Appleティム・クックの卒業スピーチ「バカにするやつは放っておけ」

これは、スティーブ・ジョブズの後継者でAppleのCEOティム・クックが、現地時間6月9日(金)にマサチューセッツ工科大学の卒業式で行ったスピーチ。その中でも、個人的に不意をつかれた言葉がある。

「人生の目的を見つけるのに15年もかかった」という一言だ。

私は成功者に対して、「情熱を傾けられるものに熱中して、気づいたら成功していた人たち」というイメージを抱いていた。だからこそ「普通の人に近い視点」で経験を語ってくれる彼に親近感を覚えた。

人生の目的を見つけるまでに彼が歩んだ道のり。そして、そこから学んだ若者にどうしても伝えたいこととは?約15分に及ぶ演説の一部を紹介しよう。

「早い時期からずっと
もがき苦しんでいた」

「『一体どこへ向かっているんだろう?』そう自分に問いかける時が来るだろう。正直に言うと、私は同じ質問を問いかけ続け、答えを見出すのに15年近くかかった」

「高校生の時には、何になりたいかを答えられればそれは人生の目的を発見したことと同じだと思っていた。けれど違った。大学生の時には、学ぶコースの専攻が明確になっていれば見つけたも同然だと思った。それも違った。社会人になってからは、良い仕事に就けばいいのだと思った。でもそれも違った。だったら昇進すればいいのかとも思った。けれど見つからなかったんだ」

クックはMBA取得後、12年間IBMで働くのだが、答えはすぐに出ると言い聞かせて前進していた。母校を訪れたり、メディテーションをしてみたり、宗教を信じたり哲学者の本を読むなどして、ありとあらゆる物事に答えを求めたということだが、一向に見つからない現実に苛立ちを感じていたという。彼は最初から目的を持ち、成功への道を確保していたわけではなく、多くの人たちと同じようにもがき苦しんでいたのだ。

ジョブズがいるアップルへ
そして見つけた「答え」

クックがAppleに入ったころ、ジョブズは「人とは違う考え方をしよう」というメッセージを発しており、世界を変えることができると本気で信じていたという。

彼は当時をこう振り返る。

「これほどまでに情熱があるリーダー、そして『人の役に立つ』という明確な目的を持った会社に出会ったことがなかった」

そしてこの時ついに、彼の答えはハッキリした。

答えはとてもシンプルで『人の役に立つ』ということ。時代の最先端を走り困難に立ち向かう会社と、まだ存在もしていないテクノロジーが世界に革命を起こすと信じるリーダー。それらが結びついた気分になったんだ」

「明確な目的がなく働いていたら、答えを見つけることは一生なかっただろう。スティーブとAppleは、会社のミッションを自分のものにしてしまえるくらい、私を仕事にどっぷり放り込んでくれた。そうして自分に問いかけることができたんだ。『どうしたら人の役に立てるのか?』って。人は自分を超える何かを目指して働く時、意義を見出すことができるんだよ」

「バカにするやつは
放っておけ」

そしてスピーチも終盤にさしかかる頃、クックは卒業生たちに向けてこう呼びかけた。

「社会には、あなたのことを小馬鹿にする人がたくさんいるだろう。インターネットは様々なことを可能にし、力を与えてくれる。けれど善意がなくてくだらない、ネガティブなことがいきかっている場所でもある」

「雑音に惑わされないでほしい。つまらないことに足を踏み入れないように。嫌なやつには耳を貸さないように。そして頼むからそういう人にはならないように。人に好かれることではなく、役に立つことを軸に自分自身の影響力を評価するように。他人の目を気にするのをやめた時、人生はより意義のあるものになる。君たちもきっと自分なりの人生の目的を見つける時がくるだろう」

「キャリアを積んでいくのに感情はいらない、と説得しようとする人たちが出てくるだろうが、そんなウソは受け入れないようにするんだ」

スピーチのフルバージョンを聞きたい人は、ぜひ動画で。

Top Photo by John Tlumacki/The Boston Globe via Getty Images
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