その数、300駅。 『海の見える駅』を巡りつづける男の話

海の見える駅』というWEBサイトをご存知だろうか。

全国各地、厳選された『海の見える駅』を掲載しているこのWEBサイト。運営しているのは、村松 拓さんというひとりの男性だ。

「観光地とは違ってなかなか表に出ない、でも旅情あふれる素敵な駅を広めたい」と、日本の海の見える駅を紹介して早11年。今年8月にはついにガイドブックも発刊した。

そんな村松さんが今こそ語る、『海の見える駅』の魅力って?
メールインタビューに答えてもらった。

「これは、自分なりの絶景を探す旅」

——WEBサイトに「2004年の夏休み、初めての一人旅で見た常磐線の車窓が忘れられず」とありました。1991年生まれとのことなので13歳のときのことかと思いますが、その体験について教えてください。

村松:小さなころから、知らない景色に出会うのが楽しくて仕方がありませんでした。電車で近くの街を巡ったり、自転車でひたすら海を目指したり。そうしたなか、ようやく親が遠出を許してくれたのが、中学生になった13歳のとき。まだ見ぬ町を想像しながら、好奇心のままに計画を立てたのを覚えています。

—— ちなみに、衝撃を受けた駅はどの駅なんでしょう?

村松:福島県の末続駅です。特急列車で通り過ぎる、わずか数十秒の間だったかと思いますが、田んぼの先に広がる集落と海の美しい景色が車窓に広がりました。

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末続駅(福島県・JR常磐線)

村松:都会に近い場所で育ち、両親の実家ともに神奈川にあった私にとって、まるで絵に描いたような、いわゆる日本の故郷の景色を初めて見たのがこの瞬間です。「こんな景色が本当にあったんだ」と思ったのを覚えています。

—— 15歳のときにはWEBサイト『海の見える駅』を立ち上げていらっしゃいます。そのきっかけは何だったのでしょう?

村松:はじめは、「自分の旅の記録を見えるかたちでコレクションしていきたい」という自己満足からでした。しかし、『海の見える駅』を巡っていくうちに、多くの方にその存在を知っていただきたい、という思いの方が強くなりました。

——これまで、何ヶ所くらい『海の見える駅』を巡ってきたんですか?

村松:300駅近くを訪れています。関東近郊を除けば、学生時代には年3〜4回、社会人になってからは年1〜2回ほどのペースで巡っていました。ただ、書籍を出す前の1年半の間は、だいたい1ヶ月〜2週間に1回は取材に出ていました。

—— 300もの駅から、WEBサイトに掲載する駅をどのように選んでいるのでしょうか。

村松: 「駅構内から海が見えること」「自分が個人的に行ってみたい(来てよかった)と思えること」、そして「実際にサイトを見た方が行って後悔しない」ということを考えて選んでいます。仮に、駅だけでは暇を持て余してしまいそうなところでも、近くに見どころがあればその駅の良さとしてとらえ、取り上げています。

——これまで『海の見える駅』を巡ってきたなかで、何か印象的だった体験はありますか?

村松:2016年に岩手県の三陸にある、田老駅を訪れたときのことです。付近で唯一営業していた食堂を訪れた際、そこで働く地元の方はこう話していました。

「海を見るのが怖い。だから早く新しい防潮堤を作ってほしい」

海とは無縁の土地で育った私にとって、これまで、海が見えること=素敵なこと・喜ばしいことだというイメージを抱いていました。『海の見える駅』を続けてきたのも、他の方たちもみんなそのように感じているだろう、という思い込みによるものでした。しかし、海の見えるまさに現地で、海が見えることを素直に喜べない現実に直面しました。

田老では、新たに14m台の防潮堤を作る計画が進んでいます。

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田老駅(岩手県/三陸鉄道北リアス線)

——最後に、村松さんにとって『海の見える駅』プロジェクトとは何ですか?

村松:「自分なりの絶景を探す旅」だと思っています。

誰かが「ここきれいだよ!」と言ったから行くのではなく、自分の琴線に触れる美しい景色を、自ら探しに行く。そして、それが誰かの目に留まって「きれいだな」と思ってくれたら、日本の小さな魅力を、また一つ見つけたことになるのではないかな、と勝手に思っています。

海の見える駅は、そのほとんどが観光地ではありません。ただ、今までいくつもの反響をいただいて思ったのは、なんてことのないただの駅でも、十分に人をひきつける魅力があるということ。

これからも、季節や時間を変えて訪れては、海の見える駅の魅力をさらに掘り起こしていきたい、伝えていきたいと考えています。また、もしいずれ機会があれば、世界の海の見える駅にも行ってみたいですね。

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次回は、村松さんおすすめの『海の見える駅』5選【東日本編】をお届けします。

Licensed material used with permission by 村松 拓
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