「観測史上もっとも暑い年」に、世界はこんなアイデアで立ち向かっていた
観測史上もっとも暑い年──。世界気象機関(WMO)の公式発表に、もはや誰も驚かなかくなってしまったのではないだろうか。毎年のように更新されていく史上もっとも暑い年、おそらくは来年もきっと。
抜本的な解決策や決定的な打開策が、ないわけではない。たぶん。ただ、そうした“革新”に自然は待ったをかけてくれない。
それでも、世界各地でさまざまなアクションが起きた2023年。一歩でも前へ。そう信じるパワーを希望を、新しい年につなげていきたい。
“知る”から始まる
気候変動へのアプローチ
ユニークな切り口のプログラムを始めたのは、米オハイオ州ジョンキャロル大学。新たに「気候変動文学(Climate Change Literature)」というクラスを開講した。
文学作品を通じて気候変動についての洞察を豊かにし、人々の関心を喚起することを目指しているそうで、授業では古典文学から現代の作品まで、さまざまな文学作品を扱う。
気候変動をテーマにしたフィクション作品や環境問題を扱った作品も含まれ、従来とは異なる視点から気候変動についての考えを探究。学生たちが文学作品を研究し、見解や解釈を発表することも。まずは「知る」ことから。
ポリエステルの
環境に優しいリサイクル法
コペンハーゲン大学の化学チームが、ポリエステルのリサイクルに画期的な方法を提案。「炭酸アンモニウム」を使用してポリエステルをその単量体(モノマー)に分解し、同時に綿を回収するというもの。
年間約6000万トンが生産されるポリエステルのリサイクル率は、わずか15%ほどだそう。残りの大部分が廃棄場や焼却炉に送られ、炭素排出を助長している状況の打開策となれば、テキスタイル業界の持続可能性やリサイクル率の向上が、また一歩前進するかもしれない。
気候のための「特殊部隊」創設
バイデン政権が、気候変動に対処するための部隊「American Climate Corps」を創設し、人材育成に努めると発表したのがこの秋のこと。
2万人以上の若者たちに再生可能エネルギーや環境保護などに関する訓練を有給で提供するそうで、プログラムを終了した若者たちは気候変動への対応を行っている企業や団体などで従事することに。武器ではなく知見とアイデアを抱え、環境問題に立ち向かう。活躍に期待したい。
異常高温が
“ワインの縮図”を変える
異常高温を逆手にとる、という考え方もあるかもしれない。
ウェールズのワイン生産において好影響をもたらしているという。記録的な猛暑、そして冬場の長雨がその原因のようだが、ここ5年ほどみても収穫量は8トンから16.5トンと2倍以上に跳ね上がったらしい。
もちろん、たんに収量が増えただけではない。ぶどうがよりジューシーで糖分も多くなっているようで。モンマスシャー州アバーガベニーにある「White Castle Vineyard」のオーナーRobb Merchant氏は、良質なワイン生産に気候変動が大きく影響を及ぼしていると「BBC」の取材に対し答えた。