廃墟の女王で、マヤ遺跡の話をした。

摩耶山・マヤ遺跡ガイドウォークレポート、最終回は、主催者である「摩耶山再生の会」事務局長、慈憲一さんへインタビューを行った。摩耶山再生の会とは? 人間味溢れるガイドウォークはいかにしてうまれた? そして慈さんの思う「遺跡の魅力」とは一体何なのか。

「遺跡の魅力は、
 ”永遠のものではない”ということ」

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——慈さんが「摩耶山再生の会」の活動を始めたのはいつごろなんですか?

 平成23(2011)年からなので、もう6年くらいですね。

——何かきっかけがあったんですか?

 摩耶ケーブルと摩耶ロープウェーが廃止になるという話があって、それは由々しき問題だと思って。みなさんに来てもらえるような仕掛けを作ろうということで始めました。

——慈さんご自身も、この摩耶山がある灘区のご出身なんですよね? 

 そうですね。「摩耶山再生の会」自体、ほぼ地元の人間で構成されているんですよ。

——ガイドでは「小さいころはこのあたりで走り回って…」というような実体験が入っていて、それがとても印象的でした。

 そういう昔話ばっかりしてますね(笑)。本に載っていることより実体験のほうが伝わるのかなと思って、なるべくそういうエピソードを入れるようにしています。

——「摩耶山・マヤ遺跡ガイドウォーク」が始まるまでの経緯は? 

 マヤカンだけじゃなくて、今日見てもらった天上寺跡とか、忘れ去られている遺構をどう地域資源化するかを考えていて。そのなかで「ツアーをしようか」という話に。それが3年くらい前かな。その時「マヤ遺跡」っていう名前をつけて、南米っぽくしようと(笑)。 

——ガイド中にも、「摩耶山はピラミッドなんだ」とおっしゃっていましたけど、それは誰の発案だったんですか? 

 僕です、そういうのが好きなんです(笑)。「摩耶」じゃなく、カタカナで「マヤ遺跡」って書いてたら、「え!?」って思って見てくれるかもしれないじゃないですか。僕はいいことしようなんて考えてないんで、そんなノリです(笑)。 

——おもしろいと思います(笑)。ガイド中、参道が年々傾いていて「来年はないかも!」とおっしゃっていたんですが、慈さんの姿勢は「遺構を無理に修復せず保存していく」ということが軸ですよね?

 そうですね。僕たちのスタンスはあくまでツアーをすることで、維持することではないんです。修復・保存となると、それはオーナーさんの意向になってきますしね。でも、軍艦島に行った時に、ガイドさんに「この景色、来年あるかどうかわかりませんよ」って言われて、僕は結構ぐっときたんですね。こういう遺跡の魅力は、「永遠のものではない」ことというかね。今この瞬間見てもらうというのが一番いいなと。それであえて「来年はないかもしれませんよ!」なんて言い方を。まあしばらくは残ると思うんですけど(笑)。

——私も思わずシャッターを切りました。

 山中の遺跡だけじゃなくて、摩耶ケーブルも「ずっと動いているものだろう」と思っていたら、急に廃止になるんですよ。永遠じゃないからこそ、その時々でしっかり大切にしていくということが大事なんだと思います。

「灘区には、オーナー、行政、地元の
 美しいトライアングルがあるんです」

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——ガイドウォークなどを通じて、摩耶山の遺構を地域資源として活用されているわけなんですけれども、何か行政からのサポートはあるんですか。

 はい。さっきも、神戸市・神戸国際観光コンベンション協会の方がガイドウォークに参加されてたんですよ。このツアーのおもしろいところは、オーナーさんと地元(摩耶山再生の会)と行政、3つが組んでやっているっていうということ。これは他の地域ではあまりない、結構美しいトライアングルなんです。

——具体的にどう役割分担をされているんですか?

 危険防止の柵をつけるのは神戸市、運営は地元、セコムなど防犯・危険対策はオーナーさんという役割分担をしています。こういう場合、どこかが「やらない」って首を横に振ることがよくあるみたいなんですけど、ここは和気あいあいとやってます。そこをうまいこと繋いでくれたのが前畑(洋平/NPO法人J-heritage代表、産業遺産コーディネーター)さんで。

 

ここからは一緒にツアーに参加していた前畑さんもインタビューに飛び入り参加。

 

 前畑さんがオーナーさんと、僕が行政と繋がって、ね? これないよね? 全国的に。

前畑 ないですね。まあ、最初はオーナーさんに怒られるんちゃうかなと思いましたけど(笑)。うちだけやったら絶対無理なんです。神戸市さんから見たら「おまえらにできるんか?」っていう話なんで。こんなふうに、地元団体さんにいい感じにバトンタッチできるのはなかなかない。

——めずらしいパターンなんですね。

前畑 そもそも僕に来るオファーは、組織を作るところからが多いんですよ。だけどリーダーシップをとれる人がおれへんから、結局、組織が分解することもあって。ここは仕組みがすでに出来上がってるところやから。 

 だから、このツアーに関してはかなりスピーディーに開催まで行きましたよ。去年やんね? やろうって言い出したの。

前畑 やろうと思えばもっと早くできましたもんね(笑)。

——みなさん、各方面、各分担でかなり好意的に取り組まれているという。ちなみにおふたりは、どんな感じで出会ったんですか?

前畑 慈さんと僕は、直接繋がっていたわけじゃないんですよ。ヘリテージマネージャーの松原(永季/NPO法人ひょうごヘリテージ機構H2O神戸・理事)さんっていう方がいて、マヤカンのこと相談したら「地元でええ人おるから紹介するわ」って。

 あれやな、新開地の飲み屋やったな(笑)。

前畑 そうです(笑)。僕は、慈さんの名前はいろんなところで聞いてたんですよ。まさかこういう関わり方になるとは。J-heritageができひんことを、お願いできたらっていうので——。 

 J-heritageには調査や維持を、僕らは周辺を使ったソフト部分を、ゆるく連携しつつそれぞれ担うという。

前畑 僕らJ-heritageのゴールは、最終的には地元の人に中を使ってもらうというところなので。そのための安全確認や調査をする、という役割を担ってますね。

——前畑さんはマヤカン保存プロジェクトのメンバーとして、調査目的のクラウドファンディングを実施されています。実際、摩耶山の知名度も比例して上がったのではないかと。

 いい流れになってると思うね。

前畑 なんかあそこ盛り上がっとるな、と思ってもらえればいいですね。でも僕、びっくりしたんが、ツアーの参加者にそんなガチの廃墟マニアがいないんですよ。クラウドファンディングでサポートしてくれているのも、たぶん、普通のおばちゃんなんです。

 そう。今日の参加者もそうやし、クラウドファンディングも、近所の方が「それやったらあたし1万くらい出すで!」って。ほかにも、ガイドウォーク後にはアンケートに答えてもらうんですけど、マヤカンじゃなくて「旧摩耶の大杉、よかった!」って言ってる人もいたりして。なんやろう、歴史好きなんかな?

前畑 僕は、摩耶山のポテンシャルやと思います。みんなマヤカンは知ってるけど、摩耶山にこんなのがあるっていうのは実は知らんくて、行ったら「やばい!」って。

——私も正直、ここに来るまでは「マヤカンだ!」って思ってたんですけど、振り返ってみるとそれ以外の遺構もすごく心に残ってます。

前畑 灘は、他の遺産もめっちゃおもしろいんですよ! 下の鉄のとこも案内してもらいたいです。 

 今は摩耶山の1コースだけなんですけど、全部で3つくらい作れると思っていて。あ、そうや、僕は別に山の人とかじゃないんです。みんな「摩耶山の人!」とか言いますけど(笑)。

——え、てっきり私も摩耶山の達人なんだと(笑)。

 摩耶山がたまたま灘区にあったからこうなっただけで、マヤカンが東灘区にあったらこんなんなってない。「あー前畑くんご苦労さーん」って(笑)。

前畑 あははは!

 灘区だったから、「ちっちゃい時来ました」みたいな話をできるしね。

前畑 僕ら、気になる場所がいろいろあるんです。(神戸市立)美野丘小学校とか、神戸製鋼所の高炉とか。

——たくさんあるんですね。ちなみに神戸製鋼とは?

 あそこ、茶色くなってる工場地帯あるでしょ? あれが神戸製鋼なんですけど、黒い塔みたいなん見えますか?

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慈 あれが(神戸製鉄所)第3高炉。神戸で唯一、鉄を作ってる高炉で。

前畑 高炉、なんか聞いてはります?

 今年で廃炉に。 

前畑 何かできないんですかね。撤去しちゃうんですか?

慈 撤去やなあ。 

——神戸唯一ということはとても貴重なものなのに、なぜなんでしょう?

 まあ「かたい」ですね、そこは。鉄の会社だけに。

——……うまいですね(笑)。

慈 こんなんばっかりや(笑)。地元を盛り上げる為にいろいろやってますんで、これを機会にぜひ「摩耶山再生の会」について知っていただけたらなと思います。

——これからの活動も楽しみにしています。ありがとうございました。 

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