世界から「夏」を奪った史上最大の自然災害

何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。

それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。

アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?

人類史上最大規模の火山噴火が発生

2022年1月15日午後1時ごろ(日本時間)、南太平洋のトンガ沖で発生した海底火山による噴火の影響で、8000kmも離れたここ日本にも津波が押し寄せたのは記憶に新しいところ。

噴煙が一気に立ち上り拡大していく様子を捉えた映像に自然の猛威を感じたことでしょう。数十年に1回とも100年に1回とも言われる規模の噴火は、20世紀最大級の噴火と呼ばれるフィリピン・ピナツボ噴火(1991年)に匹敵する大きさだったそうです。

ですが、人類は過去にこれらをはるかに凌駕する人類史上最大の火山噴火に見舞われたことがありました。

それは、1815年4月10日のこと。

現在のインドネシアにあたるスンバワ島(当時はオランダ領東インド)にある活火山・タンボラ山で大噴火が発生しました。

噴煙は成層圏に達し高さ40kmを超え、噴出された火山灰は半径約1000kmに広がり、500km離れたマドゥラ島は噴火後3日間にわたって日の光が届かない暗闇と化し、噴火にともなう爆発音は、一説には1700〜1800km離れた場所でも聞こえたほどだったとか。

数世紀にわたり活動の兆候が見られなかったタンボラ山でしたが、1812年より小規模な噴火を繰り返し、3年後の4月に入り本格化。10日から11日にかけ、大規模な噴火を発生させたようです。

当然、被害も甚大でした。

噴火で発生した火砕流は、25km離れた村を飲み込み集落ごと壊滅させ、海へと流入したことで津波が発生。付近の島々の海岸線を襲ったそうです。スンバワ島の住民およそ1万2000人が犠牲となり、周辺地域まで含めると死者はおよそ7万人から12万人に達したとも。

さらに、被害は東南アジアだけにとどまりませんでした。

夏のない年

昨年のトンガ沖の海底火山噴火でも懸念されていたことのひとつに地球の寒冷化があります。

これは、成層圏にまで達した火山灰による影響で日射が遮られる「日傘効果」の影響により地球全体の気温が低下する現象。タンボラ山の大噴火は最悪の事態を世界各地にもたらすことに。

この冬、平均気温が1.7度低下。各地で著しい異常気象が発生し大規模な寒冷化が襲います。また翌年には6月でもアメリカ北東部に雪が舞い、ヨーロッパでは春から秋にかけて長雨が続き、各地で農作物が不作。深刻な食糧不足を引き起こしました。

北半球を中心にこの夏の平均気温は4度も低かったというデータもあり、1816年は「夏のない年」としてこちらも記録に残ることとなったのです。

過去2世紀にこれほどまで犠牲者を出した自然災害は類がなく、「人類史上最大の火山噴火」として今日まで語り継がれることとなったタンボラ山大噴火。規模は違えど、先の海底火山噴火からも自然のもつパワーの前には人々は無力であることを、どこかで意識しておく必要があるのかもしれませんね。

Top image: © iStock.com/Costas Kariolis
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