楽教師とはいえ、たった1年でプロデビューというのは、彼の天才ぶりが分かるエピソードです。

12歳のときにはミシガン湖遊覧船のバンドに加わりました。こうして10代のうちから、様々な一流ジャズミュージシャンとセッションをする経験を積んでいったのです。

自分のバンドには
批判の嵐

そんな天才少年のグッドマンでしたが、ニューヨークに転居後の1923年、23歳頃に結成したバンドの評価は散々たるもの。どこに行っても批判の嵐で、ニューヨークやデンバーでの公演は、契約が打ち切られそうなほど不人気でした。グッドマンもこれには、すっかり自信を喪失してしまいました。

一夜にして、スターダムへ

「ドア・ボーイまでが、”このロクデナシのミュージシャン”と、僕の顔を眺めていたんだ」

すっかりやる気をなくしたグッドマンでしたが、彼の才能を信じる人の後押しを受け、アメリカ公演行脚は続けられました。イヤイヤ演奏をし、酷評を受ける日々でしたが、ロサンゼルス公演でその評価は一変します。グッドマンの演奏後、会場は沸きに沸いたのです。

翌日、そのニュースが全米で報じられると、レコードが飛ぶように売れ出しました。ラジオでは毎日のようにグッドマンの音楽が流れ、アメリカ国民をすっかり虜にしたのです。やがてグッドマンは、「キング・オブ・スイング」の称号で呼ばれるようになりました。

「スイング」はジャズより
クリーンなイメージ?

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ジャズはそれまで黒人を中心に発展してきましたが、スイングは白人主体で編成されたビッグバンドでした。しかし音楽的には、ジャズとスイングには本質的には違いはないと言えるでしょう。

ただ「ジャズ」という言葉には、これまでの歴史上で関わってきた娼館やギャングなどの公序良俗に反するイメージがありました。そのためスイングという名前に変えることで、クリーンなイメージを持たせようという意図があったようです。

ジャズマンに
白人も黒人もない

当時はジャズに対して世間の印象も悪く、黒人に対しても差別がまだまだ根強かった時代でした。しかし、ベニー・グッドマンは音楽を正当に評価し、自分が認めたジャズマンは白人/黒人に関わらずバンドに誘いました。黒人を積極的にバンドに加入させる白人は、グッドマンが初めてだったそうです。

1938年、グッドマンはカーネギー・ホールでコンサートを行いました。クラッシック音楽の殿堂であり名門のこの会場で、ジャズが演奏されるのはこれが初めてでした。このコンサートは話題を呼び、このとき演奏された「シング・シング・シング」は、グッドマン楽団の代表曲となりました。

もし、グッドマンがリベラルではなく、人種差別の強い人間であったなら、コンサートはこれほどの成功を収めなかったかもしれません。なぜなら、このコンサートを彩ったビッグバンドは、他の楽団で活躍していた黒人の精鋭ジャズマンたちが、特別参加したものだったからです。

1956年の映画『ベニー・グッドマン物語』では彼の半生が描かれ、カーネギー・ホールのコンサートシーンでラストを向かえます。グッドマンは、1986年6月13日にニューヨークの自宅で息を引き取りました。77歳した。

Top Photo by Steve Morley/Redferns
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