“死”について考察する写真展が「東京都写真美術館」で開催中

「死を忘れることなかれ」や「死を想え」を意味するラテン語「メメント・モリ」。

この言葉をテーマとした展覧会「TOPコレクション メメント・モリと写真―死は何を照らし出すのか」が、東京・恵比寿「東京都写真美術館」にて9月25日(日)まで開催されている。

ハンス・ホルバイン(子)『死の像』より 《金持》 (試し刷り)
1523-26年頃 木版 国立西洋美術館蔵

今展は、同館にある3万6000点余りの収蔵作品のなかから、テーマを設けて選りすぐりの名作を紹介するTOPコレクション展。

ウジェーヌ・アジェやW. ユージン・スミス、ロバート・フランク、マリオ・ジャコメッリといった19世紀を代表する写真家らによる約150点の作品にくわえ、死のイメージとして名高い、Hans Holbein the Younger氏による約500年前の版画作品『死の像』とともに、メメント・モリの世界を探る内容である。

© Rita e Simone Giacomelli

マリオ・ジャコメッリ
〈やがて死がやってきてあなたをねらう〉より
1954-1968年頃 ゼラチン・シルバー・プリント
東京都写真美術館蔵 Courtesy Archivio Mario Giacomelli

ロバート・キャパ
《フラーガアラゴン前線、スペイン 1938年11月7日》
1938 年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵

ちなみにメメント・モリは、人々の日常がいつも死と隣り合わせであることを示す警句として古くから使われてきた言葉。

ペストが大流行した14〜17世紀の中世ヨーロッパにおいて、がいこつと人間が踊る様子を描いた『死の舞踏』と呼ばれるイメージと結びつき、絵画や音楽をはじめ芸術作品のテーマとして広く伝播。一方で、写真もまた“死”を想起させるメディアであることが、数多くの写真論のなかで言及されてきた。

© Shinya Fujiwara

藤原新也
《死のとき、闇にさまようか光に満ちるか心がそれを選びとる》
〈メメント・モリ〉より 1972年 発色現像方式印画
東京都写真美術館蔵

先人たちがどのように死と向き合いながら、たくましく生きてきたか──。

この困難な時代をポジティブに生き抜くための想像力が刺激されるような展覧会となっている。

なお、8月12日(金)には、古典落語の名手である九代目・春風亭柳枝氏の落語会「メメント・モリと落語」も開催。

人間の生き様や、運命の悲喜交々をユーモアと風刺を交えて描かれる日本の伝統芸能・落語を通じて、“死”についてさらに深く考えさせられるようなイベントとなっているそうだ。

こちらも併せてぜひ。

『TOPコレクション メメント・モリと写真―死は何を照らし出すのか』

【会期】2022年6月17日(金)〜2022年9月25日(日)※月曜休館/月曜が祝休日の場合は開館、翌平日休館
【開館時間】10時〜18時※木曜、金曜は20時 ※入場は閉館の30分前まで
【場所】東京写真美術館2階展示室(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
【ウェブサイト】topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4278.html

Top image: © Rita e Simone Giacomelli
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