「6秒ならスコセッシを超えられる?」少林サッカーの大ヒットを生んだ監督の新しい挑戦ー西冬彦

『黒帯KURO-OBI』『ハイキック・ガール!』など、凄いアクション映画を日本から世界に送り出すことを可能にした映画監督西冬彦。海外の映画を買い付けるバイヤーからはじまり、現在はプロデューサー・映画監督として活躍する西監督にとっての映画とは?そこには映画好きを驚愕させる痛快な世界が待っていた。

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西 冬彦/Fuyuhiko Nishi

早稲田大学卒業後、ぴあ(株)に入社。1998年に映画配給会社ギャガ・コミュニケーションズの外国映画買い付け部門へ転職。バイヤーとして数多くの映画を買い付ける中で「少林サッカー」「マッハ!」を大ヒットに導く。
短編アクション映画「黒帯」を手掛け、2005年映画監督として独立。プロデューサー・監督・俳優としての参加作品は「少林少女」「ハイキック・ガール!」ドラマ「SP警視庁警備部警護課第四係」など。

th_9Y5A0476▲ 撮影する西監督とクルー

th_9Y5A0728▲ 「ハイキック・ゾンビ」撮影にて。西監督とソニー・デジタルエンタテインメント福田淳氏(西監督の右)

th_スクリーンショット 2014-08-03 13.53.37 th_スクリーンショット 2014-08-03 13.53.45

▲ 自身で空手をする、俳優としての西監督

 

001.
過去からは、新しいものは生まれない

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西監督が新しい映像を探求する時、大切にしていることは何ですか?

Answer

過去のデータに囚われないことです。例えば、映画業界の人って、昨日まで「今までに無い前代未聞の映画で、爆発的なヒットを出しますよ!」と豪語しながら、今日には「今ヒットしているあの映画みたいな作品は無いかな?」なんて言う人ばかりなんです。だから予告編の作り方も広告方法も全て似たり寄ったり。

僕はそういう人たちと違って、過去の成功体験や事例に全く興味がありません。映画の買い付けも、香港やタイでまだ知られていないようなタイトルばかりですし、自力で制作した映画も全て僕のオリジナル。 主演も有名・無名に関わらず気に入った演者を起用します。

 

 

002.
大切な直感、それを裏付ける努力の必要性

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西監督の映画人生のはじまりともいえる映画のバイヤー。そもそもどのような仕事だったのでしょうか。

Answer

単刀直入に言うと、海外から映画の権利を仕入れて、国内で販売する仕事。僕も入社して初めて知ったのですが、まさに商社!だからギャガは、「映画好きは採用しない」と決めていたらしいですよ。買い付ける仕事に、映画好きかどうかなんて関係ないと思われていたんです。10歳の頃から映画しか趣味がなく、観るか作るか、それ以外なかった僕は明らかに異端児でしたね(笑)。

入社直後、衝撃的なことがありました。「西、この映画試写しておいて」と言われて、ビデオを頭から通常再生で観ていたら「なんで普通に観ているの?早送りで観て」と。映画を早送りで見るなんて、内容もわからないし、考えられませんよね?でも数をこなさなければならないので、誰もがそうしていました。

まぁ、今なら打ち合わせしながら横目で観るだけで、どれが面白くて、どれだけ市場価値があるかわかりますけどね。

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この映画がヒットする!ということを言語化できるものってありますか。
例えば、TABI LABOで探してくるネタ元なのですが、共感軸が高い、サムネイル写真の印象が強い、記事のタイトルの分かり易さ、など、その他にもいくつか評価軸があるのですが。

Answer

私の映画選びは、非常に非言語的なものです。こういう時に頼れるのは、自分の直感。そもそも海外の映画マーケットで試写する映画を選ぶ時も、カタログに無機質に並んだタイトル、一行のタグラインの情報、フライヤーのアートワークから直感的に判断します。実は、ああだこうだ考えるより、「これだ!」と感じる感覚の方を大切にしています。そして直感を磨くには、何百、何千回と挑戦し続けることでしか養うことができません。まるで1000本ノックのように世界中の映画を毎日見続けること。それが血となり肉となるのです。

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なるほど。確かに、その感覚分かります。言語的な左脳と、非言語的な右脳を駆使することで生まれるシナジーは大きいですよね。とくに非言語的なものは感覚で、その感覚を形成するのは、その人の経験からくるものですからね。

 

 

003.
これからは、アジアの時代だ! 文明800年周期説

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映画「少林サッカー」(香港)、「私の頭の中の消しゴム」(韓国)など、バイヤーとしての実績を残していますが、ほとんどがハリウッド映画ではなくアジア映画。何か意図があったのでしょうか?

Answer

文明800年周期説という学説をご存知でしょうか?西洋文明が興隆して没落すると、没落していた東洋文明が興隆する。逆に、東洋が没落すると、西洋が盛り返す。その入れ替わりがちょうど800年周期で繰り返される、という理論です。

ここで注目すべきは、前回の転換期は13世紀だったこと。チンギス・ハンを筆頭とするモンゴル民族が大移動して、ユーラシア大陸を席巻した時でした。それを機に文明の中心が西洋に移り、今ちょうど800年が経った。

つまり、これから800年は文明の重心はアジアになる、ということなんです。

笑い話のようですが、映画もアジアだ!と直感したんです。僕はこのことを部下に伝えて説得し、アジア映画を担当することにしました。振り返ってみると、アジア映画班だったからこそ、「少林サッカー」や「私の頭の中の消しゴム」のような前代未聞の大ヒット作に出会えた訳ですし、本当にあの決断をしてよかったなと思いますね。

 

 

004.
日本には、まだ金脈が眠っている

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東洋の時代だということは、日本の時代でもあると。どういった経緯でバイヤーから映画監督に転向したんですか?

Answer

「少林サッカー」のチャウ・シンチー監督からこんなことを言われました。「もともと中国には、カンフーという金脈があり、それをブルース・リーやジャッキー・チェンが掘り当てて映画を作った。だから私は、その残りかすだけで『少林サッカー』や『カンフーハッスル』を作った。でも日本には誰も掘っていない金脈がまだ眠っている。空手、柔道、合気道……日本の武道の映画だ。私はそれを見たい、君が作ってくれよ」。

それを言われてある日突然「やらなきゃ!」と思い立ち、土日などの空き時間を使って短編の空手アクション映画「黒帯」を製作しました。自分主演の16ミリフィルムで。それをチャウ・シンチーに見せたら「これは凄い!」「このアクションシーンはどうやって撮影したんだ?」と、なんとベタ褒め。彼の言葉に背中を押される形でバイヤーを辞めて映画製作に転身する決心をしました。短編「黒帯」を長編映画にするのが最初の目標でした。

しかし、事はそう上手く運ばず、国内でいろんな映画業界人に「黒帯」を見せたのですが、「すごいね……頑張ってね……」とみんな潮が引くように去ってしまって。心臓がキューっとしましたね。「きっと何か起きるはずだ」と、バイヤーとして培った自分の直感を信じるしかありませんでした。でも半年以上は何も起きなくってね、もう真っ暗闇でした(笑)。それから1年半経って長編映画「黒帯KURO-OBI」が完成して、モントリオール映画祭に出品した時には感無量でした。

 

 

005.
6秒ならスコセッシを超えられる!かもしれない

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西監督は現在も様々なことに挑戦されていて、6秒動画のVineもはじめられています。非常に面白いのですが、これから先、どんなビジョンを描いているのですか?

Answer

古いことへのしがらみを全部捨てて、新しいことにチャレンジしていきたいです。その理由は、90分の映画だと世界の名だたる映画監督には敵わないと思ったからです。そんな時にYouTubeが出てきて、ハッとしました。すぐに10秒ほどのメイキング映像をアップロードしてみると、瞬く間になんと再生回数20万回を超えて!

さらに去年の年末に知ったVineという6秒動画をきっかけにソニー・デジタルエンタテインメントの福田さんと出会い、意気投合して世界で初めてのVine向けアクションムービー「ハイキック・ゾンビ」を監督しました。6秒×12話で72秒のアクション映画です。この6秒がループするvineという世界はとても面白く、日々研究しながら様々な映像をアップしています。

上には上がいる映像業界で、15秒の映像で勝てるかどうかわからない。でも、もしかしたら6秒なら負けないかもしれない。

デジタル世界は、私たちが死んだあとも、孫子の代まで、制作したモノが永遠に残る可能性が高い世界。地球がなくなった後、もしかしたら宇宙でそれを拾う生物が現れるかもしれない……。その時に、なんだこの西という男は!めちゃくちゃかっこいいアクションを残しているじゃないか!なんて、思われたら最高ですね。

何か新しいことを始めるには勇気が必要です。でも今は、ほぼコストゼロで誰でも簡単に映像を公開できる時代。映像を作ってネットにアップして再生回数や反応を見て、また作ってアップして……と何度でもチャレンジできますから。

恐れることなんて何一つありません。

何か直感したら、新たな一歩を踏み出してみることに価値があるんじゃないかな。

最後は、西監督の最新作で!

 

 

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