持続可能なアート!「ラッピング凱旋門」が暑さ対策のためのアイテムに

来たる2024年には、パリでオリンピックが開催される。

数々の準備に追われているパリ当局だが、とりわけ懸念されているのが、気候変動による酷暑。2023年の南ヨーロッパは記録的な熱波に襲われ、来年も同様の気候に見舞われることが予想されているのだ。

そんな中、ある芸術作品が耐暑策として注目されているらしい。

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2021年9月に公開された、クリストとジャンヌ=クロードによる公共インスタレーション『ラッピング凱旋門(L’Arc de Triomphe, Wrapped)』だ。

これは、パリの名所たる凱旋門を、東京ドームを半分以上覆うほどの巨大な布と全長約3kmに及ぶローブで包み込んだ環境芸術作品である。これらは熱可逆性のポリマーで作られており、熱を通すことで再利用できる。

『Forbes』によると、ポリプロピレン製で100%リサイクル可能なこのカバーが生まれ変わり、パリとその周辺地域にて、公共イベント用の大型テントとして五輪に活用される計画が進んでいるという。

パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏は、声明の中で「芸術界が気候変動の課題に適応する能力を示した、非常に良い例だ」と述べている。

さて、芸術の新たな可能性を切り拓いた『ラッピング凱旋門』だが、作者であるクリストとジャンヌ=クロードは本作に限らず、膨大なコストと時間をかけ、一度見たら忘れられない大作の数々を発表してきたアーティストである。

周囲の環境も巻き込み、損なうことなく芸術に転化する彼らの作風は、のちに「環境彫刻」と語られるジャンルの先駆者。人々の環境意識が高まるずっと前から、自然を扱った多くの芸術を発表していたのだ。

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二人は、作品が生態系や環境に影響を及ぼすことのないよう、数々の調査や研究を欠かさず行い作品を完成させていた。

五輪で再び日の目を見ることとなったローブや布がリサイクル可能なものだったことも、きっと偶然ではないだろう。

凱旋門を包む構想は1961年にまで遡り、実現までに約60年もの歳月が費やされた。完成を見届けることなくこの世を去っていった彼らだが、大型テントに生まれ変わる自らの作品を見て、何を思うのだろうか。

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