若くて青い人ほど観て欲しい『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』

誤解を恐れずにいえば、「変な」恋愛映画を観た。

何が変かというと、原作となったのは詩集なのだ。しかも、現代詩集として異例の27,000部の売上を記録しているそうだ。これだけでも、十分に変。でも、それだけじゃない。詩集の原作者は、最果タヒ(さいはてたひ)という。これまた変なペンネームだ。何か含みがあるのかと調べてみたら、本人曰く「無意味な語感と漢字変換のおもしろさだけで名前を決めた」らしい。じつに変な理由だ。

そんな彼女がつけた詩集タイトルが、そのまま映画タイトルになった。『夜空はいつでも最高密度の青色だ』。おそらく、その最終判断をしたのは『舟を編む』の石井裕也監督だろう。しかしながら、どう考えても変なタイトルだ。(けど、妙に心に残る)

不器用でぶっきらぼうな二人が
リアルで愛おしい

看護婦をしながら、夜はガールズバーで働く美香を演じたのは新人の石橋静河(いしばししずか)。左目に障害を持ちつつも、工事現場で日雇いの仕事をして東京で生き抜く慎二を演じたのは、日本映画界に欠かせない俳優の1人となった池松壮亮だ。

美香と慎二。大都会の片隅で暮らす不器用でぶっきらぼうな二人は、厳しい現実と向き合いながら、必死になって希望を見つけようともがく。不安や孤独を抱え、そして、様々な死と対面して、戸惑い、傷つき、諦めかけながらも真っ直ぐに生きようとする姿は、生々しくリアルに胸に迫ってくる。

恋愛映画といっても、ベッドシーンがあるわけでもなく、ただ冴えない男の子と女の子が、冴えない感じで近づいたり離れたりするだけ。やっぱり変な恋愛映画だ。だけど、二人の間のやりとりや、ある意味冷めた会話、それらによって醸し出される世界観は最高に密度が濃くて、リアリティを感じさせるのだ。愛おしくなるほどにー。

石井監督は、この映画のポイントを「若さ」と「青さ」だという。誰もがどこかで自分自身を二人に重ねることができるのはそのせいなんだろう。「あれも変だ、これも変だ」といってはみたが、そういう意味では、正攻法の恋愛映画なのかも知れない。

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
2017年5月13日(土)より新宿ピカデリー・ユーロスペースにて先行公開。5月27日(土)より全国ロードショー。公式サイトは、コチラ

Licensed material used with permission by 『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。