ホロコーストのタブーを描いたエポックメイキングな映画

アウシュヴィッツ強制収容所でのホロコースト。もしも、加害者と犠牲者の孫世代が恋に落ちたら…。映画『ブルーム・オブ・イエスタディ』は、そんな“タブーの扉”を開けた挑戦的なテーマが設定されている。

映画制作のきっかけは
監督のパーソナルな想い

「ドイツでは、ホロコーストをテーマにした映画は何本もつくられてきたため、観客に展開が読まれてしまう」

とは、監督クリス・クラウス。つまり、戦争における犯罪の再検証をすることで戦争自体の愚かさを訴える、というステレオタイプなこのお題から脱却したかったようだ。そこで、今を生きる世代、あの惨事によって傷を抱える人々がどう前向きに生きようとしているかに焦点をあてた。

その切り替えが功を奏して、ドイツ映画賞主要7部門にノミネート。さらにドイツ国内で高く評価されるだけでなく、昨年の東京国際映画祭のコンペティション部門において、この作品はグランプリを獲得。

7810a586671bbe657fd798312afeff797f3582c7

ところで、主人公の男(トト)はナチスの戦犯を祖父に持ち、家族の罪と向き合うためにホロコーストの研究に打ち込む。モデルは、クラウス監督自身のバックボーンと重なっている。

じつは、監督の祖父と兄にもダークな過去があり、相当なショックを受けたそうだ。そして、ヨーロッパ各地の様々な記念館や施設を訪ねて、自身で調査を続けたとのこと。その際に、加害者と被害者の孫世代が、歴史をジョークにしながら楽しそうに話している姿を目撃したらしい。さらに、その二人は恋人という話を耳にして、本作の着想を得たようだ。

被害者の子や孫に
引き継がれるトラウマ

Edf79a0f3162971148d8df46f6835dee63220c14

もう一人の主人公は、ナチスの犠牲者となったユダヤ人の祖母を持つザジという名の女。彼女も、ホロコーストの研究をしている役柄だ。ほぼ全編を通して情緒不安定であり、挙句の果てには自殺を試みる姿も描かれている。

実際、ホロコーストの場合、生存者の子や孫が、親や祖父母の体験を追体験することで、そのトラウマも引き継がれてしまうようだ。そして、その子や孫に、情緒不安定や鬱状態、自殺未遂を繰り返すなど、深刻な症状が現れることも現実としてあるという。

 加害者と被害者を描いた
斬新なアプローチ

F7c1206f2fc24de8b42642fba1b0da6858471740

ホロコースト研究所で、出会うトトとザジ。二人は、アウシュヴィッツ会議の開催に向けて東奔西走する。その途中、二人の祖父母に関しての事実が明らかにされていく。そして、最終的にはラトビアの首都リガへとたどり着く。

あまり日本人には馴染みがないリガだが、ここは、ナチス・ドイツが、ユダヤ人を収容するためにリガ・ゲットーを創設した土地だ。ドイツ、オーストリア、チェコなどからユダヤ人が送られている。そして、この収容所から8kmばかり離れたリガ郊外の“ルンブラの森”では、推定2万5千人もが射殺されたといわれているのだ。

9e5263e5b7271532177cda663a4d9d910a661d37

映画のラスト近く、森の中にあるユダヤ人が虐殺された場所が美しい花で覆われるシーンはとても印象的だ。本作のタイトルは、直訳すれば“昨日咲いた花”。それは、どんな困難な時でも、美しい花は咲き、明日を輝かせてくれるいうメッセージだろう。同時に、加害者と被害者の間に、和解の花は咲くのかという問題提起にもなっている気がする。

最終的に、二人がどんな答を出すのかは、劇場で確かめてほしい。

『ブルーム・オブ・イエスタディ』
2017年9月30日(土)よりBunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー。公式サイトはコチラ

©2016 Dor Film-West Produktionsgesellschaft mbH / FOUR MINUTES Filmproduktion GmbH
    / Dor Filmproduktion GmbH 

Licensed material used with permission by ブルーム・オブ・イエスタディ
ホロコーストを生き延び、平和に至るまでの苦しみを長く世界に訴えかけてきた、ノーベル平和賞作家のエリー・ウィーゼル。2016年7月2日、彼はNY・マンハッタ...
ヨガをしたこともなければ、それがなんたるかも実際はよく分からない。自分のような人間がヨガ映画を観るなんてこと、普通であればまったく想像できません。でもこの...
「チャイルド・トラフィッキング」これは子どもの人身売買を意味する言葉。インドでは女の子を誘拐し、強制的に売春をさせているという事実があります。けれど、加害...
海外の人気動画サイト「CUT」。彼らの人気シリーズ「もしも◯◯と××が一緒にマリファナを吸ったら…」。今回集まったのは、この3人。左:ジム(ユダヤ教の指導...
目が見えなくても映画を楽しめることを伝えたい!松田高加子さん。視覚障害のある人が映画を楽しむ時の補助ツール・音声ガイドの制作を手掛けている「虹とねいろプロ...
「寝たきり」という言葉は、日本の高齢化が進むにつれて、どこかタブーのような扱いになってきました。たとえば「大変そう」「介護がきつそう」といったネガティブな...
『エターナル・サンシャイン』で監督を務めたミシェル・ゴンドリー。彼がiPhone7のみで撮影した11分の短編映画「Détour」が、Apple社の公式Yo...
「アシッド・アタック」という言葉を知っていますか?直訳して「酸攻撃」とも呼ばれるこの行為は、硫酸などをかけて顔や身体に重いヤケドを負わせるというもの。DV...
ダライ・ラマ14世が「戦争の現実性」について語った、言葉があります。人種や宗教を超えた“世界平和”実現に向けて、いま一人ひとりが何をすべきなのか?世界を行...
リハビリ機能を名目にした施設ではなく、障害を抱えていても健常者と同じように肉体を鍛えるためのトレーニングジム。言われてみればこうしたジムは確かに少ない。こ...
「モダン・ダンスの祖」と呼ばれる女性がいる。19世紀末のパリ社交界でトップスターの座に上り詰めて、のちのダンス界に多くの影響をもたらしたロイ・フラーだ。鮮...
いきなりですが、問題です。ここに一枚の写真があります。写っているのは、ダンボール箱に頭を突っ込み、寝転んでいる一人の男性。さて、あなたは彼の目的がわかるで...
世界的にも評価の高い、日本を代表する映像作家たちの手でつくられた“とあるアニメーション”が、いま大きな話題を呼んでいます。作品に対しては、伊勢谷友介や松田...
誤解を恐れずにいえば、「変な」恋愛映画を観た。何が変かというと、原作となったのは詩集なのだ。しかも、現代詩集として異例の27,000部の売上を記録している...
【速報】TABI LABO、可愛すぎる「天才指揮者」を発見!キルギス共和国のとある教会。聖歌を歌っている合唱団の後ろで見事に指揮を執る女の子。感情の高ぶり...
ビーチに設置された300インチの大型スクリーンで、星空の下、海風を感じながら映画を見る──。ゴールデンウィークにいつもとちょっと違う体験がしたい人には、開...
東日本大震災が発生してから、今年の3月で丸5年が経とうとしている。被災地の暮らしは、表面的には日常を取り戻したかのように見えるが、まだまだ問題は根深いーー...
いつも人の輪に囲まれていて、公私に関わらずお誘いが絶えない人、あなたの周りにもいませんか? 自分と特別違うようには見えないのに、どうしてあの人はあんなに人...
「Elite Daily」のライターBobby Boxさんは、とにかく映画を見るのが大好き。でも彼が好きなのは、映画館に行くことではなく、家で見ること。自...
自宅や映画館は言うに及ばず、ビルの屋上やビーチ、森の中、さらには無人島まで。近年は、上映イベントの充実もあり、さまざまな場所で映画を楽しめるようになってい...