「変えられない」を受け入れる、心の機微。

2024/01/10

TABI LABO編集部

サウナ大好き作家・岩田リョウコさんと、サウナをこよなく愛する女優・清水みさとさん。

ふたりがどのようにサウナを日常に取り入れ、どんなサ活を楽しんでいるのか。気になりますよね？そこで、ふたりのサウナな日々を「交換日記」に綴ってもらいました。

今回は、リョウコさんからみさとさんへ──。

岩田リョウコ

文筆家、イラストレーター。アメリカ在住中に出版したコーヒー本『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』が全米ベストセラーに。世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でサウナ・スパ健康アドバイザーの資格を持つ。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ！クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない！』、『HAVE A GOOD SAUNA! 』『ちょっとサウナ行ってきます』。近著に『直訳やめたら英語が一気にできるようになった私の話』。
SNS：@ilovecoffeejp

みさとちゃんへ

2024年、あけましておめでとうございます。わたしたちの交換日記、「10回往復してみましょう」から始まって、なんとこれで51回目。びっくりするくらい続いています。わたしたちの申し出を受け入れてくれて、続けさせてくれている「TABI LABO」さんにも大感謝です。みさとちゃん、TABI LABOさん、今年もどうぞよろしくおねがいします。

さて、新年最初ですが2023年の最後に考えたことから記していきたいと思います。

ちなみに2023年最後のサウナは杉並区高井戸の「美しの湯」でした。ここはサウナが“昭和ストロングスタイル”で、カラカラに焼いてくれてからの水風呂が冷たくて気持ちいい！そのあとの露天風呂スペースでの外気浴が最高という3拍子きれいにそろったサウナですね。お風呂も天然温泉でちょっと茶色いのも好きです。

©岩田リョウコ

戻りますが2023年は、わたしはこれまでよりはちょっとだけ停滞・受け身の年だったように思います。でもゆっくり動いていたのは特に悪いことではなかったです。それに焦ったり、流れを変えようとせず、そのまま流れていけばいいやと思っていた1年でした。

©岩田リョウコ

だからと言って、やりたいことができなかったわけではなく、新刊も出したし、ビールも造ったし、行きたいところにも行き、会いたい人にも会い、新しい家族が増えたりと、やりたいことはやれた楽しく充実した1年でした。

そんなゆっくりめに穏やかに過ごしていた秋口に、近しい人がこの世を去る決断をするという経験をしました。

2022年の大晦日を一緒に過ごした人が、翌年の大晦日にはもうこの世にいない。わたしはスピードの遅い1年を送っていたのに、その人は大きく悪い方へ変化をしてしまった早い1年を送っていて、こんなにも状況が変わってしまったことに今でも追いつけていません。

一緒に過ごした大晦日の景色©岩田リョウコ

打ちひしがれて憔悴しているその家族、ご両親、兄弟にどんな言葉をかけることが正解なのか、今でもわからないままです。その日からずっとこの先もこのことについてどう考えたらいいのか、自分の気持ちもわからないままです。

そして、去ってしまった人の痛みはその時に終わるけれど、遺された人たちの“痛み”が始まるということを知りました。

何かできなかったのか、何か違う行動をしていたら状況は変わったのか？と考えることは終わりません。でも、それは今だから考えられることで、その時にはわからないものです。

その人の人生最期の決断で、他の人が何を言おうが、どう行動しようが、本人が決めたことは変えられないし、本人が最期に何を思っていたのかも、理解したいし、わかりたいけど、本人しかわからない。遺された人は、変えられないこと、わからないことを、変えられない、わからないと受け入れるしかないのです。でも、それは本当に時間がかかることだと思っています。

とても悲しいことだけれど、こんな悲劇の中からでも、何か学べることがあるのかなと考えるようにしています。

大きな決断、日々のチョイスなど、どんな行動でもその人自身が決めることだけれど、人が何かを決める時に少しでも「そういえば……」と思い出してもらえるようなメッセージみたいなものを渡すことはできるんではないかなと思うようになりました。

例えば、わたしが「英語がわかれば、そして日本を飛び出してみたら、もっと見たことないこと、感情、自分に出会える」というメッセージを出して、「へー、そうなんだ。でもわたしは仕事もあるし、無理だな」と思う人もいれば、みさとちゃんのように、「へー、そうなんだ。わたしも行ってみよう」と行動する人もいる。

誰かが何か決断をする時に、わたしのメッセージが少しでも思慮の中に入るのであれば、わたしはそれを知る方法がないとしても、やっていきたいことだなと思います。その時にしっかりとしたメッセージを渡せるような自分になりたいというのが今年の抱負かもしれません。