2世紀ぶりのカトラリー革命。スプーン博士の自信作「Goûte」

「西洋のカトラリーに劇的な進化があったかといえば、この2世紀ほど、じつはほぼ何もないに等しい。もしかしたら、そのことが原因で食べることのよろこびが希薄になってしまっているんじゃないだろうか」。

ここに紹介する画期的なスプーンの生みの親、Andreas Fabianの言葉です。プロダクトデザイナーでり、銀細工師としても活動する氏は、“スプーン博士”とも呼ばれる人物。

2011年、Fabianはロンドンのブルネル大学でスプーンに関する博士号を取得、食べものを直感的に口へと運ぶカトラリーを科学し続けてきました。

そして、たどり着いた1本のスプーン。それが「Goûte」。

食べるよろこびに立ち返る
指先のようなスプーン

従来のスプーンは“つぼ”と呼ばれるすくう部分に食べものを乗せて口へと運ぶもの。ときに、液状のものを混ぜたり、分量を計ったり、“つぼ”こそがスプーンと認識するファクターでもあります。
ところが、Goûteにはその“つぼ”がありません。ガラスでできた(木製のものも)1本の棒。ハニーディッパーのようにスティックで持ち上げ、すくい上げてからめとる。

スープのような液状の料理には適さないけれど、写真を見るかぎり、チョコレートスプレッドやピーナッツバター、ヨーグルトさえもきちんと口へと運ぶことができるようです。

なめらかでしなやかな人差し指をイメージしてのスティック形状だそう。ちょっとつまみ食いの指先ですくう、まさにあの感覚。ここにも、実験心理学に基づく緻密なリサーチがありました。

Andreasは言います。

「人間が健康的に食べ、直感的においしさを感じているとき、カトラリーよりもむしろ指ですくったり、それこそお皿までペロリと舐めたくなる衝動が誰にもあるはずです」。

その事実から逆算し、デザインにおこしたGoûteは、人間の根源的な欲求に対してエレガントに食べ物を口へと運ぶために生み出された、まったく新しいスプーン。

Goûteでしか味わえない
クリーム感と本来の甘み

2015年、オックスフォード大学の研究チームと協力し、Goûteを使うことで味覚におきる変化の調査が行われました。その結果として示されたこれらのメリットが、もしも本当だとしたら……かなり気になる!

①従来のスプーンと比較し、食べものの味の濃さを感知しやすかった。
②プラスチックスプーンで食したヨーグルトよりも甘さが強調された。
③被験者の味覚の感知が40%程度上昇した。
④クリーミーでなめらかさが増幅した。

洋梨、オリーブ、メープルの木を用いた木製のスティックが19ポンド、ヨーグルト向きのガラス製が29ポンド。
スプーン1本に4,000円とは、たしかに値が張る代物。それでも、クリームの感触や、甘い香りまで高まることが科学的に証明されていると聞けば、投資の価値もあるってもの。あとは、自分の舌で実証する他ありませんけどね。

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Reference: Michel / Fabian
Top image: © Michel / Fabian
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