五大湖の水質サンプルの90%からマイクロプラスチック検出

「有害物質に汚染された海洋生物を食べることで人体にも悪影響が及ぶ」

こんな話、一度は聞いたことがあるのではないだろうか。そう、ほとんどの人が小学校の時に習った4大公害病のうちの一つ、「水俣病」がまさにこのようなカラクリで人体に伝染していった。

しかし、それは1950年代のこと。何十年も経過した現代を生きる私たちには、まったく関係のない話題……なんてことは決してない。同様の事態がいま、まさに起こっているのだから。

アメリカ、カナダに国境を接する五大湖から飛び込んできた、“驚きの事実”に注目したい。

五大湖で起こる危険な事態

アメリカとカナダの研究者たちが五大湖の水質を調査したところ、サンプルの90%から人体に有害なマイクロプラスチックが検出された。それも、安全基準を超える量で

マイクロプラスチックと言えば、海の問題だと捉えていた人もいるかもしれない。しかし、現実には飲料水や農・工業用水などの資源としても使用される湖でも、いまそれは問題となっている。

マイクロプラスチックは極めて微小な粒子であり、人間や野生動物にも影響を及ぼす可能性がある。そのため、五大湖に面する両国は対応策に慎重だ。

「現状では盲目的に行動する他ない」と警鐘を鳴らすのがトロント大学の生態毒性学者Chelsea Rochman氏と、研究室に所属するPh.D.学生Eden Hataley氏。

マイクロプラスチックを段階的に減らしていくには、課題があると彼らは考えている。

マイクロプラスチック除去への
課題と対策

それというのも、どうやら国を分かつ関係者同士のコミュニケーションが行われていないから。

現在のところ、政策立案した政府側の人間と実際に現場でデータ採集する科学者との間では、協議の機会が持たれていないらしい。それだけでなく、異なる研究グループや非営利団体が個別に調査活動を実施。知見が共有されることなく、連動できていない現状だという。

こうしたなか、唯一の打開策と言われているのが「The list of chemicals of mutual concern」への分類。意訳するなら化学物質の相互懸念リストといったところか。

リストアップされた物質をアメリカとカナダ両国間で協力して五大湖から取り除いていくための、いわば取り決めのようなもの。2016年に初めて発表されて以来、人々の健康や環境に害を及ぼす物質がリストに掲載されてきた。

ここにマイクロプラスチックが加わることで、五大湖の水質改善を目指す人たちの間で共通認識が育まれ、関係者全員が一丸となって未曾有の事態に立ち向かうことが可能となるはずだ。

発生原因を明らかにして
環境汚染を完全防止

Rochman氏とHataley氏は、現状五大湖に存在するマイクロプラスチックを除去するだけでなく、流入源を特定して、完全に排除することも必要だと語っている。

汚染原因はまだ明らかになっていないが、発見につながる様々な事象は確認されているようだ。

都市の近隣に流れるオタワ州のルージュ川やミシガン州のヒューロン川では物質の最高濃度が確認されている。また、洗剤にマイクロプラスチックが含まれているため、洗濯水が流れ着く下水処理施設も関係している可能性があると考えられているとのこと。

 

さて、汚染原因はまだ特定されてはいないものの、発見につながるさまざまな事象が確認されている。

たとえば、オタワ州(カナダ)の都市近郊を流れるルージュ川やミシガン州のヒューロン川では、汚染物質の最高濃度が確認されている。また、洗剤に含まれるマイクロプラスチックが廃水から下水処理施設へと流れ着き、これも関係している可能性が指摘されている。

先述のRochman氏とHataley氏は、五大湖に存在するマイクロプラスチックを除去する方法だけでなく、流入源を特定し、完全に排除する必要性を『FOX 2 Detroit』に訴えた。

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人体に与える具体的な影響はいまだ解明されてはいないが、「アメリカ化学会」の発表によると、人間が一年間のうちに食物とともに摂取するマイクロプラスチックの量は、3万9000〜5万2000個とも言われている。

知らぬ間にプラスチックで汚染された魚を食べ、体内に蓄積していく……そう考えるだけで足の震えが止まらなくなる。でも、それは決して対岸の火事ではない。

Top image: © Elena Elisseeva/Shutterstock.com
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