売春被害者だけが通う、インドのロースクール。「私を虐げた男たちに罰を与えたい」。

「チャイルド・トラフィッキング」

これは子どもの人身売買を意味する言葉。インドでは女の子を誘拐し、強制的に売春をさせているという事実があります。けれど、加害者が法に問われることはほとんどないのが現実。でも、その問題に果敢に立ち向かった人たちがいるのです。

「売春婦として売られたとき、私は9才でした」

そう告白する少女の映像から始まる、1本の動画。これを見ることが、国際社会に根付く深刻な問題に目を向けるきっかけになるかもしれません。

苦しむ少女たち
罪に問われない男たち

「インドでは、約120万人の子どもたちが売春婦として利用されています。そしてもっとも多い日で、一日のうちに20人もの男性と性行為をさせられているのです」

「私はひどく拷問されました。加害者たちは罰を受けず、未だ自由に歩き回っています。だから私たちは、今でも自由になれないのです」

「弁護士になりたい。そうすれば、人身売買をする人たちと戦うことができるから」

「私を虐げた男たちに罰を与えるの」

問題を根本的に解決するため…

この悲惨な現状に立ち向かうために設立されたのが、動画のタイトルにもなっている「School for Justice」という、法のスペシャリストを育て上げることを目的とした学校。法律関係の評判が高いインドの大学も、この活動に加わっています。

今年4月6日に開校し、19人いる一期生は皆、売春の被害にあっていたところを救出された少女たち。大学に入学するレベルまでサポートし、その後、彼女たちは法学士を取るため、5年間法律を勉強するのだそう。

彼女たちが弁護士や検察官になれるように教育し、犯罪者たちに自分たちが犯した罪を償ってもらう。そして最終的には、政府に、内部から法的システムの改善に向けた取り組みを行ってもらえるよう、働きかけることを目指しています。

120万人 VS 有罪55件

インドで体を売ることを強要されている少女の数は、推定120万人ほど。その中には、最も幼くて7才の子もいるのです。彼女たちは自宅から誘拐され、人身売買を行う人間に売られていきます。そして、協力させられるために拷問されることもあるのです。

それにも関わらず加害者が起訴される数はとても低く、2015年はたったの55件しか有罪判決が下りませんでした。このように、罪を受けるべき人たちが処罰を逃れていることが、解決に導かれない原因だと「School for Justice」は訴えます。

またこの問題には、人身売買や児童買春について深い知識を得ている弁護士や裁判官が不足しているという背景もあり、これらが学校がつくられる理由にもなったのです。

「全てのインド人にサポートしてもらいたい。これは私たちだけでは成し遂げられないことです。最終的には、この国が良くなるために法改正ができるよう、政府にも強力な援助をしてほしい」
ーFrancis Gracias氏 (学校を建設したNGO団体のCEO)

被害者の手で社会を変えていく、という発想。インドの未来はどう変化していくのでしょうか。

Licensed material used with permission by SCHOOL FOR JUSTICE
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。