「パンツで人々を覚醒させる」を、最先端の田舎・宮城県丸森町から

数ヶ月前のこと。「高野真一さんは楽しんでいます」の表示とともに友人(26歳、※以下高野さん)のFacebook投稿が流れてきました。内容は退職、移住、会社設立といったもの。こんな人生の転機に「楽しんでいます」とは?というのが率直な感想でしたが、投稿内容を読んでいると、心から楽しんでいそうなのは本当でした。

大阪で働いていた高野さん(出身は京都)の移住先は、宮城県丸森町という人口1万4000人ほどの消滅可能性都市。そこで、赤いパンツを作るんだとか……どゆことっ!?

まるまるまるもりプロジェクト
とやらに加わったらしい。

まず、高野さんが移住した宮城県丸森町は、写真で見るとこんな感じ。
自然豊かな、のどかなまち(田舎)です。

© MARUMORI CULASTA

そして、高野さんが隊員として加わったのが、丸森町で2017年に発足した「まるまるまるもりプロジェクト」。ひと言で表すと、丸森から世界をより良くしようというものなのですが、もう少しちゃんと説明します。

森林に覆われた丸森町は、自然や環境だけではなく、文化的生活を営んできた歴史背景や自然と共存しながら発展を目指してきた考え方などが北欧とよく似ているんだそうです。そこで、丸森町は、北欧における循環型メソッドを参考にして、「丸くする」を大切にした起業家募集プロジェクトを立ち上げました。

「磨いて、丸くする。」
新しい価値を外から取り入れるのではなく、自分のやりたいことや、やれることを見つめ、自分の中にもともとある本質を磨く。

「繋げて、丸くする。」
人や資源がそれぞれで完結するのではなく、互いに良いところを連携させることで、新しいビジネスの可能性を生む。

「広げて、丸くする。」
丸森だけでなく、東北各地の良いところを、認め合うだけでなく組み合わせることで、新たなライフスタイル文化を広げる。

これらを踏まえて、宮城県丸森町から起業家を育て、世界に通用する事業を創造しようというわけなのです。

© 2018 MARUMORI TOWN
丸森には、猫を神として大切にする文化も。猫を型どった猫碑が町中に点在する

「まるまるまるもりプロジェクト」では、町が、起業希望者を地域おこし協力隊として採用し、ベーシックインカムとして月々20万円を支給。さらに、丸森町商工観光課や、東北を中心に起業家支援事業を行っている「一般社団法人MAKOTO」、クリエイティブエージェンシーの「株式会社ラナエクストラクティブ」が事業をバックアップ。

本当にやりたいことにチャレンジしながらお金をもらえて、しかも助っ人もいるって、最高ですね……(もちろん大変なことが多いのは重々承知しています)。

ということで、現在丸森町では、5人の起業家たちが世界を見据えて奮闘しています(活動記録はコチラから)。

で、赤パンツとは…?

見てください!!
この神々しいパンツ。

(※先に言っておきますと、決してふざけているわけではありません)

© 2018 Zamila Inc.

何を隠そう、これが、高野さんが丸森町から届けようとしているパンツです。しかも、扱うアイテムは赤パンツ一本!

この、こだわりがありすぎる赤パンツを世界に広めるべく、勤めていたデジタルマーケティング会社を退職。経営コンサルとして働いていた幼馴染とともに丸森町に移住、そして会社を設立したんだといいます。ビジョンはパンツを介して人々を覚醒させること。

……!?(だいぶ尖ってますね?)

© 2018 Zamila Inc.
左から丸森町地域おこし隊の豊田さん、高野さん


せっかくなので、いくつかこだわりポイントを紹介します。

1、格式が高いとされる濃い赤を使用
赤には情熱や勝利のイメージがあり、イベント時などに好んで赤いパンツを穿く人が多いんだそう。たしかに、色々な芸能人が「赤パンツしか穿かない」などと公言していますね。

2、史上初!?前も後ろもどっちも前向き
「いつでも前向きになれるように」ということで、前と後ろが同じデザインになっています。前後がないので、毎日5秒の時間短縮になるそうです(笑)。

3、ウエストゴムがない
体を締め付けるウエストゴムをなくした上で、超伸縮性素材を使用。フリーサイズでS〜XL相当サイズに対応しているんだそうです。プレゼントの面から考えても、サイズのことを心配する必要がなくなるので画期的です。

4、マチ(股の内側)にメッセージが入っている
普通はウエストゴム部分にあるロゴを、メッセージとしてユーザーだけに見えるところに配置。入っている文字は、ラテン語の「memento mori(死を想う)」「memento vivere(生を想う)」で、これはスティーブ・ジョブズも意識していたとされる言葉です。“時間には限りがある”というメッセージ性があり、パフォーマンスをあげる目的も。トイレに行くたびにメッセージが見える仕掛けになっています。

© 2018 Zamila Inc.
メッセージには180°回転させても読める、自社開発の特殊文字を採用

本当はまだまだ語りつくせないほどあるのですが(パンツについて1時間プレゼンしてもらいました)、一旦ここまでで。

© 2018 Zamila Inc.

プロジェクトの管理やプレス発表会などの準備は商工観光課が、そして事業面に関しては「一般社団法人MAKOTO」からアドバイスをもらいながら……という風に、丸森町が町をあげて、このパンツ事業を応援しています。だから、タグには恩返しの意味も込めて「Designed in Marumori 」の文字を入れているんだそうです。

「最先端」がキーワードだった

© MARUMORI CULASTA

高野さんが移住してすぐのころに共有してくれた想いがこれ(原文ママ)。

僕たちの挑戦を応援してくれる町がある。宮城県最南端の丸森町。

僕は自分の商品を世界中に届けたい。そんな想いを持っていた。

丸森町は「丸森から世界に通用する事業を創造する」って言ってた。見事に合致。すごい。田舎から世界を目指すって超クールである。東京から世界をなんて、ありきたりだ。人がしないことをしたい僕にとってはぴったりの場所だ。

だから僕は豊田(幼馴染)を誘って丸森町にきた。豊田なんて、丸森町に行くことが決まる前から船井総研をやめてた。

日本の地方には課題が山積み。若者が少ない、起業率が低い、若者が就きたい仕事が少ない。色々。僕は、丸森町から世界に通用するイケてる事業を起こし、大成功することで、地方に移住する流れを作りたい。別に地方に永住するのがいいってことではなく、起業するにおいて、固定費を下げるとか、集中しやすいとか、いろんな理由で地方に行くっていうのは選択肢になるってこと、地方から世界的企業を作れることを世の中に提示したい。

これがすべてです。


丸森町との縁が繋がったのは「最先端」というキーワードがきっかけだったといいます。Googleアラートを使って情報収集をしていた時に「最先端」というワードで引っかかってきたのが丸森町。これをきっかけに「まるまるまるもりプロジェクト」のことを知り、丸森の地を選んだんだそう。

縁もゆかりもない場所だったけれど、今では近所の人たちや他の地域おこし協力隊のメンバーとも溶け込み、すっかり町の一員に。起業サポート面はもちろんですが、生活面のサポートも手厚いとかで、町から紹介してもらった家は庭付きの8LDKの一軒家で家賃は月5万円。さらには、車はご近所さんからのもらい物。

「環境を整えて応援してくれる町のみなさんには、感謝しかない。だからこそ、一層がんばって“丸森”の名前とともにパンツを広げていきたい」

町のみなさんに応援されながら、二人の挑戦はまだまだ続きます。

ちなみに、赤パンツ専門店「ザミラ」のWEBサイトはこちら。
(公開はしてるけど、もう少しナイスにする予定!とのこと)
https://www.zamila.jp/

Top image: © 2018 Zamila Inc.
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。