無一文の旅が、私に教えてくれたこと。【オリジナル通貨編】

お金は心の余裕、というようなことをよく聞くけれど、こと「旅」に関しては必ずしもそれは当てはまらない。旅好きの冒険心は、衝動だけも十分な動機になり得る。あなただって、どこかにその心があるのでは?

ここに紹介する旅人の型破りなスタイルや、心に素直な生き方を見ていると、同じ経験をしていない自分でさえも「もっとできることがある!」と、ついその気にさせられる。3人の旅人のストーリーをめぐる『無一文の旅が、私に教えてくれたこと』、最終回の【オリジナル通貨編】をどうぞ。

持続可能な社会をつくりたい
Rob Greenfield(環境活動家)

ウィスコンシン州ノースランドで生まれ育ったRobは、子供の頃からボーイスカウトに所属していた。大学に進学すると、生物学、微生物学、水生科学の各専攻で学士号を取得。専門的な知識を深めていくなかで、自動車運転など、人間の日々の生活が環境破壊につながっていることの深刻さを痛感したそうだ。

2016年にRobの旅は始まった。お金を持たない代わりに、彼は「Do Good」という独自に創りだした架空の通貨を利用して、ブラジルからパナマまで渡る。Do Good、つまりは「良いおこない」をお金にしようという発想だ。

このプロジェクトの模様は、Discoveryチャンネル『Free ride』でシリーズ化され、多くの人々が彼の旅に注目していた。

Robのギモン:
豊かな人生には
なにが必要なんだろう?

彼の旅の目的は、ただ人のために良いことをするというもの。もちろん無一文で。道中、たとえ彼が「お金がないから助けてほしい」なんて言わなくても、自分からかって出る良いおこないを前に、人々は自然と彼をサポートしたくなったようで、彼のDo Goodプロジェクトはワークしていく。

通貨としてドル札を使うか、それとも“Do Goodするか”の一番の違いは、良いおこないの方が、「明らかに受け取る価値が高くなる」ということだとRob。このオリジナルの通貨を使うために、特段何かを始める必要はない。なぜなら、必要とする人が世の中にはとっても多いから。求める人がいる場所へと足を運び、彼らを助けることだけなのだから。

ときに果物や野菜を植えたり、ゴミを拾い、非営利団体でボランティアとして働きながら、Robはブラジルのリオからパナマへ到着。その距離およそ7,000マイル、かかった日数は72日だったという。
 
「正直言うと、途中で迷子になってリタイアしたいと思うこともあった。ジャングル、凍った山々、猛烈な砂漠など、大自然がいくつも立ちはだかったけどね。それすらも楽しみに変えて、乗り越えたよ」。
 
こう言って笑うRob。この旅が有名になったことで得た、メディア収入の100%をNPOに寄付した後、自身もHAPPY HEALTHY AND FREEを立ち上げ、持続可能な社会をつくるために、今も活動を続けている。

「必要なものはこれで十分」
背中に背負った111のアイテム

Robはこの旅を通して、自分が生活する上で本当に必要なものは何かを学び、もっともお金のかからない方法でそれらを満たす技術を身につけたという。

「ボクの場合、欠くことのできない所有物は全部で111個。それらすべてが背中(バッグパック)に収まるものだったんだよね」。

大切なものは、
いつもすぐ近くにあるもの

「本当のエンターテインメントにお金は一銭もかからない。雲、空気、緑の草、木々だってみんな楽しませてくれる」。

人と人との思いやりが、Robを確かにパナマまで連れて来た。人生を豊かにするものは、必ずしも目に見えるものだとは限らない。そして、幸せに生きるために必要なものは、きっとそんなに多くないのだろう。

三回にわたって連載してきた、3人の旅人のストーリーをめぐる『無一文の旅が、私に教えてくれたこと』、ほか2人のものがたりはこちらから。

第一回
ヒッチハイク編』

第二回
自転車編』

Licensed material used with permission by Rob Greenfield
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。