じいちゃんばあちゃんがギャングスター!?高齢者が握るスプレー缶

寂れた街のストリートを、夜な夜な吹き溜まる不良どもが占拠する。おもむろに立ち上がると思うとスプレーを一振り。ふと朝目を覚ませば、昨日までなかったそれが、壁一面を埋め尽くしている。

「Graffiti(グラフィティ)」。通例のアートとは乖離(かいり)し、社会に対する不安、人種差別や貧困を訴え、そして自らの存在意義などを表現する。

さて、これを定年を越えたじいちゃん・ばあちゃんがやっているとしたら。場所はポルトガルの首都リスボン。サングラスにマスク、手にはスプレー缶を握り、mural(壁)へと殴り書きだ。

きっかけは、
じいちゃんばあちゃんからの
“質問攻め”

160309_heaps-graffiti_02photo by Rui Gaiola / LATA 65

しわしわの顔でにこにこ。はたまたニヤリ。活気に満ちあふれるその顔を輝かせ、壁へとスプレーを大胆に吹きつけるじいちゃん、ばあちゃん。

「LATA 65」という、不定期に開催されるワークショップがある。主催するのは、Lara Rodrigue(ララ・ロドリゲス)含む数名のグラフィティ・アーティストで、老人たちがグラフィティを描く為のものだ。なんともユニークなアイディアだが、ひょんなことから生まれたらしい。

「私たちは、ポルトガルのグラフィティシーンをより広げる為、『WOOL-Covilhã Urban Art Festival』というのを毎年開催してるのですが、ペインティングについて数多くの質問が寄せられました。その多くが、驚くことに“老人の方々から”だったんです」。

ならば、自分たちで体験してもらいましょう、と最初の計画をコーヒーショップでざっくりと立て、その2週間後には第1回目を開催。

160309_heaps-graffiti_03photo by Rui Gaiola / LATA 65

「LATA」はポルトガル語で「缶」を意味する。つまり、「缶を握るオーバー65(定年退職を迎えた高齢者)」といったところだ。ララは、「LATA65」の意義を、確信を持って話す。

「老人に限らず人間にとって、活発に年を重ねることや、レスジェネレーション(世代間の垣根をなくす)の中で共に活動してこそ、より生きる意味を感じられると思うんです。やはり、どの社会でも注目されるのは働き盛りの“若者たち”。社会に忘れ去られては、どうやって生きる覇気がわくでしょう。LATA65では、“高齢者”、つまり時代の中心ではない世代に、現代アートへの“接触”を与えることができます。そして、興味、やる気を、もう一度持つ。好奇心、熱意や創作というものに対する年齢は、タダの数字です」。

「そんなの金の無駄遣い」160309_heaps-graffiti_04

 photo by Rui Gaiola / LATA 65

計13回のワークショップを開催し、総勢120名以上の老人をギャングスターへと手がけてきた。ワークショップにはデザインの方法論を教示する以外のルールはなし。そりゃそうだ。アートというものは自らの自己表現方法の一つであり、誰かに強いられるものでなければ、受動的なものでもない。

足掛かりは早かったが、トントン拍子とはいかなかった。当初は、「グラフィティ×高齢者」という二つの事象をクロスオーバーするプロジェクトは理解されず、またしようとしてもらえなかったという。

160309_heaps-graffiti_05 photo by Rui Gaiola / LATA 65

ポルトガルの社会では老人に対しお金を使うことが、”無駄使い”だと認識されている。それに加え、老人が行うグラフィティときた。ワークショップをする度、社会の分厚く大きな既成観念という名の壁に対し憤りを感じ、悔しさを覚えるそうだ。

「このワークショップを開催する上で、制度・行政・公共施設・民間企業等に取り合ってきました。そこで感じるのは、老人に対しての概念や見方を大きく変えることは難しいということです。このワークショップについても、ただの金の無駄遣いなんてことが言われます。いつかは誰しもが年をとり老人になるのに、です」

「でも、このプロジェクトを通して、少しずつ現状が変わってきているのは事実です」。と、ララは付け加えた。「何よりも、ワークショップ後に見て取れる、じいちゃん、ばあちゃんの笑顔がこのプロジェクトを続ける意義なんです」。とも。

「LATA 65の大きなゴールは、このプロジェクトを始めたその日から何も変わっていません。このプロジェクトを続けること、このプロジェクトが世界各地に広がること。これが、私たちLATA 65が高齢者に対し、出来うる最良のサポートだと思います」。

160309_heaps-graffiti_06photo by Rui Gaiola / LATA 65

生粋のストリート育ちで自らの欲望にとことん忠実。時として危険も厭わない若者たちによるグラフィティ。一方、僕らが生まれるよりずっと前から、この世に生を受け、その長い人生の中で酸いも甘いも知り尽くした高齢者。

天地がひっくり返りでもしなければ、決して交えることのないジェネレーションが、LATA 65を通していま、ここに交わっている。そして、過激だからこそ「生きている」という実感を取り戻す。ちょっと不良な、愛に溢れた福祉活動とでも言おうか。

ここにある老人たちの童心に還った笑顔は、言葉よりも語る。「年齢はタダの数字」に過ぎない、と。

Licensed material used with permission by HEAPS

HEAPS

ニューヨーク拠点のデジタルマガジン。ニューヨークをはじめ、各都市の個人やコミュニティのユニークな取り組みやカウンターカルチャーシーンをいち早く配信中。現地ならではのコアなネタを厳選し、独自のライフスタイルを切り開くための“きっかけ”となるストーリーを届けることをミッションとしています。www.heapsmag.com

最近のおじいちゃんやおばあちゃんは、とってもパワフル!見ているだけで元気がもらえて、ポジティブな気分になります。ここでは、いくつになっても挑戦を続ける元気...
むしむしジメジメの梅雨モード。と同時に急増するのがかゆ〜いアイツ。蚊よけグッズは何を使ってる?昔ながらの蚊取り線香は、夏の風物詩としても◎。キャンドルタイ...
日本のコンビニは、外国人や海外に住んでる日本人にとっては目がキラキラしてしまう場所です。たとえば私の住むアメリカでは、コンビニは少し怖い場所という認識があ...
12月の平均日照時間がわずかに6時間半ほどしかない、北欧スウェーデン。そんな自然環境だからこそ、暗闇を快適に過ごす便利グッズのクオリティには、思わず唸って...
陽気に踊り出すおばあちゃんと、それを一緒に楽しんでいる孫のロス・スミスさん。仲が良すぎて、一見いじめているようにしか見える動画もありますが、おばあちゃんは...
「おじいちゃんおばあちゃん×最新のIT」という組み合わせは、ときに想像の斜め上をいく話題を振りまいてくれます。イギリスのリヴァプールに住む86歳のおばあち...
最近、こんな疑問を感じたことはありませんか?「クラフトビールはビン入りよりも缶に入ったもののほうが多い」と。どうやら日本だけではないようです。クラフトビー...
いつも優しくあなたを守ってくれる存在、おばあちゃん。ここで紹介するのは、Pucker MobでAlexa Thompson氏が書いた「おばあちゃんに感謝す...
米メディア「Mic」に、掲載されたこの記事。かなり際どい内容です。なんせ、さまざまな人が各々のおばあちゃんから聞いた「セックスに関するアドバイス」をまとめ...
1日の仕事が終わって、待ちに待った家での晩酌。家で飲むビールって最高の息抜きです。とはいえ、缶からグラスへとただただ注いでいませんか?そう、缶ビールのおい...
「Eurostat」が行なった、ヨーロッパで一番幸せなのは誰?という研究で、「デンマークのおばあちゃん」との結果が発表されました。同国は、高額な税制度と引...
ハイチでは800人以上の死者を出したと報じられた大型ハリケーンの「マシュー」。アメリカ南西部にまで上陸したとき、中西部ネブラスカ州のオマハに住んでいるエリ...
大好きなものを、大好きな人と一緒に食べることが、じつは一番の健康法なのかもしれません。米・ワシントン州に、それを体現しているかのような可愛らしい夫婦がいま...
細長い容器に、バターをブロックのまま豪快に投入。すると、数秒でスプレー状の“バタービーム”を放てるように!コレは、冷蔵庫から取り出したばかりの「固いバター...
ロシアのとあるファッションブロガーが、高齢者限定のモデル事務所を設立し、世界中から注目を集めています。驚きなのは、全員が経験のない素人だという点。しかも、...
撮影されたのはカナダ・ブリティッシュコロンビア州、バンクーバー北部の山中です。2015年11月19日のこと。例年よりも雪が積もるのが早く、近くにある北米最...
1月半ばに入って急に寒くなりましたよね。自動販売機の赤いボタンにもつい手が伸びちゃいます。しかし、そんなときにこんな商品はいかが?コーンポタージュにしよう...
建物の壁面や商店のシャッターにスプレーやフェルトペンでなぐり描いたグラフィティ(文字だけのものはタギングとも)を読解するのは至難の技。あえて読みにくく描い...
深刻な大気汚染が続く中国・北京でいま、ある酸素ボトルが飛ぶように売れ、予約が殺到している。と海外のメディアが一斉に取り上げ、大きく報じました。どうやら、そ...
「もし私が、若い女性だったら。正直、どうしたらいいか分からないわ。あなたたちには、テクノロジーがあるわね。それによって随分便利になったでしょう。でも、それ...