「2020年はドムドムハンバーガーが絶対くる!」藤﨑社長インタビュー

グルメバーガー全盛の時代に独自路線で、他店にはないオリジナリティを発揮する「ドムドムハンバーガー」。

今年、創業50年の節目を迎える、日本初のハンバーガーチェーンは逆襲に向けての照準を合わせている。株式会社ドムドムフードサービス藤﨑忍社長に10の質問。数よりも個性で勝負するドムドムの戦略とは?

藤﨑忍(株式会社ドムドムフードサービス代表取締役社長)

2017年、商品開発としてレンブラントホールディングスに入社。店長、SV職を経て2018年8月より社長に就任。現在もSV職を兼務しながら精力的に全国29店舗を回っている。

網の目に仕掛けられた
“逆襲”への足がかり

1970年に開業したドムドムハンバーガー。全盛期には全国に400店舗を展開するも、2000年代に入ると親会社の経営不振により店舗数を大幅に縮小。現在29店での営業を続けている。

2017年、立て直しに向けホテル事業などを手がけるレンブラントホールディングスが事業を買収。商品開発として入社した藤﨑氏が社長に就任したのは2018年8月のこと。就任後、持ち前のフットワークを活かし精力的にチャレンジに打って出た。

ファッションブランド「FRAPBOIS」との異業種コラボだ。

外国人モデルが、マスコットキャラクターの「どむぞう君」をあしらったウェアや雑貨を手にファッションメディアに登場。垢ぬけないドムドムの昭和っぽさはどこへやら。これが、初めてドムドムを知る若い世代にもフィットした。

 

──「FRAPBOIS」とのコラボ。企画はどちらからのアイデアだったんですか?

 

藤﨑:「FRAPBOIS」さんからお声をかけていただきました。最初、会社の反応はいまひとつだったんです。でも、「絶対やるべき!」って強引に押し切りました(笑)。お恥ずかしながら「FRAPBOIS」を知りませんでしたが、アパレルメーカー「BIGI」のブランドだって聞いて。遊びゴコロあるデザインを拝見して、ドムドムと価値観が合致すると思ったんです。ターッゲットもちょうど良かったというのもありますね。

 

──秋には、1500円を超える高級バーガーを限定販売。それも六本木でポップアップというのには驚かされました。狙いはどこにあったんですか?

 

藤﨑:どうしても都内屈指の繁華街でイベントをしたいというのがありました。できることなら六本木で。ドムドムは好立地に出店してはいません。それとここまで高価格路線のバーガーを発売したことはなかった。潜在的な価値があるかを見極めたかったんです。

©BIGI CO.,LTD.

「フラボア meets ドムドムハンバーガー」。Tシャツやトートバッグ、iPhoneケースなど全14アイテムがラインナップ。

©株式会社ドムドムフードサービス

「DOMDOM in 六本木」と題した2日間限定イベント。日本の食材にこだわったプレミアムな限定バーガー。丸ごと1匹カニを使った「カニバーガー」の先行販売も。

©株式会社レンブラントホールディングス

グループホテル「レンブラントスタイル札幌」の一室をまるまるドムドムにした「ドムドムルーム」。宿泊招待券が当たるキャンペーンを実施。

次々と繰り出されるユニークな戦略がSNSを通じて拡散していく。すると、「あのドムドムが、おもしろいことを始めたらしい」と、かつてのドムドムを知る世代がそこに乗っかる。

振り返れば、創業50年の節目に向けた逆襲は、網の目のように精巧に仕掛けられていた。「次は何を狙ってくるのか?」いつからかそんな期待がSNSを埋めていった。

 

──「ドムドムが変わろうとしている」。そう強く印象付けた2019年だったと思います。ここまではすべて狙い通りといったところでしょうか?

 

藤﨑:結果的には多くの方に喜んでいただけましたが、つねに不安との隣り合わせでした。永らくドムドムを愛してくださるお客様たちの期待と、いま私たちがしていることがまったく違うとしたら……そう思うと正直怖い。だから、イベントでの雰囲気だったり、Twitterでの反応はいつも気にしているんです。

 

──Twitterといえば、ドムドムを訪れたユーザーの投稿に藤﨑社長ご自身のアカウントで、毎度ていねいにリツイートされていらっしゃいますよね?

 

藤﨑:そうなんです。「ドムドムが好き」って投稿してくださるのが嬉しくて。できるだけリツイートさせていただくようにしています。ドムドム公式アカウントじゃないから、「誰?」ってなるでしょうけど(笑)

遅咲きのビジネスパーソン
前職はマルキュー!?

©2019 NEW STANDARD

──前職ではどんな仕事をされていたのですか?

 

藤﨑:専業主婦だったんですが、37歳で生まれて初めて仕事をしたんです。知人の経営する「渋谷109」のとあるセレクトショップの経営を手伝うことになり、7年間マルキューで働きました。マルキューって本当にすごいんですよ。10坪しかない小さなお店が何億円って売るんですから。そこで商売のおもしろさにハマりました。

その後、起業して新橋で飲食店を経営しました。実家の会社も継いで2店舗経営していた2017年に、今の会社から「フードの監修をしてほしい」と声をかけていただいたんです。

 

──109とは意外過ぎました。トレンドの最前線で、経営のほかに学んだことはありますか?

 

藤﨑:それこそ中高生を中心とした10代の若い子が相手でしたらか、彼らとの会話にも気後れしないコミュニケーション力ですかね。あとは、直感的な判断力やスピード感覚は今の仕事にも直結しているかもしれません。

「マクドナルド」を
ベンチマークしないワケ

全国に2910店舗(2019年12月末時点)を展開する「マクドナルド」。ファストフードの代名詞としてバーガー業界を牽引する一強体制が長く続いてきたなか、ここ数年グルメバーガー路線が台頭。ハンバーガー業界はいま二極化の時代を迎えている。

 

──現在のドムドムの立ち位置を客観的にどう見ていますか?

 

藤﨑:業界全体の売上前年度比が何パーセントっていうのは、ほとんどトップがつくりあげているもの。なんたって圧倒的規模ですから。二番手、三番手あたりの競合他社さんが苦戦されているなか、じつはドムドムはマイナスしていない。むしろ、ちょっとずつですが伸びているんです。もちろん規模が小さいというのもありますけどね。

 

──潜在的なドムドム人気は存在しているし、それを求める声もある。「何年までにまずは何店舗」といった定量的な目標はありますか?

 

藤﨑:前任の社長はそういった数字を掲げていたんですが、私はドムドムらしくないかなって思っていて。我々がいまさら「マクドナルド」を目指したところでしょうがない。それよりも、新しいことに果敢にチャレンジして、いつでも「楽しい!」と笑顔になっていただけるような商品やお店づくりを、ドムドムらしいやり方で追求してきたいと思います。まずはしっかり筋肉質にしてから。いきなりのV字回復は目指していません。

パイオニアとしての矜持

ユニークで柔軟な発想と、旺盛なチャレンジングスピリットで独自展開を続けてきたドムドム。本当のところ、そうした奇策は縮小の一途をたどるなかでの業界を生き延びる処世術にすぎないのだろうか?

 

──全盛期の9割以下に店舗を減らしても、それでもドムドムが今日まで存続できた(求められた)最大の要因はどこにあるとお考えですか?

 

藤﨑:日本のハンバーガーショップのパイオニアという「ブランド」だと思います。こればかりは我々しか持ち得ないものですから。たった29店舗のバーガーチェーンをテレビやメディアが取り上げてくださるのもブランド力あってこそ。

そして、50年間ドムドムを好きでいてくださるファンの方たちがいること。その誇りと愛着をもって、次の50年を目指していきたいですね。自分の代で潰してしまうわけにはいきませんから。プレッシャーですよ(笑)

 

──今さらですが、ドムドムの商品にNGってあるんでしょうか?

 

藤﨑:モットーである「まじめにおいしい、楽しい」ということは絶対条件。そこがきちんと担保されていればOKです。飲食店として「おいしい」は最低限。そこに「楽しさ」や「驚き」も持ち合わせることでドムドムらしさが生まれると考えていますから。

 

──創業50年のアニバーサリーイヤーです。どんなことを狙っているんでしょう?

 

藤﨑:昨年、いろんなチャレンジを通してお客様のドムドムに対する熱量を感じることができました。2020年はさらにそれを大きくしていきたいと考えています。

大規模なイベントに参加したり、おもしろい企業とコラボして商品をつくったり。それから、私たちの心がきちんと通じる新しい店舗もつくっていきたい。やりたいことは山ほどあります!

Top image: © 株式会社ドムドムフードサービス
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