職業ホームレス、隣にいるのは「夢見てたもう一人の自分」

もしも、今と違う人生を歩めるとしたら。
人生のターニングポイントは誰にでも訪れるもの。それが正しい選択だったかどうかなんて、後になっても分からないことばかり。ここに登場するホームレスたちの多くも、その分岐点で私たちと同じように悩んでいたにちがいない。

あるアメリカの大学生が、ホームレスたちの“アナザーストーリー”を撮影し展示会を開催した。このプロジェクトThe Prince and the Pauperの本当のおもしろさは、彼らが「かつて抱いていた夢」にもう一度スポットライトを当てたことだけでなく、今も彼らの心にあるその夢を、実現させる一助になったこと。

My ideal self
( 理想の姿 )

「路上で生活する彼ら自身が、今の自分を変えられないと思い込んでいることが、何より人生を困難にさせているのではないだろうか?」

プロジェクトの根底には、そんな仮説があったらしい。

対するホームレスたちもフラッシュが放たれるごとに、胸の内にしまっておいた手放したくない想いが、ふたたび湧き上がる感覚を覚えたのではないだろうか。終了してから間もなく、彼らのうち数人の人生が、いつかの分岐点へと戻っていたのだ。

This is myself
( たどり着いた本当の自分 )

写真の男性Mukyasは、このプロジェクトに参加したことで1960年代にヒッピー運動に参加していた両親に対する誇りを持っていた自分を思い出したそう。いま、たくさんの人々に笑顔を届ける仕事を選んだ彼は、世界中の国々を訪れることを新たな目標に掲げている。すでに、メキシコ、ハワイ、インドネシア、パナマ、ボリビア、コスタリカ、そしてペルーを訪れている。

薬物とアルコール依存から逃れることができず、長年苦しんできたHenry。彼はいま、自分と同じように苦しむ人たちの力になりたいと、路上生活者たちの社会復帰を支援する団体に加わり働き始めた。

理想を叶えるのは、リアルな自分

ふたたび時計の針が動き始めたのは、ほんの一握りの人々。それも現実だ。実は生活に必要なお金、衣類、避難所は与えられていたものの、薬物やアルコール依存から抜け出せない人や、何事もなかったように路上生活に戻る人もいたというから。

なりたかった自分になれたのは、写真の中だけなのか、それとも現実か。
このプロジェクトがもたらしたものは、「夢」そのものではない。一歩を踏み出した人たちは、自らの力で希望を心に灯したのだ。 

Licensed material used with permission by Horia Manolache
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。