中国人が総個人商店化する!?

仕事で中国と日本を行き来するようになって約5年。今では1年の半分以上を北京で過ごしています。

そんな自分にとって中国の変化のスピードは、もはや当たり前。何を見てもいちいち驚かなくなりました。

「経済発展」や「デジタル化」、そして「急速な社会的成熟」。

日本国内でもよく耳にするであろうこれらのワードは間違いなく中国の真実です。だけど、私が一番面白いなあと感じているのは、社会全体の大きな変化じゃなくて、普通の人たちの変化への対応っぷりです。

今回は、そのなかでもグループチャットの使い方について書いてみたいと思います。 

ナビよりも早い!? タクシードライバー同士のグループチャット。

日本でも『LINE』などでグループチャット機能を使っている人は多いと思います。中国でもグループチャットは盛んで、仕事でも当たり前に使われています。

例えば、私が感心したのはタクシーのドライバーです。

自宅までタクシーを利用した際、そのドライバーは私のマンションの場所がわからなかったらしく、中華SNSアプリ『WeChat』のグループチャットに向けてボイスメッセージ。

“おい、◯◯マンションだ、◯◯マンション! 行く方法を教えろ! 至急至急、早く教えろ!!”

するとグループ内から、ソッコーでいくつも返答があって、無事私は自宅に到着しました。聞けば、“ナビなんか面倒くさい。これが一番早いんだよ”とのこと。無線の代わりみたい。

車内にジャラジャラと私物のアクセサリーをつけるような、ちょっとワイルドなドライバーだったけれど、グループチャットを使いこなす様は、かなりカッコよく見えました。

知らない人同士でも積極的に。

同じマンションの住民同士や幼稚園のママ友なんかでグループを作るのも流行中……と、それだけなら日本でも同じだと思うんですが、北京では顔見知りじゃなくても、マンションの住人という共通項さえあればどんどんグループに入れていて、知らない人同士のグループも多いのが特徴です。

会ったこともない人の間で、何のやり取りするのかと言うと、子どもの古着、おもちゃ、家具など、いらない物を安価で売り出すんです。共同購入のお誘いなんかもあります。

私のマンションにもグループあるのですが、それが発覚したのは、マンションの子どもたちがみんな同じモデルのNIKEのスニーカーを履いていたから。

“何、このシューズそんなに流行ってるの?”と不思議に思って聞いてみたら、アメリカ旅行に行く人がオーダー販売していたんですね。グループチャットがマンションという小さな共同体のトレンドを作っているのを目の当たりにしました。

そんなわけで、私も早速グループに参加。

“マッサージの回数券を買ったんだけど、一回ずつ売ります”

“今度、日本に旅行する時にこれを買おうと思うんだけど欲しい人いる?”

などのやり取りが頻繁に行われています。また、商品写真の背景に他人のお部屋が写っていたりして、“ふむふむこういうインテリアなんだなあ”なんて、ひそかにお家をチェックする楽しみも発見しました。 

物のやり取りにとどまらず、グループチャットがきっかけで同じマンションに住む人と友達になったとか、付き合い始めた、なんてことも起きているそうですよ。

そもそも北京のマンションは、とにかくデカイ。10棟もの高層ビルが一緒になって広大な庭で結ばれているようなタイプが少なくありません。小さな町のお隣り近所のようなものですし、収入や生活水準が似たり寄ったりの人が多いので、売買のやり取りでも安心感があります。遠くまで取りに行かなくてもいいし、宅急便の必要もありません。スマホ決済で支払いも簡単です。

グループチャットでの売買には、人間臭い側面も。

グループチャットだけで、商売が成り立っている個人事業主も相当います。

オーガニックの中国茶を専門で販売している人もいれば、服飾工場と繋がってセレクトショップを経営している人も。

口コミで広がっていく商売なので、普通のネット販売よりも信頼できると、中国人の若い人たちは言います。

私も買い物をしたことがありますが、気軽に商品のことを訊ねたり、洋服の場合サイズ感などを着用写真で送ってくれたりするので、そのちょっとしたコミュニケーションも楽しい。“好きそうなの、入荷したよ”とかなりツボを心得た先行メッセージを入れてくれたりもします。

ネットショップを持つよりも敷居の低いグループチャットでの販売。

私がおもしろいと思うのは、売り買いだけじゃなくて、それにまつわる心の通った会話や人との出会いまでを含んだ人間臭い側面です。どこか、昔の物々交換とか個人商店を彷彿とさせるんですよね。

いつか中国人がみんな何かを販売している、という状態になっても私は驚きません。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。