「もう戻らない」はずの青い海 再生への挑戦が問いかける地球の未来
かつて中央アジアに広がり、世界で4番目に大きかった「アラル海(現在のカザフスタンとウズベキスタンまたがる塩湖)」。その広さは日本の面積の約2割に相当し、「世界最大の環境破壊」とも呼ばれる悲劇の舞台となった。湖は今、どうなっているのだろうか。
失われた湖と、暮らしの崩壊
アラル海の縮小が始まったのは1960年代。旧ソ連による綿花栽培のための灌漑事業が原因だった。湖に流れ込む主要な河川の水量が激減し、湖面はみるみるうちに縮小していく。ドイツ「DW News」が報じたところによると、最盛期には68,000平方キロメートルもあった水面は、2010年にはわずか10,000平方キロメートル以下になってしまったそうだ。
湖の水が失われるとともに、そこに住む人々の暮らしも崩壊していく。塩分濃度の上昇によって漁業は壊滅状態となり、かつて年間4万トン以上あった漁獲量は1980年代にはほぼゼロに。干上がった湖底からは塩分や有害物質を含んだ砂嵐が吹き荒れ、周辺住民の健康や農作物にも深刻な被害をもたらしていたようだ。
砂漠に緑を植える、希望の挑戦
しかし、この絶望的な状況のなか希望を灯し続ける人々がいる。カザフスタンでは、乾燥した湖底にサクサウールなどの植物を植林する活動が行われている。サクサウールは中央アジアに自生する乾燥に強い植物で、塩分にも耐性があるらしい。じつはこの植樹運動、日本のNPO団体も数年前から活動を続けているようだ。
「砂漠に木を植えてもムダだ……」当初は、そんな声も上がった。しかし、植林活動は砂嵐の抑制効果だけでなく、生態系の回復にもつながることが徐々に明らかになってきた。
「サステナビリティ」のその先へ
アラル海が突きつける問い
アラル海の再生に向けた取り組みは、私たちに多くのことを問いかけている。環境破壊の深刻さとともに、人間が自然に対してどれほどの責任を負うべきなのか。そして、経済発展と環境保全をどのように両立させていくべきなのか。
アラル海の教訓は、決して遠い国の他人事ではない。気候変動や海洋プラスチック問題など、地球規模で環境問題が深刻化する今、私たち一人ひとりがサステナビリティ」という言葉の先にある未来について、真剣に考え、行動していく必要性に迫られているのではないだろうか。
枯れた砂漠にいつか緑のオアシスが戻ってきますように。