【美しき日常】カーストは関係ない。毎日10万人に「無償でカレーを提供する」黄金寺院

インドには様々なイメージがあるが、そのひとつにカーストが挙げられる。近代化が進んだ現代においても根強くインド社会に残る身分階層だが、それがまったく関係ない場所がある。

seija_sub3_s黄金寺院

■黄金寺院の共同食堂「ランガル」

北インドにあるシク教(あるいはシーク教)の総本山である黄金寺院。現地の言葉でハリマンディル・シャーヒブと呼ばれるここは、巡礼の地であり、観光スポットとしても知られている場所だ。
広大な敷地内には、時計塔や博物館などがあり、いずれも見応えのある建築物となっているが、話題にしたいのは「ランガル」という食堂だ。といっても、その規模は想像を絶するもので5,000人が同時に食事できる広さになっている。

seija_sub_sみんなでいただきます

■ここでは、誰もが平等に食事をする

ランガルでは、毎日10万食ものカレーが作られ、訪れた人々に振る舞われる――ここでの食事は、カーストはもちろん信仰する宗教すらも無関係に、すべての人に対して無償となっている。貧富の差が激しく、カーストが表向きはともかく、潜在的に残るインドにおいて、誰もが平等に、一緒に食事することができる。
そして、にわかには信じ難いことだが、小麦粉2,300kg、豆830kgという1日に使用する膨大な食材はすべて寄付によってまかなわれ、調理も約300人のボランティアが担っている。
これは500年以上続く、宗教的な行為であり、なによりも、日常の営みなのだ。

seija_sub4_sチャパティを焼く人

seija_sub2_s火加減を確認する人

■気になるその味は?

ベルギー人のシェフ兼料理研究家のフィリップ・ウィチュス氏は、このランガルを訪れて感銘を受けた人物だ。
毎日10万食もの食事が、プロではない人々によって、システマティックに調理され(しかも、近代的な調理器具は一切使用しない)、供される。その光景に圧倒されたウィチェス氏は、妻と二人でかの地に滞在し、毎日のようにランガルで多様なるインドの人々と食事を共にしたそうだ。
そんた彼らによると「カレーは新鮮で美味しい」とのこと。

■その光景に出会える映画作品

ウィチェス氏はカレーを食べるためだけに、黄金寺院を訪れたのではない。この神聖で美しき日常をフィルムにおさめることに、彼は成功している。
作品のタイトルは『聖者たちの食卓』。BGMもナレーションもない。簡素な作品だが、その映像美とトリップ感覚に言葉を失う65分を味わえるはずだ。

映画『聖者たちの食卓』
黄金寺院でいただきます10万食の大きな団らんを体感するインド・シク教の聖地に500年以上伝わる”聖なるキッチン”の一日を追ったドキュメンタリー
2014年9月27日(土)より渋谷アップリンクロードショー、K's cinemaモーニング、ほか全国順次公開!

All photo by  himself  he cooks

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