「有名人に悪口を言いたい放題」のエンタメ――ベンのトピックス

ベンのトピックスにおかえりなさい!

イギリスは、ローストビーフとローストチキンの国です。我が家(実家のほうね)には立派なオーブンがあるから、ロースティングは日常的な調理方法です。そして、イギリスではローストするのは肉や野菜ですが、アメリカでは人間をローストするのも人気があるんです。本当です。

これはひとつのアメリカ文化ですよ!

カニバリズムの話ではありません!

立派なアメリカ文化といえる“コメディ・ロースト”の話です。

コメディ・ローストは1949年頃にアメリカのニューヨークフライアズクラブで生まれたとされています。システムはシンプルです。著名人のゲストをステージにあげて、コメディアンたちがそのゲストにディスや冗談を投げかけます。ショーのひとつですね。

文字だけで見ると、ただのイジメみたいです。なぜこんなものがエンタテインメントになるのでしょう?

ローストされるゲスト(ロースティーと呼ばれます)は、偉業を成し遂げたようなすごい人です。これが前提条件です。そして参加する人(ロースターズ)たちは、みんながそれを事実として認めています。その上で、ディスをします。ポジティブなイメージの人のネガティブな部分をフォーカスことで、そのギャップが笑いになるんですね。もちろん、ロースティーは悪口を言われることに慣れていて、ネガティブをはねのける強さを持っています。そして、ロースティー自身もショーの間は、苦笑いをしています。

70年代からはテレビでもコメディ・ローストがスタートしています

70年代からはコメディ・ローストは、テレビでも観られるようになりました。

テレビに登場したロースティーは大物揃いです。モハメド・アリのようなアスリートやロナルド・レーガンみたいな政治家(大統領になる前ですね)など。モハメド・アリをディスしても、オール・タイム・ベスト・ボクサーが彼であることは誰も否定できません。だからこそ、ディスすることがエンターテインメントになるわけです。

さて、なかでもアメリカのケーブルテレビ局、コメディ・セントラルは、現在のローストフォーマットを作りました。彼らは約1時間をかけて“ロースト”します。いろんなロースターズが出てきて、順番にロースティーに向かって言いたい放題です。そして、プログラムの最後には、ロースティー本人がリベンジする時間もあります。

ベンがリアルタイムで覚えているところでは、ジャスティン・ビーバーなんかはいいロースティーでした。正真正銘のポップスターです。そして、ポップスターはいつの時代も、人々の間で好き嫌いが分かれるものだから、たくさんのオーディエンスの感心を集めました。

2011年、一番印象的だったロースティーは……

だけど、近年、もっとも印象的なロースティーは、ドナルド・J・トランプです。

2011年の最大のロースティーだった当時の彼は、成功した(本当にそうかどうかは?ですが……)ビジネスマンで、リアリティ・ショーにおけるスターでもありました。

ふん、みんなトランプに言いたい放題ですね。オレンジみたいな顔とか、お金が本当にあるのかとか、若いだけで頭が空っぽ奥さんとか、冷たいパパだとか……トランプはギリギリ我慢しています。

繰り返しになりますが、これは2011年のことです。僕はトランプのことをあまり知らなかったので「マジでこの人はバカみたいだな」と思ってました(ごめんなさい、今でも!)。まさか、そのトランプがアメリカの大統領になるなんて……僕だけでなく、誰も予測していなかったはずです。

このコメディ・ローストのアメリカ文化は、とてもユニークで興味深いと思います。日本では馴染まない?そうでしょうか。じつは都内でも「東京ローストバトル」なんてイベントも開催されていたりするんですよ。英語だけどね。日本語だとどうでしょう?日本でも流行しないですかね?

Top image: © Naomi Nemoto
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。