アマゾンの儀式「アヤワスカ」を求めて vol.3

夜8時。

昼間に案内された儀式をとり行う円形の小屋へ、電気など何もない真っ暗のジャングルを懐中電灯だけを頼りに向かった。

聞いたこともない虫の鳴き声が響いている。長時間の移動による疲れや空腹など気にもならないほど、アヤワスカの世界に胸が高鳴っていた。

小屋には、ロヘルと数人の弟子シャーマンがいた。深い暗闇に包まれたジャングルの中、ろうそくで照らされた小屋は何とも言えない怪しげな雰囲気でまさに「儀式」そのものだった。円形にマットが敷き詰められており、そこに座るよう言われた。

それから、まだかまだかとじっと待った。

ロヘルはその間、アヤワスカ茶にかすれた口笛でおまじないをかけていた。一時間半ほど経っただろうか。彼はようやく立ち上がり、アヤワスカを持ってゆっくりと僕の目の前へやって来た。そして、どろどろとして赤茶色く濁っているアヤワスカを無言で僕に手渡した。

心臓はバクバクと激しく脈打ち、緊張していた。日本からはるばる南米アマゾンまで来て、ついにアヤワスカを体験できると思うと嬉しくて仕方なかった。

匂いはあまりにも強烈だった。呼吸を落ち着かせ、意を決して一気に空腹の体へ流し込んだ。

飲んだ瞬間に顔はゆがみ、声にならない声を出し続けた。想像を絶するほどマズかった。うまい例えが見つからないが、腐ったコーヒーにお酢を入れたような味で苦味と酸っぱさ、そしてとてつもない深みがあった。

口の中にどろどろと残るアヤワスカ茶が無くなるのを嗚咽を漏らしながら必死に耐えた。そしてやっとの思いでマットに横になり、その時を待った。

30分ほど経った頃、音の聞こえ方に異変が起き始めた。

ジャングルの虫たちの声がより鮮明に聞こえる。聞いたこともないような重低音を奏でるカエルたち、バッタは飛び跳ね、コオロギは華やかに歌っていた。虫がどの方向に、どのぐらいの近さにいるのかさえも分かった。

まるで虫たちがこの夜を祝福してくれているかのようにその声は重なり合い、美しい一つの音楽が森に響いていた。同時に「キーン」という耳なりが大きくなったり小さくなったりしていた。

虫たちから「こっちの世界においでよ。早く早く」と誘われている感じがした。なぜだか眠くもないのにあくびが止まらない。

虫の声と耳鳴りが最高潮に達していた。耳の感覚は研ぎ澄まされ、耳鳴りはあまりにも大きくて鼓膜が張り裂けそうだった。

「キン、キン、キン、キン」と波も早く激しくなっている。その音にひたすら意識を集中させた。ものすごいエネルギーが耳から伝わって、まぶたの裏には幾何学模様の幻覚がくっきりと現れていた。

幾何学模様は虫のリズムに乗ってくねくねと動きを変えた。暗闇のジャングルの中、まぶたの裏は光り輝きカラフルだった。幾何学模様は奥へ奥へと僕を誘い、どんどん深くまぶたの裏を進んでいく。

そしてある時、僕は草原に立っていた。

この時、頭の中でイメージしたすべてのことができた。イメージと現実の間に隔たりは無くなっていた。夢なのか現実なのかわからない、狭間のようなふわふわした次元に意識は繋がっていた。

そしてその次元を僕は遊び尽くした。

草原に吹き抜ける風も、足の裏にあたる土も、草木の匂いも全て鮮明に感じることができた。イメージしたことがなんでもできるこのアヤワスカの世界が楽しくて仕方なかった。

ただただ目の前に広がる絶景の中を駆け抜けた。

青空の下、緑が一面に広がり、遠くには美しい男の顔が彫られた崖があり、その間を滝が流れ大きな虹がかかっていた。僕はその草原を走ることも、鳥になり大空を飛ぶことも自由自在だった。

手の上に地球を作って回した。神様みたいだった。こんなに自由な世界があるのだと僕はアヤワスカを飲んで一時間しないうちに、その虜となった。

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身体や心に溜まった毒を排出でき、その人に必要な「ビジョン」を見せてくれる。アヤワスカは地球上でもっとも強力なスピリチュアルドリンクだろう。
とにかく、好奇心を抑えることが出来なかった。四六時中アヤワスカのことを考え、調べれば調べるほど引き寄せられていった。
イメージの世界を遊び尽くしている時だった。シャーマンが儀式の歌を歌い始めたのだ。
アヤワスカの世界は、想像を絶するほど生々しく、美しいものだった。
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