独立系アーティストを“ガチ”でサポートするコミュニティ始動

“持続可能なエコシステム”は環境問題だけじゃない。音楽業界にも!

インディペンデントに活動する音楽アーティストを支えるコミュニティB-Side Incubator」が始動した。

自由で実験的な音楽形成の“新しい場”

©B-Side Incubator

誰でも自由に音楽を作成・投稿することが可能になり、わざわざ事務所に所属せずとも、単独で活躍できるようになった現在。

そんな輝かしい時代の変化とは裏腹に、「SoundCloud」の経営難による身売りの検討や、今年4月に行われた「Spotify」のロイヤリティ支払いのシステム変更が起きるなど、いま、音楽業界は大きな転換点を迎えている。

そうなると、音楽でキャリアを形成していくこと自体が困難になり、音楽の循環システムそのものが変わっていってしまうのではないか。ミュージシャンを志す“若い芽”が、まさに摘まれようとしているのではないか。と懸念を抱いてしまう。

そうした状況に一矢報いようと、インディペンデントに活動する音楽アーティストを支えるコミュニティB-Side Incubator」が発足した。

日本版「WIRED」でエディターを務める岡田弘太郎氏を筆頭に、名だたるアーティストやプロデューサーが集まって参画された同コミュニティでは、主軸となる3つの機能を通じることで、アーティストを取り巻くエコシステムの形成やクリエイターエコノミーの活性化を目指している。

ちなみに、団体名の由来は、アルバムやシングルにおける「B面(B-Side)」はアーティストにとって実験的な楽曲を発表する場として機能してきた背景から、自由かつ実験的な場やコミュニティをつくっていきたい、という意思をなぞらえてのものだそう。

では、彼らが根幹とする「3つの機能」とはいかなるものなのか?

アーティスト活動を後方支援する
「B-Side Music Incubation Program」

「事業の創出や創業を支援するサービス・活動」という意味を指す、インキューベーション。

その名の通り、所属するアーティストには法律・契約から音楽プロモーション、コンセプトメイキングなどの全般を、多分野の専門家がサポート。各アーティストが理想とする活動スタイルの実現を手助けしてくれるそうだ。

また、審査員による審査をクリアすれば、1組あたり最大100万円の活動資金を受け取ることも可能。他にも審査員の音楽プロデューサーやトラックメイカーとの楽曲制作の機会が与えられるなど、すべて一から築いていく必要があるインディペンデント・アーティストにとっては、なんとも至れり尽くせりな支援ではなかろうか。

アーティストを支える教育プログラム
「B-Side School」

コミュニティ活動の一環として、アーティストを支える教育プログラム「B-Side School」を開催。

アーティストの活動は、なにも楽曲制作だけとは限らない。今年7月に開講を予定しているB-Side Schoolでは、アーティスト自身が持続的に活動を続けていくためのスキルアップや、マインドセットを共に考えていく講座を実施予定だ。

普段の制作活動とクライアントワークとのバランスや持続的な活動システムなど、手探りで進めていくには困難な課題を専門家による講義やワークショップを通すことで、各アーティストに合ったスタイルで確立していけるよう支援していくという。

国内外の業動向を網羅する
「B-Side THINK TANK」

3つめは、シンクタンクとしての機能だ。

音楽クリエイター分野の多様なステークホルダーと連携しながら、最先端のテクノロジーや国内外の業界動向に関する調査報告を実施する「B-Side THINK TANK」を設立。

「情報を制する者は戦いを制す」とはよく言ったものだが、単独で活動しているとなかなか入ってこないであろう制作側の情報やリスナーのニーズは、制作段階においても重要な役割を持つことは間違いないだろう。

“持続的なエコシステムの構築”とは?

コミュニティ主催者らは言う。「これら軸となる3つの機能の相互作用こそが現代社会における音楽の価値や役割とはなんなのか?を問い直すことに繋がる」と。

手軽にそして気軽に音楽が手に入るようになった現代、一つひとつの曲がプレイリストを構成する単なる一要素になったり、月間リスナーを増やす目的のみに終始したり……音楽に対する“価値の尺度”は、以前よりも随分と曖昧になってしまった印象を受ける。

そんな時代に、あえて「アーティスト・ファースト」の意思決定を推し進め、音楽業界におけるインディペンデント・アーティストの地位を確立し、新たなエコシステムの構築を目指すB-Side Incubator」。彼らの哲学にインディー・ミュージックをこよなく愛する一人として、魂の震えを覚えた。先のSpotify「支払ルール変更」に違和感を抱き、ビッグアーティストを優遇する業界のあり方に対して悲観していた矢先のこの話題だっただけに。

環境問題におけるエコシステムの循環も、一部の努力だけでは改善をなし得ない。それは音楽業界でも同様のはず。リスナーである私たちも含め業界内外の多様な結びつきが存在するからこそ、持続的なエコシステムが出来上がっていくのだろう。

今、まさに独立して音楽活動を続けるミュージシャン、音楽でキャリアを築いていきたいと本気で考えている若い世代にこそ、この記事が届きますように。

©B-Side Incubator

最後に、コミュニティ立ち上げを記念して「B-Side Incubator Launch Party」が5月16日に開催される。

プロジェクトの紹介やトークセッションを起点に、「インディペンデント・アーティストの未来」について来場者と共に議論を深める内容になっているそうだ。

B-Side Incubator Launch Party

【日時】5月16日(木)19:30〜21:00(開場19:15)
【場所】MIDORI.so SHIBUYA / CryptoBase (東京都渋谷区桜丘町16-13 桜丘フロントビルⅡ3F)
【参加費】無料
【参加方法】申し込みは専用フォームから

Top image: © 一般社団法人B-Side Incubator
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。