この花火を見た子供たちの未来は、どう変わるだろうか。【小橋賢児インタビュー】

5年ぶりに凱旋、しかも今年は東京と福岡の2都市でやるらしい——。

そんなニュースが駆け巡った、未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND(スターアイランド)」。5/11-12に福岡で、そして6/1-2に東京での開催が決まっている。

TABI LABOでは2017年お台場での本イベント立ち上げ期から追っているが「400年以上歴史がある花火の価値をアップデートしたい」というメッセージが印象的だったことを覚えている。

その後、シンガポールやサウジアラビアでの成功や、未曾有のパンデミックを経て、STAR ISLANDはどのような進化を遂げているのか。

2024年の開催概要についてはコチラの記事でも紹介しているので見ていただくとして、ここでは総合演出・小橋賢児さんへのインタビューが実現したのでその想いやメッセージをご紹介したい。

小橋賢児

クリエイティブディレクター。1979年、東京都生まれ。88年に俳優としてデビュー、数多くの人気ドラマに出演。2007年に芸能活動を休止し世界中を旅する。帰国後『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターや『STAR ISLAND』の総合プロデューサーを歴任し国内外で成功させる。ドローンを使用した夜空のスペクタクルショー『CONTACT』はJACE イベントアワードにて最優秀賞の経済産業大臣賞を受賞。2021年、東京2020パラリンピック競技大会閉会式のショーディレクターを務め、また、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の催事企画プロデューサーに就任する。その他、地方創生、都市開発に携わるなど常に時代に新しい価値を提供し続けている。

© STAR ISLAND / YouTube

アジアのハブ「福岡」
夢の島「お台場」

——2019年以来、5年ぶりに日本での開催ですね。

小橋賢児(以下、小橋):そうですね。STAR ISLANDとして世界中を回っていくなかで、花火師さんもパフォーマーもとても進化しているし、全体としても削ぎ落とされた部分もあればアップデートしている部分もたくさんあります。福岡では会場がみずほPayPayドーム福岡というとても大きな場所を使わせてもらうので、これまでSTAR ISLANDで実現できなかったドローン1000機を使ったパフォーマンスもできますし、世界でも最先端の技術を使ったサングラスで3D映像を体験してもらおうと思っています。過去に足を運んでもらった方でも、まったく新しい体験として楽しんでもらえると思います。

 

——国内開催で東京以外は初だと思うのですが、なぜ福岡を?

小橋:いくつか理由はあるのですが、福岡は機能としても立地としても、世界の、特にアジアのハブになる国際都市だと感じています。都市部と海が近いことなど、ロケーションを含めて僕も大好きな街のひとつです。さらにエンターテインメントやアートに寛容な街でもあり、人柄も明るいしあたたかい。なんというか福岡の人ってみんな、楽しむことに前向きなんですよね(笑)。

©エイベックス・エンタテインメント株式会社

——楽しむことに前向き、って素敵な表現ですね。一方で東京・お台場は原点とも言える場所ですか?

小橋:お台場はULTRA JAPANの頃からずっとゆかりのある場所で、僕のなかでは成田と羽田の玄関口でもあり、「夢の島」というイメージなんです。僕はイベントという非日常を通じて、自分の内なる想いに気づいてもらうきっかけを作りたいんです。

 

——たしかにお台場へ向かうときって、少し日常から切り離されていくような独特な感覚がありますよね。

小橋:同じレインボーブリッジを渡るとしても、STAR ISLANDで何かを体験して自分の内側が変化すれば、帰りに見るレインボーブリッジからの景色って全然ちがうものになると思うんです。

それは僕自身の原体験にもあって、16歳でドキドキしながら初めて飛行機に乗って単独NYに行ったとき、行きの景色と帰りの景色がまったく異なるものに見えたんです。本当は同じ景色なはずなのに、自分の内側が大きく変わっているからですよね。そういう体験を提供できるのがイベントの魅力なのかなって思います。そう捉えたとき、あのお台場のロケーションはとても素晴らしい。都市なんだけど夢の島でもあり、レインボーブリッジや東京タワーのような日本を代表する景色も共存しているんです。

初めから「世界」を見ていたのは
間違いじゃなかった

©エイベックス・エンタテインメント株式会社

——2018年〜2023年にかけてシンガポールやサウジアラビアでも開催されてきましたが、どんな手応えがありましたか?

小橋:海外の方たちは良くも悪くも反応がダイレクトで、興奮や感動、フィードバックの声も多く「最初から世界基準で考えていたことは間違いなかったぞ、グローバルにも刺さるぞ」と改めて実感できました。シンガポールでは巨大な映像装置を使って、ケミカル・ブラザーズのVJを担当しているイギリスの映像チームと一緒に仕事ができたり、とてもチャレンジングでした。

どうしても日本のエンタメは国内向けで成り立ってきた背景もあり内需型になりやすいんですが、STAR ISLANDでは「日本から世界へ、世界から日本へ」という繋がりを作りたいと思っていました。今回、満を辞して日本に戻ってきて「頑張ればここまで行けるんだ」という可能性にみんなも気づいてほしいなと思います。

 

——ところで小橋さんご自身は、コロナ期間中どのように過ごしていたのでしょうか?

小橋:コロナ中は色々な業種が打撃を受けましたが、我々イベント事業は分かりやすくダイレクトにきました。完全に仕事ゼロ、のような状態です。でもじつは僕、コロナ禍に入る前から生活に瞑想を取り入れていたんです。10日間パソコンやスマホから離れるような実践もしていました。瞑想の極意は “観察をすること” なので、たとえ自分の心がブレたとしてもそれ自体を観察するし、周りが騒がしかったとしても観察していく。そんななか、ある意味で世捨て人のように肉も魚も食べず、お酒も飲まなくなる2年間を過ごしていました。

これが会社にとって良いことだったかどうかは、今もまだ分かりません。もしかしたら瞑想なんかせずにもっとがむしゃらに、あらゆる仕事をやって、過去のように利益を作っていく、という選択肢もあったかもしれません。でも僕は自然の流れのままに俯瞰していました。

でもそのおかげで、いまになって少しずつ変わってきた実感があります。これまでの「イベント」というフェーズから「まちづくり」や「サステナブルなものにする」という案件が生まれ、単発的な興奮や激しさだけじゃない、もっと永続的で、いろんな人たちが関わることによって変化していくような、そういう場づくり的な仕事に変わってきた実感があります。

それはもしかしたら、自分が客観して俯瞰してきたなかで起きた「自然の流れ」みたいなものなのかなって感じているんです。

ただ正解は本当に分からなくて、どっちのシナリオもある。がむしゃらに過去を取り戻すシナリオも悪かったわけじゃないし、今までならきっとそうしていたかもしれない。でも今回は、自然の流れを受け止めてみたんですよね。

安くする努力もいいけど
価値をつける努力を

©エイベックス・エンタテインメント株式会社

——これからの日本のエンターテインメントやイベントの可能性についてはどう感じますか?

小橋:全然あると思います。STAR ISLANDだけではなく、たとえばチームラボなんてまさにグローバルで活躍されていますし、アーティストで言えば先日コーチェラでもYOASOBIや新しい学校のリーダーズが日本語スタイルのまま行っても受け入れられるようになっていて、大きな変化を感じます。

今はSNSを通じて国境の壁を越え、ナチュラルにコンテンツへ触れている影響が大きいと思いますが、次に「イベント」での体験がくると思います。そしてイベントそのものだけではなく「日本」というコンテンツに触れてもらうことが大事だと思います。

これまでは内需で成り立ってきたけれど、日本は「パンデミック後に旅行で行きたい国ランキング」の上位に入ったり、もともと色々な文化を取り入れて調和するミクスチャーカルチャーに長けている国でもあるわけですから。少しグローバルに目を向けるだけで、コンテンツの中身やコンセプトは大きく変わっていくと思うんです。

 

——STAR ISLANDがその1つのきっかけに?

小橋:そうですね。「あ、こういうことできるんだ、やっていいんだ」と思考を広げるきっかけになれたら嬉しいです。野球の世界で野茂、松井、イチロー、そして大谷へと夢が広がっていったように、クリエイターが世界に出ていくきっかけになれたらと思います。

日本だけを見ているとどうしてもさまざまな制限や法律、予算のなかで考えが萎縮してしまい、小さくなってしまうケースもあります。2017年以降のSTAR ISLANDをきっかけに、もちろんテクノロジーの進化や偶然もありますが、日本中の花火大会がどんどんアップデートされていきました。音楽を取り入れた花火大会も広まったし、ドローンを扱う企業も増えてきて、以前より可能性が広がっている感覚があります。

今のままだと、花火イベントだけでなく、あらゆるコンテンツがグローバルの基準より “安い” んです。もちろん安いものもあっていいのですが、なんでもかんでも安かろうは良くなくて、安くする努力より価値をつけていく努力をしないといけない部分もあると思う。残していくべきものには、ちゃんと価値をつけていくことが重要ですよね。

たとえば今回の福岡ではアートディレクターのYOSHIROTTENに空間演出をしてもらって「SUN」というアートプロジェクトも行うのですが、ぜひこういう非日常的な没入体験の価値を感じてもらいたいです。

「Future is Now」
もしも初めて見る花火が
STAR ISLANDだったら

©エイベックス・エンタテインメント株式会社

——今年、初参加の人に伝えたいことはありますか?

小橋:初めてSTAR ISLANDをやったときに印象的だったのが、親子で参加された方が「初めて見る花火がSTAR ISLANDだったら、彼らの未来は変わっていくんだろうな」と言ってくれたことだったんですね。もしかしたら我々が創り出しているものは、人の一生を変える経験につながるんじゃないかって思えたんです。

 

——それはまさに「花火」のアップデートですよね。過去にも参加したことがあるリピーターの方にはどんなことを伝えたいですか?

小橋:なんといっても日本での開催は5年ぶりですし、毎回テーマもコンテンツも音楽もちがうので、初めての気持ちで来ていただいても十分に楽しめると思います。その日はSTAR ISLANDの住人になってもらいたいので、リピーターの方はぜひ友人やパートナーなど初参加の人を連れてきていただいて、新しい仲間をガイドしてほしいなと思います。

きっと「Future is Now、未来はもうそこにあるんだ」と感じてもらえるはずです。

 

——とても楽しみです。ありがとうございました。

『STAR ISLAND FUKUOKA 2024』
<福岡>
【開催日時】
2024年5月11日(土)12日(日)開場15:00 開演19:15 終演21:00
会場:福岡みずほPayPayドーム・地行ももち特設会場

『STAR ISLAND 2024』
<東京>
2024年6月1日(土)2日(日) 開場16:00 開演19:15 閉演21:00
会場:お台場海浜公園

【特設サイト】https://star-island.jp/
【チケット好評発売中】https://l-tike.com/starisland/
【Instagram】https://www.instagram.com/starisland_world/
【X】https://twitter.com/starislandworld

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。