酷暑により音楽ライブで死者。今後、日本の主催者は「持ち込み」を許可できるのか?

昨年、リオデジャネイロで行われたテイラー・スウィフトのコンサート。

6万人以上の観客が集る盛況ぶりだったものの、42℃という猛暑が祟り、少なくとも1,000人が失神する事態に。

さらに、そのうちの1人、23歳のアナ・クララ・ベネビデスさんは心肺停止となり、病院に搬送された後に死亡した──。

この事件で浮き彫りとなった問題、私たちにできたこと、できることは?

浮き彫りになる、世界的な気候変動

今回の猛暑による惨事は、改めて世界的な気候変動の影響を浮き彫りにしている。ブラジルだけでなく、アメリカ、アルゼンチン、チリ等でも熱波による問題は深刻化しており、いよいよ日常生活に支障をきたすレベルまで悪化していると言えるだろう。

特に、米大陸での猛暑は「エルニーニョ現象」との関連も強く、音楽イベントが盛んな地域として喫緊の問題に直面している。こうした中、近年では影響力のあるアーティスト本人が気候変動について注意を呼びかける動きも顕著になってきている。出演する主役として、「伝える責任」を持つべきという声も上がっているようだ。

もちろん、観客として我々が知識をつけることも重要だ。今後、ライブのような熱狂的な現場において自らの身を守るためにも、気候や環境に関する理解を深めたり、各々ができるアクションの実行が求められている。

水分不足が引き起こす、脱水症状

来場者が直面した最大の問題、それは水分不足による脱水症状である。

猛暑の中、なぜ多くの来客の手元に水がなかったのか?まず、もはや慣例的にコンサートの主催者側は水を含めた飲料の持ち込みを禁止していたのだが、問題なのは会場内で水の入手が困難であったことだ。この点が指摘され、イベントには多くの批判が上がった。

人混みが多い場所では、風通しの悪さから熱中症のリスクが高まるため、異常気象に関わらず、こうした状況での水分補給は必須だ。そして、会場内での供給が追いつかないほどに酷暑が深刻である以上、いまや飲み物の持参は推奨されるべきでは?

慣例化した過去に増して、現在の環境は過酷だ。主催側はドリンクの売り上げよりも、人命の安全を優先すべきである。

求められる「現代的な」リスク評価

猛暑の中での野外イベントでは特に、しっかりとしたリスク評価が不可欠だ。

何千人ものファンが太陽の下で何時間も耐えるのだから、危険を回避するために綿密な計画が求められるのは必然。コンサート主催側は、日陰になる待機エリアの確保や給水システムの整備といった対策により力を入れる必要がある。

また、不測の事態にも対応できるよう、来場者同士、または会場スタッフによるタイムリーな安全情報の伝達も重要だ。

今回の例では、予測できたはずの猛暑や人混み、伴う水分の供給不足といった評価の甘さが問題となった。このような惨事を繰り返さないためにも、運営側は前提となる安全確保に加え、透明化された情報の共有が求められている。

今回の事件をきっかけに、ブラジル当局は緊急規則を発令し、あらゆるイベントにおいて水の持ち込みが許可されたという。

イベントをしっかり楽しむためにも、演者、主催者、観客の誰もが深刻化した環境問題の影響を踏まえ、現代的な知識・リスク評価を徹底しておくことが重要だ。

湿度が高く、世界的な音楽イベントも多い日本においても、この先のシーズン、暑さへの対策により一層意識を向ける必要があるだろう。

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