人生、サーフィンだらけ。宮崎へ移住した道産子ふたり

格安航空会社(LCC)の存在も後押ししてか、ひと昔前に比べると日本はギュッと小さくなりました。それに伴い、ここ数年で日本人の新しい暮らし方のひとつとして定着したのが、地方移住です。

大上良輔さん(28)と齊藤雅己さん(29)も、そんな地方移住者。ふたりが学生から社会人時代を過ごした北海道を離れ、新天地として選んだのは、南国「宮崎」でした。

なぜ、宮崎に惹かれたのか? そして移住の決め手とは?

サーフィンがくれた
「きっかけ」

誰もが知る赤と緑の双子の兄弟のようなヒゲがチャームポイントの大上さんと齊藤さん。大上さんは一昨年、齊藤さんは4ヶ月ほど前に移住し、今は宮崎市内でカレーとタコスのお店「SAN BARCO」を経営しています。

ふたりが知り合ったのは今から10年ほど前のことで、きっかけはサーフィン。意外と知られていませんが、実は北海道にもサーフスポットは点在しており、流氷が流れる時期のオホーツク海以外は年中サーフィンができるのだそうです。当時のふたりは地元のサーフィン仲間でしたが、大学を卒業し、それぞれは別々の道へ。

大上さん
「僕は大学を卒業して一度アウトドアの会社に勤めたんです。そこで自然の大切さをビジネスの視点で学びました。働いているうちに『やっぱり自然の近くで暮らしたい』という思いがあって、お金を貯めて友だち3人と種子島に移ったんです。そこでサーフィンづけの日々を送ったり、アメリカに行ってまたサーフィンをしたり…。本当に、人生サーフィンだらけ。でも同時に今後のことも真剣に考えるようになり、仕事ややりたいこととサーフィンがいいバランスで楽しめる生活をしたいと思い始めました。そのために、夢だった飲食店をしながら、空いた時間で波に乗る生活することに決めたんです」

そこで大上さんが次なる移住先として選んだのが、宮崎。理由はもちろんサーフィンのベストスポットだったからと大上さんは言います。

大上さん
「決め手は宮崎の海のストレスのなさ。とにかく波もいいし、海もきれいでローケーションもいい。思い切りサーフィンを楽しめる環境が整っているんです。サーファーにとっては、これは何よりの魅力でした」

そして大上さんは宮崎のカフェで働きながら、新しい生活をスタートさせました。

宮崎行きを決めたのは
「アルゼンチンの最南端」

大上さんは種子島やアメリカに行っている間も齊藤さんと連絡を取り、「いつか一緒に店をやろう」と話をしていたのだそう。一方齊藤さんも、ちょっと変わった生き方を満喫していました。

齊藤さん
「僕は札幌の大学を出てから1年半は営業職をしていました。その後、『起業しよう』と思い立って東京に行き、網戸の張替え屋さんをスタート。けれど中々うまくいかず、結局自分が好きなことって何だったんだろうと振り返ったら、海とカレーだったんです。そして海のある街、鎌倉へ引っ越して、カレー店で働いてました。それから、旅も好きだったので、現地の人の家にお世話になりながら世界中のおいしいカレーを食べ歩いたりお店で働いて作り方を学んだり…。そんな生活をしていました」

世界中を旅する齊藤さんに大上さんから“お呼び出し”があったのは、齊藤さんがちょうど南米・アルゼンチンの最南端、パタゴニアにいたときのこと。

大上さんから「宮崎、すごくいいところだよ」と連絡があり、すっかり宮崎でサーフィン生活を満喫している旧友からの熱弁を聞いた齊藤さんは、吸い寄せられるように帰国。

でも、宮崎の魅力は
波より「人」だった。

宮崎で再会を果たし、長年語り合っていた「店をやろう」という夢の実現を目前に控えたふたり。しかし、もちろん飲食店経営は初めてで、ましてや宮崎ではふたりは「よそ者」。

果たしてうまく店を開店できるのか…と不安がないわけではありませんでした。

大上さん
「そこでビックリしたんですけれど、宮崎の人って驚くほど優しいんです。うちのお店も、もともとは建築会社さんがやっていたカフェスペースを居抜きで入居させてもらったんですが、そこの社長さんがとても協力的で、内装を手がけてくれたり『あの人紹介するよ』とか『頑張ってね』という言葉を当たり前のようにかけてくれる。僕はこんな場所、他に知らないです」

また、齊藤さん曰く「宮崎の人の良さは、親日国で知られるミャンマー人並み」とのこと。

齊藤さん
「ミャンマーではボランティア活動をしていたこともあってか、目の前の人のために何かお手伝いをする。そんな素敵なミャンマーの方に多く出会いました。宮崎の人にも似たような空気を感じます。他人に対して手を差し伸べてくれたり、気軽に声をかけてくれたりする。そしてみなさん本当に優しい。そんなところはそっくりだと思います。宮崎はサーフィンをする場所としての魅力も十分あるんですけど、『人』も大きな魅力のひとつだと感じています」

今は手探りながらも、自慢のタコスとカレーの店を開けながら、宮崎の生活を謳歌しているという。サーフィンしかり、何かしらのきっかけで宮崎への移住に興味がある人には「ぜひ一歩を踏み出してほしい」と言います。

齊藤さん
「何かやってみよう、宮崎が好きだ、そんな思いのある人にとって、何かきっかけを与えてくれる人が、宮崎にはたくさんいると思います。新しい環境に身を置くことは勇気がいることかもしれません。しかしそんな温かい空気が流れる宮崎だからこそ、新しい生活を始める場所としてはぴったりなのかもしれません」

好きな場所で、好きな仕事をして、好きなことをしながら暮らす。

「大人になったらこうやって生きなければならない」というステレオタイプな価値観は今やナンセンス。肩の力を抜いて、人生を謳歌する人がたくさんいる今の時代だからこそ、移住という選択肢は大いに“アリ”なのかもしれません。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。