行き詰まった会議を打開する、魔法の「ひと言め」

「うまく話せるようになりたい」、「簡潔に話せるようになりたい」……社会に出たら誰しも感じることです。

ディレクターとしてNHKに入局後、フリーランスの放送作家として活躍している富樫佳織さんは、著書『やわらかロジカルな話し方』(クロスメディア・パブリッシング)で、会社で使えるトークテクニックをまとめています。

ここでは、会議で自分の意見を的確に伝える「魔法の一言目」を紹介します。

「これが正解とは限らないのだけど」

私(著者)が、放送局のディレクターから放送作家に職種変えをした時、メインの仕事となったのは番組会議での企画出しや打ち合わせでした。

たとえば番組の会議では、少ない時でも10人ほどの前で自分のアイディアを話すことになります。ここで私は「自分はこう思います。なぜならば~」というロジカル一本勝負の話し方をして失敗を続けていました。会議が盛り上がっているのにシーンとなったり、ディレクターに「自分の主張ばっかりして……」とたしなめられたりしたのです。

反対に、売れっ子と言われる放送作家の先輩は、いつも会議の場を盛り上げるのが上手でした。言いたいことはズバッと言うのに、同席しているスタッフの信頼を集めていたのです。そんな売れっ子の先輩を観察していると、話し方に共通点があることが分かりました。

それは、徹底的に「相手の気持ちや目標」を大切にしていることでした。さらに、その工夫は「話し出しの一言目」にうまく凝縮されていたのです。

【例】
・会議で着地点が見つからずに煮詰まっている状況。
・誰かにまとめて欲しいとみんなが思いながらも、自分がその役割をするのは怖いと感じている。

【売れっ子の先輩はどうしたのか?】
・空気を読み、一言目に「これが正解とは限らないのだけど」と前置きをして、自分の意見を言うことが多かった。

こう言われると、聞いている方は意見や正解を押し付けられているとは感じません。あくまでも一意見を聞いて自分も判断しようという姿勢になります。この一言目をつけて話すと、「でもそれってさぁ」と直接的な批判をされることが少なくなり、会議も円滑に進むのです。

「今のお話の流れで考えたのですが」

自分がコツコツと進めてきた案件がゴールに近づいている時、突然クライアントや上司からハシゴを外されるようなことがあります。悲しいことに「え! 今までの打ち合わせと全然違うじゃん!」という内容を、サラリと伝えられる名人が世の中にはいるものです。

決定を覆すことはできないにしても、ただ言うことを聞くのではなく「自分の主張をしておきたい」。そんな時に使える一言目が「今のお話の流れで考えたのですが……」です。

これは相手の意見に乗って、自分の意見を伝えるための重要な「一言目」です。

【例】
進めていた仕事について、上司がちゃぶ台をひっくり返した。

【適切な返答】
「今のお話の流れで考えたのですが、ここまで進めてきたコストや巻き込んでいる関係者の心象を考えると、いきなり方向性を変えるのは厳しい状況です。もう一度、上に掛け合ってもらうことはできますか?」

……とにかく相手目線で会話をすることが大切です。相手の言葉を否定するのではなく、相手の意図を取り込み、自分の意見と混ぜて投げ返す。それだけでやわらかい印象になります。

雑談に必要なのは
相手が聞きたいことを選ぶテク

ここからは番外編です。同僚や上司などへどんな会話をすれば良いのか「仕掛け方」について説明します。

会話前のウォーミングアップには上手な雑談が効果的です。ところが、雑談ほど難しいことはありません。トピック次第では、かえって空気が悪くなるリスクを伴います。

そんな雑談ですが、雑談ネタは「相手目線」に立って考えれば、迷うことはありません。自分が話したいことを話すのではなく、相手が聞きたいことを選ぶテクニックを使えば良いのです。

初めて会う相手でなければ、それまでの会話で、相手の趣味や興味を持つことが分かるでしょう。そこで、次に会うまでに相手が興味を持ちそうな話題を見つけたらストックしてみてください。普段、ニュースサイトや情報サイトをチェックしている時に「あ、これはあの人が好きそうな話題だな」と思うものがあれば、そのままPCやスマホで自分宛にURLをメールで送信をする……それだけです。

相手の趣味や興味が自分のまったく分からないジャンルだった場合でも、やはり雑談は相手に合わせた方がうまく話せます。

たとえば私は、打ち合わせ相手にサッカーファンが多いのにも関わらず、いまだにサッカーの話にはついていけません。ですから、サッカーの情報を目にした時も、スルーするのではなく、相手に「何を質問しようか」と考えるようにしています。質問をすれば、相手は必ずいろいろな視点で情報を教えてくれるので、人柄もわかりますし、知らない情報も得られます。

自分宛のメールに情報を送っておけば、打ち合わせに向かう移動時間で内容をチェックできるので、会話のシミュレーションもできてとても便利ですよ。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。