「赤羽」で乗り換えるなら一旦下車!そしたら “ここ” に行ってみて!
オール・タイム・フェイバリットなものを紹介していただく週替わり連載企画。今週は、東京・赤羽にある R&B 喫茶店『CAFE B-3』のオーナーにお話をきいてきました!最終回となる今日は、オーナー自身とお店のことについて、教えていただきました。
赤羽にあるR&B喫茶『CAFE B-3』のマスター。元プロレス少年。お店の片付け作業のBGMは、もっぱらプリンス。
はじまりは
『ノルウェーの森』?
柴田:20代前半の若いころ、友達に、新宿にあるブルース・バーに連れていってもらったんです。そこのマスターって全然喋らない人で、でも作るカクテルがすごく美味しい。ウイスキーのロックひとつにしても....ウイスキーのロックって、お酒と氷をグラスにいれるだけじゃないですか。それなのに、今だにあんなふうにはつくれない。「バーテンってかっこいいな」って、そういう世界に憧れて、その近所の音楽バーで働くようになったんです。
ーーそれまではまったくバーテンの道は考えていなかった?
柴田:それまでは家具職人だったんです。人と話すのも苦手だったし。好きなことについては今日みたいに喋れるんですけど(笑)。あるときテレビ番組で、イギリスの若い家具職人の見習いの子が、ビートルズの『ノルウェーの森』をバックにかけながら黙々と家具をつくっている映像を観て、いい働き方だなと。好きな音楽をききながら黙々とものを作って。
そして実際に入った工場で、AMラジオで流れていた笑福亭鶴光の下ネタを聴きながら黙々と家具をつくって....(笑)、若かったのもあり「思っていたのと違う....!」となるわけです(笑)。
ーービートルズと鶴光師匠ですもんね(笑)。
柴田:はい(笑)。それで、さっき話した新宿のブルース・バーに飲みに行って、仕事をやめたという話をしていたら、たまたま来ていた近所のお店の方に誘ってもらって、そこで働くようになるんです。僕が初めて行った新宿のブルース・バーのマスター、実際に働かせてもらったお店のマスター、その2人が僕の師匠。本当に、その方たちの仕事を見てきて、今があると思っています。
ひとつの夢が実現したもの
ーー『B-3』というお店の名前の由来って?
柴田:これは、20代前半でバーテンを始めたときから、将来自分の店をやるなら、と決めていた名前で。ハモンドオルガンというオルガンのなかに、“B-3”という機種があって、そこからとったんです。
ピーター・バラカンという音楽評論家の方がやっていた深夜ラジオのオープニングの曲が、ジャズのオルガンの曲で、それもかっこよかったですし、ビートルズやローリング・ストーンズの曲にもハモンドオルガンを使っている曲があって、その独特な音色がすごく好きだったので。ロゴ的にも“B-3”ってかっこいいんじゃないかなと。
ーーロゴやこのマークも気になっていました。
柴田:最初に新宿のバーで働いていたとき、お店のオープニング・カードに、黒人が歩いているイラストがデザインされていて。それをすごく気に入ってきいたら、お店のお客さんがデザイナーさんで、その方が若い時に、美大でデッサンしたものだったんです。
それで、「将来、自分でお店をやったら絶対にこの絵をつかわせてください」って言っていたんです。それにすこし手を加えて、マークっぽくしたのがこの看板で。看板だけではなく、ショップカードや名刺のイラストやデザインは、その方が手がけてくれたものなんです。これは、ひとつの夢が実現したものですね。
メニューひとつとっても、このマークが入るだけで締まる。すごく気に入っているシンボルマークです。つくってくれた方は、もう亡くなってしまっているんですけど、その方から受けている影響も、とても大きいです。
ーー若いころからずっと決めていたことを叶えたり、本当に好きなものだけをあつめて、このお店ができているんですね。
柴田:でも、例えば音楽でも、あまりに好きすぎるものをかけちゃうと仕事にならなかったりして(笑)。近所のバーの方が言っていたんですけど、“自分が一番好きなお酒はおかない” そうで。好きすぎると冷静に説明ができなくなってしまうからと。それ、ちょっとわかる気がするんです。
こうやって好きなものを聞いてくれているから、思う存分話せていますけど。たぶん、プリンスが好きなお客さんが来たら、僕、それ以上に話してしまってお客さんが話せなくなっちゃいそう(笑)。この職業って、聞くのが仕事だと思うので。
前は自分の好きなものに対して共感を得られたり、だれかと意見が合致した時が楽しいと思っていて、今ももちろんそう思いますけど、最近は “お客さんが好きなものを受け入れて理解する”っていうのがこの仕事の大事なところなのかなって。自己主張ばっかりだったので、昔は(笑)。
だれかの空間や時間を
演出できるような
ーー赤羽という場所で、音楽バー。どうですか?
柴田:お客さんの層は、ばらばら。近所の70代のおばあちゃんも来てくれるし、音楽やカフェが好きな若い子たちも来てくれます。赤羽も、徐々に若い人が増えてきていて。
“昼間からお酒を飲めて、夜遅くまでコーヒーが飲めるお店” をやりたかったんですよ。自宅が近いというのもありますけど、赤羽ってこういうお店がないんですよね。そこに、自分の好きな音楽をかけられたら、というのがあって。細かいところではまだまだ理想を追いかけている部分もありますけど、いつか観た『ノルウェーの森』を聴きながら働く男の子のように少しはなれてきているかな。
僕が師匠と言っている方は、お店の空間演出がとても上手い人で。“入った瞬間に違う世界が広がる” お店を表現している。映画のワン・シーンのように、お客さんがお酒を飲んだりコーヒーを飲んでいて、そこにBGMをかけて。僕が監督じゃないですけど、だれかの空間や時間を演出できるような、そういうお店をずっとやっていきたいです。
『B-3カレー』は、カシューナッツやトマトを隠し味にした、大人気のバターチキンカレー。特製のブレンドコーヒーやドイツ産の紅茶など、こだわりの1杯と一緒に楽しんで。
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