誰もが聞いたことのある「だみ声」。ルイ・アームストロングとは、いったい何者だったのか

「聖者の行進」「バラ色の人生」「セ・シ・ボン」「この素晴らしき世界」など、誰もが一度は聴いたことがある数々の名曲を残し、“キング・オブ・ジャズ”と称されるルイ・アームストロング。彼について、ジャズを世界中に広めた立役者と言って首をかしげる人はいないでしょう。漫画『BLUE GIANT』で、主人公のクラスメイトの女の子たちがジャズへの入門として聴いたCDも、ルイ・アームストロングでした。

そんな彼の生涯と功績を、油井正一さんの著書『生きているジャズ史』から紹介してみたいと思います。

ジャズアーティストとして
初めて「TIME」の表紙に

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ぎょろぎょろの目に、大きな口と、チャーミングな笑顔。ルイ・アームストロング。

彼のだみ声による歌は、一度聴いたら忘れられません。ルイ・アームストロングは20世紀を代表するエンターテイナーの一人です。トランペット奏者、ヴォーカル、役者に文筆と、マルチな活躍を見せ、ジャズ演奏者として初めて「TIME」の表紙を飾ったのも彼でした。

本来は
コルネット奏者だった

数々の才能を発揮したルイ・アームストロングですが、本来はただのコルネット奏者でした。しかし、その演奏テクニックは現在に至るまで比肩するものがおらず、後の奏者たちに強い影響を与え、現在でも多くのトランぺット奏者が目標としています。

個性的で豊かで精緻なフレージングは、コルネットをただの楽器演奏ではなく、芸術の域まで高めました。

けっしてうまくはない
一流のヴォーカリスト

アームストロングの特徴的な「だみ声」は、美声ではないし、けっして歌がうまいアーティストというわけではありません。しかし低く暖かな声で情感たっぷりに歌い上げ、聴いている人の心をつかみます。

現在も、ジャズ・ヴォーカリストたちに大きな影響を与えていることは言うまでもないでしょう。

偶然から生まれた
「スキャット」スタイル

彼のジャズ・ヴォーカリストとして一番大きな功績は、新しいスタイルを確立したことにあると言えるでしょう。1926年2月26日の朝、アームストロングにより世界で初めての「スキャット」が録音されました。スキャットとは、歌詞の代わりに「ドゥ、ドゥ、ドゥ」や「ダバ、ダバ、ダバ」など、アクセントがつけやすい意味のない音を充てる歌唱スタイルのことです。

ある日、アームストロングがレコードを録音中に歌詞カードを落としてしまい、苦肉の策として適当な音を充てて歌い続けたそうです。あとからその録音を聴いてみたところ、出来が素晴らしかったため、そのままレコードとして販売しました。そしてこのレコードが大ヒットを記録したのです。これがスキャットの始まりだと言われています。

これをきっかけに、歌詞を単にメロディに乗せて歌うのではなく、時には楽器のように使い、アドリブを入れるというヴォーカルの技法が編み出されました。

ハリウッドから
ジャズを広める

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1930年代に入ると、ルイ・アームストロングの人気は不動のものとなり、「サッチモ」の愛称で親しまれるようになりました。全米各地のショーを転々とし、イギリスやヨーロッパへコンサートツアーを行いました。

当時彼が契約していたレコード会社は売り上げを伸ばすため、サッチモに盛んに流行歌の録音や、彼の多芸さを使いエンターテイナーとしてコマーシャルをさせました。

また、1950年代には俳優としてハリウッドへ進出をし、数々の映画に出演します。黒人の音楽としてアンダーグラウンド的な扱いをされていたジャズでしたが、劇中のルイ・アームストロングに演奏によって、一般に認知されるようになったのです。

冒頭の「聖者の行進」「バラ色の人生」「セ・シ・ボン」も映画に使用されたり、フランスのシャンソンをジャズとして歌うことで人気を博しました。また来日公演も行われ、日本の人々は彼の生のブルースに酔いしれたのです。

その後も、CMでの音楽の起用やTV番組にも積極的に出演し、ジャズの啓蒙活動に努めました。こういった社会的地位を確立していたのにも係わらず、ルイ・アームストロングはずっと政治的な発言を避け、いち演奏者であるスタンスを崩しませんでした。

後年もベトナム戦争や黒人の差別などに対して積極的に意見を発するわけではありませんでしたが、「聖者の行進」のリリースや、アカデミー賞の辞退、政府の行事であるソ連への慰問を中止するなどし、自身の意思を活動という形で社会に訴えました。

1971年7月6日、サッチモは就寝中の心臓発作で亡くなりました。葬儀には、各界の大御所がこぞって参列し、別れを惜しんだそうです。

Top Photo by Underwood Archives/Getty Images
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