ハックしどころがたくさんある「エロ」は、最強の体験コンテンツ。 池澤あやかインタビュー


「エロ」は、人々の妄想を掻き立てるもの。
 
そこに宿るファンタジー性は、人間の可能性を切り拓く創造力、そして想像力を大きく高めてくれる大切な要素なはず。この特集では、エロスとファンタジーの密接な関係について、様々な舞台で活躍する「表現者」にオープンマインドで語っていただきます。
 
第4弾は、タレントでありながら、エンジニア・プログラマーとして活躍する池澤あやかさん。「エロ」という時代を問わない人類の共通コンテンツと、人々の欲求やイマジネーションがその進化を助長してきたともいえるテクノロジー。さらなる発展をつづける「アダルトコンテンツ」は、今後どうなっていく? 未来予想を聞かせていただきました。

池澤あやか(いけざわ あやか)

1991年大分県生まれ。慶應義塾大学SFC環境情報学部を卒業。2006年の第6回東宝シンデレラオーディションで審査員特別賞を受賞し、同年映画出演デビュー。舞台やCMに出演するなどタレントとして活躍する一方、プログラマー・エンジニアとしても多数のメディアに出演中。

欲求をテクノロジーで発散する先輩の姿を
なんかいいなって思いながら見ていた

©YUJI IMAI

 

——女性のプログラマー・エンジニアってまだまだ珍しいように思います。大学生の頃にはもうこの職業に就きたいと考えていたんですか?

 

通っていた大学にプログラミングの授業が多くて、興味ある授業をとっていったらたまたまエンジニアリング方向になっていったという感じで……出身も文系なんです。在学中にウェブ制作会社でアルバイトをはじめて、実務的なことをさせてもらいながら徐々にプログラミングをするようになっていって。気づけば本格的にそっちの方向に……(笑)。

 

——池澤さんが思っている、プログラミングの面白さって?

 

完成したときに嬉しくなるのは、ものづくりの楽しさと一緒のような気がします。つくったウェブサイトがローンチしたときとか、VR系の研究をやっていたときは、作品を誰かが体験してくれてその感想をもらえたときとか……でももしかしたら、「実現したいこと」を空想しているときのほうが楽しかったり面白いかもしれないですね。

 

——「こんなものをつくりたい」っていうのは、あくまでも生活の効率化につながるものが多い? 自身の純粋な欲求から生まれたりするものもあるんでしょうか?

 

まずは「まだないものをつくって誰かを驚かせたい」という気持ちは強いですね。たとえば、今までのVR界で「ヌメヌメする」という触覚はあまり提示してこられていないんじゃないかとかいう話になったときは、「ウナギを捕るVR」を考えたり。

あとは、麺棒でいろんなものをつぶせたら気持ちいいんじゃないかという話が出たときは、人の顔とか(笑)、やかんとか、そういうものをつぶすバーチャル体験ができるっていう作品を学生時代にチームでつくりました。単純な欲求からだったりもしますね。

 

——単純な欲求でも、それを満たす技術を持ってるってすごいですね(笑)。

 

所属していた研究室には「とりあえず作ってみよう」というカルチャーがあったので、先輩たちも個人のささいな欲求を何か作っては晴らすということをしていて。

例えば、研究がめちゃめちゃつらいのに頭をなでてくれる人もいない……みたいなことを言い出した女の先輩は、自分の頭をなでてくれる帽子を作ったりして(笑)。モーターで動くスポンジを仕込んだ帽子を被ると、なでられている感じがするという。

欲求をテクノロジーで発散する先輩の後ろ姿を見ていて、なんかいいなって個人的に思っていて(笑)。私も、欲求が湧いたらこれで発散すればいいんだって思っていましたね。テクノロジーによってセルフで欲を満たしているのはヤバいなと思いました(笑)。

エロって最強の体験コンテンツ。
ハックしどころがたくさん

©Ayaka Ikezawa

大学の研究発表会「ORF」(SFC Open Research Forum)にて。

 

——欲求という言葉が出てきましたが、それに合わせてテクノロジーが進化してきたっていうのはまさにそうだなと思っていて。代表的な例として、アダルトコンテンツのVRとかはそうなのかなと。

 

そうですね。VRとか新しめのテクノロジーって、あまり使われないというか……実用化まで結構距離があったりするんですけど。「エロ」が絡むとなぜか急速にお金が入って、潤沢になって、そのテクノロジーが劇的に進化するっていうのは本当にあると思います。

 

——たしかに、VRとかって試せる場所とかは増えてきてはいるけど、実用的にはあまり使われていないですよね。

 

はい。VRを日常使いできるキラーコンテンツ自体があまりないんですよね。まだあまり浸透していないのに、エロコンテンツはめっちゃ売れてるっていうのを聞いてさすがだなって思いました(笑)。体験した人の数も多いですし。私も、2、3年前ですけど、ちょっと話題になり始めたときに、360度AVみたいなものを観たことがあるんですけど……。

 

——360度。どういう状況なんですか……?

 

見回すと、いろんなところで乱交してる……みたいな感じです(笑)。たしか、当時は史上初だったのかな? やっぱりテクノロジーとエロの関係ってすごくて。めちゃめちゃお金を入れてくれるコンテンツでもあるので、わりと絡めて考えることが多いし、ちょっとこれは体験しないと!という感じで体験したんですけど。「うおぉ……」と(笑)。でも、最近のはさらにヤバいらしいですね。

 

——今のはとにかくすごいらしくて。

 

今のは、360度じゃなくて180度になっていると聞きました。初めて観た360度AVは、ゴーグルをかけてキョロキョロしながら、あっちでも、こっちでも……みたいなものを楽しむコンテンツだったんですけど、没入感にはイマイチつながりづらくて。今のは、たぶんかけている人が体験しているような感覚になるというか、圧倒的にコンテンツへの没入感を感じられるものになっているのかなって。一人の部屋で観ている感じというか、閉ざされた感じというか。

 

——このコンテンツに関しては、没入感は特に大事ですよね。

 

そうですね(笑)。エロって最強の体験コンテンツなような気がしているので。ハックしどころがたくさんあるじゃないですか。それはすごい面白いなと。

コンテンツに
ヒットの余地がたくさんあるから
妄想がはかどる

 

——切り取り方というか見方というか、本当にハックしがいがたくさんあるっていう中でも多くを占めていくのは、引き続きテクノロジーなのかなとは思うんですけど。

 

そうですね。人類の共通コンテンツってあまりないからこそ、結構大きな市場になりやすくて。みんなの共通体験だから、1回ハックできたら爆発的にヒットしたり。共感軸が高いんですよね。

例えばアダルトグッズとかも、今まではなんとなくダサい製品が多かったイメージがあるじゃないですか。でもどんどんスタイリッシュでお洒落なものが出てきて(笑)。中身は同じなのに、加工するだけでこうなるのかと。そういったわりと簡単なハックも含めて、ヒットの余地がたくさんあるというのは感じます。大人のアイテムっていわれているものもIoT化したらどうなるんだろうか?みたいな(笑)。妄想ははかどりますよね。

 

——こういうものがあったら人々の欲求が満たされるのにっていう原動力もありますが、果てのないハックどころのありようが面白いっていう考えも大きいのかもしれませんね。

 

確かにそうですね。こういうのがあったら、俺めっちゃ気持ちいい!みたいなのはあると思うんですけど、ここを切り取ってこうしたら面白いんじゃないか?みたいな切り取りどころは全人類共通の欲求であるだけに、本当に色々できますし……。

VRっていうと、最近は主に目をハックするみたいな方向にいっていますけど、大学では、触覚とか五感を刺激して体験を提示するっていう研究をしていて。やっぱり最強の体験コンテンツである「エロ」については、色々やりがいがありそうな分野だなと思いながら見ていました(笑)。

 

——ここまで進化してきたVRですけど、まだまだ途上なんですよね……?

 

超途上だと思ってたんですよ。でも、やっぱりちゃんと収益化したっていうのが本当に驚きで。まだ全然普及していないものなのに。本当に「エロ」というコンテンツは偉大だなって感じました。と同時に、VRはほかに何かキラーコンテンツを探さないと駄目なのではと思ったり。まだ、エロ以上の収益化をあげているコンテンツはない気がします。

バーチャル界では
性別が「溶けて」きている

©YUJI IMAI

 

——人間の基本的欲求とされるものを、ここまでのレベルで満たし続けてきたテクノロジーですが、単純に、今度どうなっていくんだろうって思っていますか?

 

最近、バーチャル界って性別がだんだん溶けてきているなっていうのをすごく感じていて。例えば、おっさんが美少女になることができたり。

 

——どういうことですか?

 

現実世界ではおっさんなんだけど、VR上では美少女になって、ボイスチェンジャーで声も変えて、VTuberをやっていたり。それが「バ美肉(バビニク)」(バーチャル・美少女・受肉の略称)といわれて、一ジャンルとしてめっちゃ流行って。性的な差がなくなってきているというか。「おじさんがおじさんに恋する時代」とか言われていたりして、面白いなって思います。

そういう性差がない世界とVRのエロ体験が混ざったら、おっさんじゃないにしても、男性が(VR上で)女性になって風俗体験を提供するアルバイトをしてお金を稼ぐ、みたいなことが実現するかもしれないし。

 

——面白いですね。実体は男性なんだけど、テクノロジーによって、アルバイトの勤務時間だけ女の子として働けるという……。

 

だから、風俗嬢と呼ばれる職業は必ずしも女性だけのものではなくなるのかな、なんて感じたりはしていて。実は接客してくれていたのは男だった、みたいな(笑)。でも、お金を稼げて、気持ちよくなれて、ウィンウィンでいいなと思ったり(笑)。あとVR的には今後、もうちょっと触覚をハックしていく方向に進んでいくんじゃないかなと。

 

——エロコンテンツこそ、触覚めちゃくちゃ大事ですよね。

 

大事です。大学でVRを専攻していたとき、触覚の研究をしながら友達どうしで「これ、面白いおもちゃ作れそうだよね」みたいな話はしていました(笑)。「これ、たぶんいけるよ!」って。でも本当に、たとえばなでられているだけで幸福感って結構あるものですしね。あとは妄想で補う、みたいなこともできると思うので(笑)。

 

——そうなってくると、人間はまたさらに高度なものを求める気持ちを持つようになっていくのでしょうか?

 

そんな気がしますけどね。バーチャル体験って、実体験だとなかなかハードルが高くてできないことをできるっていうことに価値があるのかなと思っていて。現実世界ではあまり満たされない生活を送っているけど、バーチャルの世界で満足してるし、まぁいいか……みたいな人は増えるかもしれません。実体験の価値がどんどん薄まっていくというか。

 

——もはや、超アナログな「エロ本」とかは読む人もいなくなっちゃったりするんでしょうか……。

 

いや、もしかしたら……逆に昔ながらのエロ本とか読んでいる人は「懐古主義者」って言われたりして、妄想で補うことを美徳とする一種の変態みたいに言われたりするようになるかもしれません(笑)。

エロによって開発された技術は
別のコンテンツの進化にも
しっかりつながっていく

©YUJI IMAI

 

——エロとテクノロジーの関係性について伺ってきましたが、「エロ」というコンテンツの公約数の多さを実感するお話でした。

 

本当にそうですね。新しいテクノロジー技術が出てきたときに、まず「これはエロとどう絡めたら面白いか」と考えるのは絶対に面白いですし。

あとは、言い方が正しいかわかりませんが、巨大なお金を生み出す装置でもあって。社会を効率的に便利にするというのも確かにテクノロジーの一側面ではあると思うんですけど、欲望の追求みたいな側面に潤沢にお金を入れていただいて、さらに技術が発展していったら、本当に面白い未来が待っているんじゃないかなって思うんです。

 

——単純にワクワクしますね。

 

そうしたら、もっとリアルなゲームとかも生まれるかもしれないし。私、『大乱闘スマッシュブラザーズ』というゲームが好きなんですけど、VRで自分がキャラクターになってリアルに戦えたらめっちゃ楽しいじゃないですか? 相手を殴るときに触覚フィードバックがあったりしたら、すごく面白いなと。もう思いっきり大乱闘したくて(笑)。

全身を使うようなエロコンテンツによって開発された技術は、別のコンテンツの進化にもしっかりつながっていくと思うんですよね。そうやって新しい体験が、どんどんできる未来になっていくといいなって思います。

Top image: © YUJI IMAI


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