限界集落に100人集めた盆踊り。大成功のヒミツとは?

住人数たった17名の限界集落に、なんと100名以上を集めるというイベントを企画し、見事に大成功させた人たちがいる。なぜそんな企画をしたのか、成功の秘訣はなんだったのか。

詳しい背景を主催者グループに聞くために向かった先は、新潟県の離島、佐渡島(さどがしま)だ。

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Photo by shunsuke shii

「限界集落」に生まれて

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新潟県佐渡島は、東京23区の1.5倍もある広大な島。

その北端にある「虫崎(むしざき)」という集落は、総人口数なんと17名。うち過半数が65歳以上の限界集落。その虫崎で生まれ育った兵庫 勝(ひょうご まさる)さんは、多くの佐渡島出身者がそうするように高校卒業後に上京、社会人として7年間活躍したのち、虫崎にUターンした。現在は一級建築士として建設業を生業にしながら、公民館長、消防団分団長…ありとあらゆる「長」を兼任し、文字通り集落を支える30代だ。

虫崎が限界集落である現実を受け止めつつも「何もしない、何も考えない、という住民の意識だけは避けたいんです」と兵庫さんは言う。「集落のみんなが何も行動しなくなったら、本当の意味での限界集落になってしまうから——」

かつては漁業が栄えて賑やかだった虫崎に、なんらかの明るい話題を考えていた頃、佐渡市内で新しいプロジェクトに出会った。

個人の夢 × 地域の課題

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地域支援戦隊 paletteの6人。上段左から右に、虫崎ご出身の兵庫さん、代表の熊野さん、石崎さん。下段左から右へ、伊豆野さん、本田さん、斉藤さん。

地域おこし協力隊として活躍するIターンの人、兵庫さんと同じように佐渡島にUターンし役場や農協勤務、自営業をする同世代のメンバーと、佐渡における社会課題を語り合った。IターンとUターンがそれぞれの立場を活かし、「社会課題」と「個人の夢」を合わせ考えるプロジェクトだ。

島の課題は、大小さまざま。関わる人たちも、個性いろいろ。

島の「どうにかしたい」と、誰かの「やってみたい」を掛け合わせたら、この島にまたひとつ、新しい色を増やせるかもしれない。課題と人を絵の具の色になぞらえ、自分たちは絵の具が自由に広がるパレットになれたら——。そんなイメージから「地域支援戦隊 palette(パレット)」と命名、活動を開始した。

そのなかで今回「虫崎に100人くらい呼んで、いつもの盆踊りを盛り上げたい」と考えていた兵庫さんのアイデアが採用されたわけだが、意外にも「虫崎の盆踊りは、正確にはpaletteとして2つめの企画だった」という。では、1本目の企画はどんなものだったのか?

paletteの代表を務める熊野 礼美(くまの れいみ)さんから聞いた話にこそ、盆踊り大成功の秘訣があった。

大切なのは、友だちの存在

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palette最初の案件は、その名もずばり「さど友つくらナイト」

佐渡島へ渡る船が発着する港=新潟市まで出向いたメンバーが、佐渡のおいしいものを持参し、来場者にスライドで名所を紹介する、さながら地域PRイベントだ。

「佐渡の人と友だちになろう、次回は佐渡で会おう、待ってます!」と呼び掛け、その受け皿として3ヶ月先の盆踊りを案内した。

確かに友だちに会いに行くのであれば、1時間ちょっとの移動距離もグッと近くなる。そこに絶品の食事があればなおのことだ。

さらに新潟の大学生に呼びかけ、学生のフィールドワークとして虫崎を案内。盆踊りを絡めて協力してもらった。島内に大学がない佐渡島は、高校卒業と同時に多くの人が島を離れるため、人口の内訳では20代がとても少ない。そこで若い世代へ呼びかけ、来訪してくれる「友だち」を増やした。

「限界集落に元気を届けたい」という盆踊りのコンセプトがはっきりしているからこそ、必要なことが明確に見える。何をしたらいいのかがわかる。

メンバーの脳裏に浮かぶビジョンは、日増しに現実的になった。

クラウドファンディングは
感動の連続

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盆踊り当日に向けて、目標100人の来場者に耐える会場の整備も必要になり、足りない予算をクラウドファンディングで集めはじめた。

それは知合い縁者からのサポートと同時に、結果として安定的な告知ツールになり、最終的に達成率112%という素晴らしい成功を収めた。その中でも兵庫さんと熊野さんが「忘れられない感動」というストーリーがある。

人々の優しさが
30年の時を経て虫崎に戻る

盆踊り会場に選ばれたのは、33年前に閉校されてしまった「内海府(うちかいふ)小学校」の虫崎分校。

海を見下ろす高台にある素晴らしい場所だが、30年以上もの時間の経過が各所を傷ませてもいた。「本当に100名来てくれるのならば」と、ツタがからまったまま放置されたフェンスを撤去し、傷んだままの床を補強するなど、念入りに準備が開始された。

そして初夏、作業の様子がメディアで報道されたある日、ひとりの女性から手紙が届いた。なんとその女性は、30年前、分校が閉校される前に教師として虫崎に派遣されていた男性の奥様。その手紙には、

・数年前に他界されたご主人とともに当時虫崎で暮らしていたこと
・集落の方々にとても親切にしてもらった感謝を今も忘れていないこと

などが丁寧に綴られていた。当時のご恩返しとして彼女は、クラウドファンディングへの支援と、なんと8月13日の盆踊りには30年ぶりに虫崎に来てくれたそうだ。

虫崎の人たちが持つおもてなしの心と、佐渡の包容力の大きさを物語る感動的なストーリーがそこにはあった。

いよいよ迎えた
盆踊り当日

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Photo by shunsuke shii
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Photo by shunsuke shii

8月13日、盆踊り本番。18時になると、会場に展開された流しそうめん、スイカ割り、かき氷など、ビール片手に楽しむ来訪者と地元の面々が集まり始めた。20時、盆踊りスタートに向けて、温まっていく手作りの盆踊り会場。

果たして、来場者数は100名に達するのだろうか…。

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Photo by shunsuke shii
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Photo by shunsuke shii

その数、163名。

受付にカウントしない幼児も含めると、じつに200名を超えるほど人が集った。17人しか住んでいない限界集落だということを忘れさせてくれる賑わい。これを大成功と言わず、なんと言おう。

写真を見ていても、人々の喜びの声が聞こえてくるようで胸が熱くなる。

過疎化を止める
妙案とは

虫崎は離島だが、限界集落は首都圏を含めて全国に増えている。その定義は「地域住人の半分以上が65歳超えの高齢者」であること。例えどんなに元気な高齢者ばかりであったとしても、次世代がいない=共同体として暮らすことの限界、を意味するそうだ。何もしないでいれば消滅してしまうが、過疎化を止める「成功の法則」は確立されていない。しかしだからこそ、paletteのように立ち上がる有志にアツい熱量があるのかもしれない。

友だちになる。そのシンプルな妙案こそ「行ってみよう」に繋がる答えなのではないだろうか。地域の良さを嬉しそうに話す彼らの笑顔に、地方のポテンシャルを改めて実感した。

また必ず会いに行こう。両手を広げて迎えてくれた、島の友だちに。

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Photo by shunsuke shii
取材協力・写真提供:地域支援戦隊palette
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