【ダークツーリズム】自動車産業の光と影を体現する「デトロイト」の廃墟とは・・・

人類の歴史は、輝かしい面ばかりではありません。片方の国が発展を遂げた影には、戦争に敗れた国もあり、産業発展のあとに振り子の揺れ戻しで衰退が訪れた街もあります。

そんな人類の悲しみの現場と対峙する旅が「ダークツーリズム」と呼ばれるもの。そこには悲しみや怒り、絶望しかないかもしれません。でも、実際にその地へ足を運ぶことに意味があるのではないでしょうか。

今回は、自動車産業において栄華を極めつつも、産業衰退と人口流出で財政破綻したアメリカの「デトロイト」を紹介したいと思います。

【アメリカ・デトロイト】
モーターシティの
夢のあと

アメリカ・デトロイト 廃墟ビル

Photo by Josh Cornish/shutterstock.com

ここは、かつてアメリカ中から人が集まった繁栄都市「デトロイト」。1903年にフォード・モーター社が自動車工場を建設したのをきっかけに、世界最大の「モーターシティ」へと発展。

まさに繁栄のシンボルで、第二次世界大戦中は軍需産業も伸び、人々の暮らしも裕福になりました。

デトロイト暴動をきっかけに
徐々に景気も悪化

しかし、影が差したのは1950年代以降。1967年に起こった白人と黒人の間に生まれた「デトロイト暴動」によって、白人高所得者層が徐々に街を離れ始めました。

さらに70年代に入ると燃費の良い日本車のシェアが拡大、徐々に景気は悪化していきました。

2009年、GMとクライスラーの破綻を受け、ついに2013年にデトロイト市は財政が破綻。180億ドル(約1兆8,000億円)の負債を抱えました。

近年は自動車産業の復活に伴って経済も持ち直しているそうですが、所得差も広がり、街は荒れる一方。中心市街地のゴーストタウン化は、今もなお進んでいると言います。

こんなところを
訪れてみては?

【ルネサンスセンサー】街の復興のシンボル
市街地のウォーターフロントにある超高層ビル群。中にはGM本社や日本領事館なども。平日にはビルのガイドツアーもあり、市街地ながら安心・安全に楽しむことが可能。

【ルネサンスセンサー】

【デトロイト美術館】競売をのがれた、貴重な品々
約65,000の芸術品を所蔵するこの美術館も、一時は財政破綻で危機的状況に。しかし、国内外の財団や支援者の資金援助により、売り飛ばされずに済んだのだとか。

【デトロイト美術館】
Photo by James R. Martin / Shutterstock.com

【ミシガン中央駅】廃墟の鉄道遺産を訪れてみては?
1913年に建てられた、当時世界で最も高層な駅。1988年に閉鎖され、解体計画も出されたものの、資金不足で頓挫、今も巨大な廃墟のまま(※中には入れません)。

【ミシガン中央駅】

■ベストシーズンは、6〜9月
北海道とほぼ同じ緯度にある、ミシガン州デトロイト。夏は気温が上がっても30度になることはほぼなく、湿度も低いので快適に過ごせます。

■予算は15万円〜
飛行機代、宿泊費含む、諸税等別途必要、燃油サーチャージ込み

■プランは5日間
1日目 東京発、デトロイト着
2日目 デトロイト観光
3日目 ルネサンスセンター/デトロイト美術館
4日目 デトロイト発、経由地乗継
5日目 東京着

※デトロイトまでは日本から飛行機で約12時間。空港から中心地まではバスが出ていますが、利用が不便かつ治安面も考えるとタクシーかレンタカーが無難。

過剰な金融手動型資本主義が生んだ「光と影」を体現するかのような米デトロイト。持続可能な社会を作ることがいかに大切なことなのか。学ぶべきところは多いかもしれません。

『人類の悲しみと対峙する ダークツーリズム入門ガイド』(編:いろは出版)

世界中に点在する、戦争、迫害、破壊、災害、虐殺、社会差別など、人類の悲しみの現場と対峙する「ダークツーリズム」をまとめたガイドブック。誰もが知る有名な場所からマイナーな場所まで36ヶ所を掲載。歴史解説と見所やモデルプランを同時に読める貴重な1冊。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。