日常生活で実践できる、「5つの考える訓練」って?

机に座ってうーんと頭を抱えたり、眉間にしわを寄せて思索にふけったり。「考える」というと、何か「お勉強」的なイメージがつきまとう。だが、それはもっと身近で、日常的なもの。

ここでは、拙著『考える訓練』から日常生活の中で実践できる「考える訓練」を紹介。

考えることは特別なことではない。気づいたときにその都度ちょっとだけ考える習慣にしておけば、ひとつひとつの「考える作業」は小さくても、その積み重ねがいずれ大きな差になる。

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01.
日頃から子どものように
好奇心を解き放っておく

普段から「考える訓練」をするためには、何事にも「好奇心」を持つことが大切である。好奇心とは、自分が知らないことや不思議に思うことに興味をもち、知りたいと思う気持ちのこと。

「どうして」「なぜ」と思ったことには、関心を持たずにはいられない。「考える訓練」をするつもりならば、日頃から子どものように好奇心を解き放っておくのがいいだろう。

私は先日、銀行で思いの外待たされてしまった。本や原稿でもあれば待ち時間を有意義に過ごせたのに、と思ったが、結果的には私は十分楽しんで待ち時間を使い切ってしまった。なぜなら考えることがたくさんあったからだ。

受付の人の中で誰がボスか推測したり、窓口業務の段取りを考えたり、ソファーのわきに置いてある雑誌を見てどうしてこの雑誌が選ばれたのか考えたり、ソファーの肘の角度を見てなぜこのカーブにしたのだろうと考えたり、考えることはつきなかったのだ。

こうして生活していると、「考える訓練」ができることはもちろん、人と違った着眼点を持つこともできるようになる。ぼーっと過ごすのはもちろんいいが、ときには些細なことにも関心を持ち、いろいろ考えをめぐらせてみるのも、おもしろい時間になるだろう。

02.
理由を「3つ」考えると
主張が通しやすくなる

Comparing the answers

もし、子どもが何か買ってほしいと言ったときは「必ず理由を3つ言うように」と教育すると良い。その方法で、父親なり母親なり祖父母なりを説得できたら買ってやる、と言い続けるのだ。

たとえばゲームを買って欲しいとする。子どもは「ゲームが必要だから」とまずは必要性のところから親を説得する。さらに「そんなに高くないよ。だから買えるでしょ」と許容性から攻めてくる。そして「なぜ買ってもらえないの?勉強時間が少なくなるからいけないっていうの?」と「ゲーム」と「勉強」を対立させ、「でもちゃんと1時間勉強するから」と、正反合の論理を展開し、相手を説得しようとするのだ。

大人でも、人を説得したり、自分の意見を主張したりするときは「理由を3つ考える習慣」をつけておくといい。会議の席、小遣い値上げ交渉など、どんな場面でも、3つの角度から説得できれば、主張が通る確率はかなりアップするだろう。

03.
2つのものを
比較するクセをつける

日常生活の中の「考える訓練」としては「本の読み比べ」もおすすめである。同じテーマの本を読み比べたり、同じ著者の本を読み比べたりすると、より考えを深めることができる。

あちらの本ではこう言っているのに、こちらではこう言っているのはどうしてだろうとか、こっちとあっちの共通点は何だろうとか、この人が一貫して主張しているのは何だろうと考えるのである。特に、同じテーマで著者が違うものを読み比べてみるのは、「考える訓練」をする意味で非常に効果的だ。

本や新聞だけでなく、映画やDVDを見比べてみるのもおもしろい。同じ作品の映画化なのに、監督や俳優が違えば、描き方はまったく違ってくる。この監督はこの作品のどこに注目したのか、原作と映画の違いはどこか、2つの映画の共通点と相違点は何かなど、いくらでも考えることができる。ちょっとしたことを比較して、「なぜかな?」と考えるだけでも、かなり考える力は身につくのではないだろうか。

04.
年齢、職業、国籍…
さまざま人と出会う機会をつくる

Group of people shaking hands infront of New York skyline

人は自分と同じだったり、自分で理解できたりするものの中にいると、居心地がよく、安心できる。しかし、それだとだらけてしまい、考えることをやめてしまう。反対する人たちのど真ん中に出て行くことも大切だ。

自分の周りを仲よしの人たちだけで固めてしまうと、心穏やかに平和に過ごせるだろう。でも、それだと進歩がないと私は思っている。自分と違うものとふれあうことで、いままでの自分の経験や認識の領域とちょっと違うものが出てくる。そのときに、「なぜだろう」「どうしてだろう」と考えるきっかけが生まれるのだ。

だから、私はできるだけ年齢、性別、職業、出身地、国籍など、いろいろな人とふれあうことを心がけている。ただ、あまりにがんばりすぎて、会うだけで気が滅入るような人ばかりになるのは本末転倒なので気をつけてほしい。

新しいものに触れたときにあらわれる変化やエネルギーが「考える訓練」ということにおいても重要なのではないかと思っている。

05.
とはいえ、訓練で
一番大切なことは「健康」

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いつもと違う、ちょっとしたことをわざと入れてみると、「考える訓練」になる。例えばふだんシャワーしか使わない人は湯船につかってみたり、いつもと違う店で外食してみたりといった、些細なことでいい。それがきっかけで想像が広がったり、新しい発想が思いついたりする。

そのために必要なのは、じつは健康だと思っている。言うまでもないことだが、肉体的精神的に健康でなければ、「考える訓練」を行うのは難しい。もちろん不健康なときや疲れているときに思考が広がる人もいるかもしれないが、ネガティブな方向に考えが広がってもあまり前に進まないだろう。

当たり前のことだが、きちんと食事をし、きちんと睡眠をとるのは、心身の健康と健全な考え方に欠かすことができない。このことは「考える訓練」においてじつは大切なことだと私は思っている。

考える訓練
コンテンツ提供元:サンマーク出版

伊藤真/Makoto Ito

伊藤塾塾長。東京大学在学中に司法試験合格。その後、受験指導を始めたところ、たちまち人気講師となり、「伊藤真の司法試験塾(現、伊藤塾)」を開設する。「伊藤メソッド」と呼ばれる革新的な勉強法を導入し、司法試験短期合格者の輩出数全国トップクラスの実績を不動のものとする。「合格後を考える」という独自の指導理念が評判を呼び、「カリスマ塾長」としてその名を知られている。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。