難病を宣告された元アメフトのスター選手が、生まれてくる息子に贈りたかったもの

筋肉への伝達機能が徐々に失われ、数年のうちに歩行や会話、呼吸ができなくなる。それが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)だ。

映画『ギフト 僕が君に残せるもの』は、そんな難病と闘う元アメリカン・フットボールのスター選手スティーヴ・グリーソンのドキュメンタリー。病院で信じられない宣告を受けた6週間後に、妻ミシェルの妊娠が判明した。その時からある意識が芽生えることになる。

父親として生まれてくる子のために何ができるのだろうか?

スティーヴの答は、ありのままの自分の姿をビデオレターで撮り続けることだった。自分自身の哲学や生き様、父親としてできることすべてを伝えたかったのだー。

1,500時間の素材から生まれた
傑作ドキュメンタリー

この映画のはじまりは、2011年にスティーヴがつけはじめた息子へのパーソナルなビデオレター。

ALSの診断後の平均余命は、アメリカでは2〜5年といわれている。やがて、病気が進行すると話すこともできなくなってしまう。そこで、彼は様々なメッセージを残すことを決意したのだ。

その3年後、偶然にもドキュメンタリー監督のクレイ・トゥイールがそのビデオレターの一部を見ることになった。その際、クレイは、スティーヴが息子リヴァースに語るシーンで感情を揺さぶられたという。

D082b65f2e0bc515873625fcbc605bed6aa7de5b

「僕らは普通の父と子の関係を持つことはできないだろう。僕は君にボールを投げてやることもできないはずだ。簡単じゃないけど、それでも素晴らしい関係になると思うし、君が一人前の男として独り立ちするまで僕はここにいるよ」

この言葉が引き金となり、クレイは、スティーブに連絡をとることになった。そして、6ヶ月半にも渡る1,500時間のビデオ映像は、2時間の作品へと編集されることになったのだ。

42dc8f54ff3eeeed104a4ef9a6506f96d8fe4e45

ケンカや落ち込んだ様子
苦々しい失望も
包み隠さずに描写

1d26edf5b2034e557038794a640ceebc62f1dc89

本作には、あらゆるシーンに光があてられている。息子が誕生したりパパと名前を呼んだりといった喜びに満ちた瞬間だけでなく、スティーヴが歩けなくなり、話せなくなり、息ができなくなるといった状況も包み隠さずに描かれている。

それだけではない。育児と介護に疲れた妻ミッシェルとの口論、2人共が落ち込んだ様子、そして、病状が悪化してストレスがピークに達する苦々しい失望の場面など…残酷なまでにリアルなシーンも映し出されているのだ。だからこそ、心に響いてくる。

しかし、何よりも、僕にささったのは、スティーヴがどんな状況でも、決して生きることを諦めない姿勢だった。指が動かなくなれば視線入力装置、喋れなくなれば音声合成装置。そして、息ができなくなれば人工呼吸器を装着してでも生きることに挑み続ける姿には多いに示唆を受けた。

非営利の財団
「チーム・グリーソン」

20d32e5ecbba0556823a125f2ed19cde028ced68736a770b5599b28b93412da6e04676c37520a643

診断後、スティーヴはALSを公表。以来、自分の姿を公の前に現して、一般市民へのALSへの意識を高めるために様々な啓蒙活動に務めている。

2011年には、家族や友人たちのALSと診断された人の人生を応援するために非営利の財団「チーム・グリーソン」を設立。この財団の活動は、ALS患者のためにサービスや機器を提供して、彼らが豊かな人生を送れることを目的としているようだ。

具体的なアクションで最も知られているのは、「スティーヴ・グリーソン法」。2013年に米国で音声合成機器が保険適用の対象外になろうとしていた時、チーム・グリーソンは、保険福祉省の長官に直訴。2015年には、米国下院を通過し、オバマ大統領の著名によって正式な法律として承認された。 

1人の男の揺るぎない意志は、息子にメッセージを残すというだけではなく、米国の法律までも変えさせたのだ。

現在、同チームは、ALSの治療法の研究資金も集めている。興味があれば、「チーム・グリーソン」のサイトを訪れてみよう。

スティーヴの活躍の場は、スタジアムから、全世界へと拡がりつつある。 

『ギフト 僕がきみに残せるもの』
2017年8月19日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次ロードショー。公式サイトはコチラ

©2016 Dear Rivers, LLC

Licensed material used with permission by ギフト 僕がきみに残せるもの
社会現象となった昨年夏の「アイスバケットチャレンジ」。各界の著名人から市井の人々まで、だれもが頭から氷水をかぶりました。「Elite Daily」に掲載さ...
18世紀のイギリスで、著名な教養人の一人と称され、大使、閣僚としても活躍したフィリップ・チェスターフィールド卿。一人の男性として、そして、父親として、最愛...
いま、アメリカで話題を呼んでいる父と息子の一幕。結婚を決意した息子が、父にその報告をする。たったそれだけのやり取りですが、きっとあなたの心は動くはず!息子...
東日本大震災が発生してから、今年の3月で丸5年が経とうとしている。被災地の暮らしは、表面的には日常を取り戻したかのように見えるが、まだまだ問題は根深いーー...
ヨガをしたこともなければ、それがなんたるかも実際はよく分からない。自分のような人間がヨガ映画を観るなんてこと、普通であればまったく想像できません。でもこの...
チェコ生まれで、現在はノルウェーで暮らしているエヴァさん。今年で69歳になった彼女に、パートナーはいません。ここ数年間相手を探し続けているのですが、なかな...
NYのメトロポリタン美術館(通称メット)では、毎年5月第1週目になるとアート・ファンとファッショニスタが注目する美の祭典『メットガラ』が開催される。このオ...
私たちは、幼い頃に両親から教えてもらったことを、どのくらい覚えているでしょうか。大人になったいま、ふと思い返してみると、何気ない些細なひと言や、口うるさく...
『エターナル・サンシャイン』で監督を務めたミシェル・ゴンドリー。彼がiPhone7のみで撮影した11分の短編映画「Détour」が、Apple社の公式Yo...
映画鑑賞する際、監督や出演者をチェックする人は多いが、配給会社で映画を決める人は少ないのでは? けれども、多少なりとも社会問題に関心があり、世界で起きてい...
「ブーブは、逆から読んでもブーブ♪」そんな歌がいま注目されています。Boobは英語で"おっぱい"という意味。楽曲のアイデアは8歳の少年のものでした。が、参...
本来ならば、はた迷惑極まりない話です。だって、白昼赤の他人の家の前で、突然トランペットを吹き出すんですから。トランペット奏者のBryce Hayashiく...
あなたは、自分の息子に好きな相手ができたことを打ち明けられたとき、どう答え、何をアドバイスしますか?ここで紹介するのは、ショーン・アッシャーさん編集の『注...
これは、モスクワで開催されたフェンシングの世界選手権2015の様子をとらえた映像。しかし意外や意外、この大会で一際注目を集めたのは、スター・ウォーズでお馴...
イラストレーターのDomZombieさんは、3年前から毎朝小学生の息子のランチバッグにイラストを描いてきました。なんと、その数は400枚以上。プロならでは...
ビーチに設置された300インチの大型スクリーンで、星空の下、海風を感じながら映画を見る──。ゴールデンウィークにいつもとちょっと違う体験がしたい人には、開...
科学博物館にいた、見知らぬ少年へあなたが誰か知りませんが、私の息子(Kaden)と遊んでくれて本当にありがとう。Kadenが床に落ちていたボールを拾えない...
映画『ミスター・ダイナマイト:ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』が6月18日より順次公開される。これは、2015年に日本で公開された伝記映画に次ぐ、ミッ...
美食のトレンドを牽引するレストランと、オーナーシェフの4年間を追ったドキュメンタリー映画『ノーマ、世界を変える料理』が、2016年GWより全国で順次公開さ...
2016年4月30日(土)を皮切りに、『おそ松くん』、『天才バカボン』、『ひみつのアッコちゃん』などで知られる漫画家・赤塚不二夫の人生を追ったドキュメンタ...