交通事故から1年。goro'sのフェザーが俺の小指にハマったのは運命に違いない -Vol.1-

1年前、交通事故で左手小指に傷を負った。

第1関節より前の骨が砕けてなくなったのだ。10年間、乗り続けたVespaは廃車になり、俺はバイクに乗ることを止めた。そして、指にリングをすることも一切止めてしまった。

不良のガキたちにとって
憧れの存在だったゴローさん

10代の頃からシルバーアクセサリーは大好きだった。

きっかけは「goro's」だ。シブカジ全盛時代、渋谷のストリートで遊んでいた不良のガキたちにとっては、goro'sのリング、コンチョ、サドルバックを身につけることは暗黙の掟だったのだ。

リーバイス501や646、レッドウィングのエンジニアブーツ、ヘインズのブルーパック、アビレックスのフライトジャケットB3、Vansonのライダース…といったユニホームを身につけて、渋谷の街中を闊歩する俺の左手の小指には、goro'sのフェザーリングが輝いていた。

まるで、ネイティブ・アメリカンの住居のような店内。無骨にディスプレイされている数々のインディアン・ジュエリー。ネイティブ・アメリカンのラコタ族(スー族)から「イエロー・イーグル」というインディアンネームを授かった話。あの頃のgoro'sには、スノーという真っ白い犬がいつもいた。何もかもが夢のように眩しかった。インディアンというビンテージバイクで原宿のショップに乗りつけるゴローさんは、俺たちにとって憧れの存在だった。

自分の好きなものを作り続ける。ゴローさんの作るものは自身のこだわりや生き様が刻まれている。今想えば、自由に生きて、本当に好きなことをして生きていく素晴らしさを教えてくれたのは、ゴローさんだった。そんなワケで、goro'sのシルバーアクセサリーは、俺にとって身体の一部であり唯一無二の存在だったー。 

しかし、醜く変形した小指にリングをする気にはどうしてもなれなかった。そして、気がつくと、指を通さなくなったフェザーリングは、いつの間に消えてなくなってしまったのだった。

 不良仲間からの
思いがけないプレゼント

あの事故から、1年が過ぎ去ろうとしていた。

春一番が吹いた日に、久々に不良仲間と集まった。その時から、不思議なことが立て続けに起こりはじめたのだ。皆、外見はすっかりオヤジになったけど、中身はちっとも変わっていなかった。当然の如く、昔話には花が咲く。渋谷にはじまり、チーム、あの頃のファッション、そして、話題はgoro'sへと移っていった。

「やっぱり、これだよね」仲間の1人であるアツシがgoro'sのネックレスを自慢げにかかげた。大空に羽ばたくイーグルと数本のフェザーが組み合わされている。美しいデザインだ。本場で様々なインディアン・ジュエリーを見てきたけれど、やっぱり、このフェザーが一番だと感じることができる。俺は、ただ懐かしくて、それを首から外して見せてくれとアツシに頼んだ。手にするとズシリと重かった。

「ミタクエ・オヤシン」その瞬間、どこからか声が聞こえた気がした。

酔いも手伝っていたのだろう。俺は、フェザーの1本をつまんで左小指にあて「このフェザー、小指に巻きたいな」と口走った。すると、驚いたことにアツシは「いいですよ」と言葉を返してくれた。「これで、Jeffくんが元気になるのなら」とその場でプレゼントをしてくれたのだ。

でも、いくつかの問題があった。まず、フェザーネックレスを丸めなければならない。しかも、リング状にしたところで、俺の左小指に合うサイズかどうかも分からない。さらに、年代物のフェザーは、加工する途中で折れる可能性もある。

どうしようかと目を閉じると、懐かしい顔が浮かんできた。これをリングにしてくれるのは、あいつしかいない。

俺は、すぐにヒデに連絡を入れた。高円寺で「PEACE」というインディアン・ジュエリー・ショップを構え、かれこれ10年間続けているヒデは、昔からの不良仲間だ。LAで3年ほど不法滞在している時に、師となるリキさんに出会いシルバー・スミス(銀細工職人)の道を選んだ男である。リキさんは、ゴローさんの仲間であり、何度かgoro'sで見かけたこともあった。現在は、福岡にある「WING ROCK」というショップのボスでもある。

ヒデに一通り事情を説明すると、すぐに返事が戻ってきた。「やってみましょう」

「ミタクエ・オヤシン」その瞬間、再び、声が聞こえた。

生まれ変わったフェザーからの
メッセージ

翌々日、俺はヒデのショップへ向かった。

まず、リングゲージで左手の小指のサイズが測られた。9号だった。それから、ヒデは、芯金とハンマーを使ってシルバーのフェザーを器用に変形させていった。カン、カン、カン。ワンヒットごとに心地のいい音がショップ内に鳴り響く。間もなくして、フェザーネックレスは、美しいリングへと生まれ変わった。

「できました」

ヒデから渡されたフェザーリングは、不思議なことにぴったりだった。まるで、運命で決められていたかのように俺の左小指にハマったのだ。

「ミタクエ・オヤシン」今度は、はっきりとした声が聞こえた。

「ミタクエ・オヤシン」とは、ネイティブ・アメリカンの言葉だ。「すべてのものは、つながっている」「わたしたちはみんなつながっている」という意味がある。ゴローさんからのバトンは、アツシ、ヒデへと渡されて、最後には俺の元へとリレーされたのだ。

フェザーリングは、交通事故によって後ろ向きになっていた俺を真っ直ぐに前に向かせてくれた。しばらく、途絶えていたつながりも鮮やかに蘇らせてくれた。そして、何よりも、思いっきり生きろと背中を押し出してくれたような気さえするのだ。

今、俺の左小指にgoro'sのフェザーリングがされているのは、決して偶然ではない気がする。大空を飛ぶイーグルのように人生を自由に生きていくこと。俺は、人生においてとても大切なことを思い出すことができたのだ。

goro'sのフェザーは、もう一度、俺がはばたける翼を与えてくれたのだと想う。(つづく)

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