新潟で「シャッター商店街」について考えさせられた話。

みなさん、こんにちは!「CAMPFIRE×LOCAL」の菅本香菜です。副業では旅するおむすび屋さん「むすんでひらいて」としても活動しています。

 

“シャッター商店街”。

地方に行くと、たびたび耳にする言葉です。私のなかでその言葉の捉え方が変わった出来事がありました。

今回は、おむすび屋さんの相方さくらちゃんの拠点でもある、新潟市内野町のお話です。

8月末で、閉店してしまう

もともと宮崎で生まれ、鹿児島の大学に通っていたさくらちゃんですが、つながる米屋「コメタク」として活動するため、2年前に内野町に移住しました。

新潟駅から電車で約20分のところにある、内野町。

チェーン店はほとんどない、個人商店が点在する、ゆったりとした時間が流れる町です。さくらちゃんと出会ってから、私も月に1回のペースで通っています。

内野町に行くたびに私が足を運ぶのが、海産物屋の「大口屋」さん。オーナーの大口さんが、熱心に研究して商品開発している干物や佃煮は本当においしいんです。行くたびに笑顔で出迎えてくれる大口さんの人柄にも惹かれてしまう、内野町の名店のひとつです。

そんな大口屋さんが、8月末で閉店してしまうという突然の知らせが届きました。閉店前にどうしても会いに行きたくて、すぐに新潟行きを決めました。

「さみしいです、大口さん」

大口屋さんに入ると、「閉店することになりました」という張り紙と、いつもより品数がぐんと減ったショーケースが目に入りました。

「本当に終わってしまうんだな」としんみりしていると

「お、久しぶり! とうとう新潟住むか!」

と、相変わらず明るい笑顔、そして早口で話しかけてくれた大口さん。「裏おいで、裏!」と、いつも通してくれるお店の裏の事務所スペースへ。

そしてどんどん出てくる振る舞い。お客さんからもらったお土産のお裾分けや、新しく開発した商品、干物にする前のお魚…。

これも、いつもの恒例行事です。

「今日もさー、注文いっぱい入って忙しくてさ。あとさ、注文くれた人が、“味に感動したから煮物の作り方教えて欲しい”って言うもんだから、さっき電話してあげたのよ」

早口で止まらないおしゃべり。止まらない商品への愛情。いつもと変わらない大口さんになんだか安心して、頷きながら話しを聞いていたら

「もう、閉める準備してるのにね」

と、ひとこと。

「さみしいです。大口さん」

素直な気持ちが、思わず口から漏れました。そこから、少し改まって、大口さんが話をしてくれました。

「最近、町の人たちの生活が変わってきてるんです。小さい商店で買い物をする余裕がなくて、大型スーパーでまとめ買いする人が増えたでしょ。なかなか日常生活のなかで海産物屋さんに来る機会がなくなってきてるんだよね。

それに合わせて、お歳暮やお中元を贈るっていう文化もだいぶ廃れちゃってね。日常でも特別な日でも、海産物屋の登場シーンが減っちゃったんです。そしてうちには跡継ぎがいない。30年前に揃えた商品づくりのための施設はどれも老朽化していて、買い直したり補修するためには1,000万円以上かかる。自分の年齢を考えても、あと数年のために大金を投資するのは難しいよね」

リアルすぎる課題。

商品作りへの情熱は冷めていない大口さん、きっと想像できないほど悩んで出した結論でしょう。安易に「辞めないでください」なんて言えませんでした。

「でもね、本当は2年前から辞めることを考えてたの。2年前の4月、後を継いで欲しいと思っていた息子が亡くなって。悲しみのどん底にあったんですよ。もう辞めようと思ってた。でもその1ヶ月後に、さくらちゃんたちコメタクメンバー3人が移住してきてね。一緒にいろんな企画をしたりしてさ。あの子たちは”協力してもらってる”って思ってるかもしれないけど、俺たち夫婦も救われてたんだよね。おかげでここまで頑張れた。だけど、もう歳だしね。嫁さんがまだ元気なうちに家族も大事にしなきゃって思ってね」

そう語ってくれた大口さんは、笑顔で前を向いていました。きっと2年前に辞めることを検討していたときと気持ちは大きく変化しているはず。大口さんにとって、お店を閉めるのはひとつの終わりではあるけれど、ひとつの始まりでもあるのだろう、と思えたお話でした。

お店を閉めたら、まずは奥さんと旅行に出かけるそう。行きたい場所を聞くと、ほとんどが和食を学べる場所。やはり情熱は止まらないようです。 

大口屋さんの店舗は、今後どのような使い方をされるかまだ決定していないとのこと。大口さんにとっても、素敵な場所に生まれ変わりますように。そして、そのために私ができることはできる限り関わりたいと感じました。

「シャッター商店街、こうしたらイケてる施設になる!人が集まる!別の街で成功してた!」

シャッター商店街への提案として、こんな会話が出てきがちです。でも今回の経験を通して気づいたことは、閉じたシャッターの裏側には、一つひとつそれぞれの想いやストーリーがあるということ。

まずはそれらをきちんと理解しようとすることから始めなければ、本当の意味で、地域の暮らしと魅力を積み重ねていくことにはならないのだろう、と感じました。

ありがとう、大口さん。また必ず、美味しい干物を食べさせてください。 

大口さんと。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。