イチロー×豊田章男社長が語る「理想のリーダーと強いチームの条件」

マイアミ・マーリンズに所属するイチローとトヨタ自動車の豊田章男社長の“対談シリーズ”第3弾。

今回のテーマは「リーダーシップ」。野球界と自動車業界それぞれのフィールド­で戦い続けてきた両者が、それぞれの“リーダー論”を熱く語ります。果たして、本当に強いチームとは。そして、理想のリーダーとはーー。

「リーダーは“空気”のような存在が理想」

スクリーンショット 2015-12-23 18.07.14

豊田 私の理想では、トップの役割は「決めること」と「責任を取ること」です。社長の仕事とは何だろうと考える出来事はたくさんありましたが、最終的に自分に期待されているのはこの2点。社長は後ろに控えていればいいと言う人もいますが、私はそうではありません。逆に、前に出ることが格好いいと思っています。

イチロー だからこそ、人がついてくるんでしょう。僕の周りのリーダーと呼ばれる人たちの中にも、発言はするけれど行動はできない人がたくさんいるんです。下の人たちは、その姿を見ているじゃないですか?そんなリーダーにはついていきたくないですもんね。

豊田 はい。

イチロー リーダーになれる人というのは、本当に限られた人たちなんだと思います。メジャーリーグには30の球団がありますが、監督として上手くチームを引っ張っている人は、数えるほどしかいない。選手の中でのリーダーもそう。誰かがいてチームがまとまるのが理想なんですが、それができているところはほとんどないんです。だから、野球界では、自分たちで考えて「リーダーを必要としないチーム」になることのほうが手っ取り早いというか、強いチームになりそうな気がするんですよ。

豊田 リーダーがいるかいないか分からない、“空気”のような存在ですよね。どちらかというと、私もそれを求めています。もちろん、危機のときは前に出ますが、そうでないときは空気のような存在が理想。いなくなると困るけれど、いても別に何とも思わない。ところが、世の中の“リーダー論”では、「なんでも知っている」「なんでも自分が指示を出す」ということが語られがち。そういうのは少し違うだろうと思っています。

イチロー そうやって簡単に言われがちですよね。でも、強いリーダーというのは、実はそれほど効力を発揮しない。

豊田 チームワークはあるけれど、そうは言っても野球は個々の能力が第一。それが結果としてチームワークになる。

イチロー そうなんです。でも、それを分かってない人たちばかりなんです。

豊田 なるほど。

「チームのためではなく、“自分のため”でもまったく問題ない」

スクリーンショット 2015-12-23 18.08.29

イチロー 分かりやすく言えば、一般的に「俺は自分のためにプレーしている」と言うと、チームの輪を乱していると受けとられる。ただ、そういう人が集まったとしても目指すところが同じであれば何の問題もない。というより、それが一番強いと思うんです。目指しているところが違うとややこしくなりますが、最終到達地点が同じならそれでいい。

豊田 いやー、わかります。

イチロー そもそもプロ野球は、そこら中の一番上手い選手が集まってきているわけですから、エゴの塊なんですよ。それなのに「チームのために!」と言っているのが気持ち悪くて。

豊田 (笑)。

イチロー 俺は自分のためにやる、でも目指すところはみんなと一緒なんだ、というチームがなかなかないんですよ。きっと、それを表現することが怖いんですよね。「みんなのために」と言っているほうが安全というか。すごく不思議なことに、アメリカでもそうなんです。だから、チームとリーダーに関しては毎年考えさせられます。

豊田 20歳以上も歳の離れた選手とプレーすることもあるかと思いますが、“リーダー”の役割を感じますか?

イチロー 同じアメリカ人であれば、おそらくそうなると思います。でも、実際には言語や文化の問題がある。今は15歳くらい離れた選手が多いのですが、それは日本人同士であっても難しいんじゃないかなと。ただ、彼らには僕の足を引っ張ろうとするところがまったくない。だから、すごく気持ちがいい。

豊田 それは年齢の問題?それとも、実績があってレジェンドのような域にいるからですか?

イチロー 確かに実績、数字が僕を守っているところはあります。でも世代もあると思いますね。

豊田 純粋に吸収したいという感じ?

イチロー そういう感じも見受けられます。それは今までにはなかなかなかったことです。

“実績”が大事な理由とは?

スクリーンショット 2015-12-23 18.11.46

豊田 逆に、若い選手から学ぶこともあるんですか?

イチロー あまりないです。が、これだけ純粋に野球に打ち込めたらいいなというところはあります。ただ、逆に言うと、それは彼らがまだプロになりきれていないということでもあると思うんです。

豊田 これは勉強になります。

イチロー 子どもの時のように野球を楽しみたいのであれば、プロにはなってはいけない。プロなのに「俺は楽しんでいるぜ」と言っているような選手は大したことないと思います。

豊田 なるほどね。

イチロー 今の若い世代の人たちは情報がたくさんありすぎて、頭で覚える人が多い。こういう状況では、気持ちをこう持っていくとか。彼らはそれを体験しているわけではないので、頭でしか理解していない“弱さ”があるんですよね。だから、「何を言うか」を重要視しているように見受けられる。でも、何を言うかではなく、本来は「誰が言うか」ですから。プロで10年プレーして実績を残している選手とルーキーとでは、同じことを言ったとしても、重みや意味が全然違います。だからこそ、時間や実績が大事だということが言えると思うんです。

豊田 「誰が言うか」ということは本当に重要ですよね。私が何を言ったとしても、“私が言っているから”素直に聞いてくれるというところもあります。たとえば、公聴会で私が謝罪をすると、現在と過去、未来をまとめて謝罪しているように、あるいは仕入れ先と販売店、トヨタ自動車を代表して謝っているように聞いていただける。そこはある意味ではものすごく強みではないかと。

イチロー それを作っていくことが生きていく意味なのではないかという気がします。勉強して何を言うかというより、狭い世界でもいいので自分の中から何かが湧き出てくる、生み出されるような生き方ができたらいいなということが基盤にあるのではないでしょうか。


890-2015-12-22-20.59.01
【特別対談】イチロー×豊田章男社長 「成長するということ」
chiro-akio-toyoda-02.01
【特別対談】果たして、ピンチは本当にチャンスなのか? (イチロー×豊田章男)
ichirotoyoda04
【対談】イチロー×豊田章男 「言葉へのこだわり」

 Licensed material used with permission by トヨタ自動車株式会社

マイアミ・マーリンズに所属するイチローとトヨタ自動車の豊田章男社長。フィールドこそ違えど、ともに世界を相手に戦う両者の対談が実現した模様です。今回は計10...
マイアミ・マーリンズに所属するイチローとトヨタ自動車の豊田章男社長の“対談シリーズ”。最終回は「言葉へのこだわり」について。「イチローさんと話をしていると...
マイアミ・マーリンズに所属するイチローとトヨタ自動車の豊田章男社長の“対談シリーズ”第2弾。今回は「ピンチとチャンス」がテーマです。「ピンチはチャンスだ!...
人望が厚いリーダーのもとでは、部下がやる気を持って仕事に取組み、プロジェクトが成功に導かれていきやすいです。どのような資質がリーダーに求められているのでし...
米大リーグ通算3,000安打まであと「1」として迎えた、日本時間8月8日(月)のコロラド・ロッキーズ戦。マイアミ・マーリンズに所属するイチローは、第4打席...
Your browser does not support iframes.マイアミ・マーリンズに所属するイチローが、日本時間2015年10月5日に行われ...
面接やプレゼン、商談など、成功に向けてあらかじめ準備するのは当然かもしれませんが、あなたはその準備をどれだけ大切にしているでしょうか?イチローが成功をおさ...
どちらも、組織を率いる“長”であることには変わりありません。が、両者の本質は明らかに異なっているようです。その差は米メディア「WittyFeed」で紹介さ...
2015年10月に、念願だったという“投手デビュー”が話題をさらったイチローが、再び国内外のファンを熱くさせています。実は、所属するマイアミ・マーリンズか...
いまや、ワンマンなボスではなく、部下のやる気を奮い立たせるようなリーダーが重宝されるようになりました。そこでライターのMarcel Schwantesさん...
光あるところには必ず影があります。しかし、イチロー選手はその影の部分、すなわち一流アスリートならではの苦しみやプレッシャーすらも、みずからの技量の向上や精...
「好きなことを仕事にしている人」は、ほんのひとにぎりかもしれませんが、「仕事で好きなことを見つける人」なら周りにもけっこういるのではないでしょうか?なぜ、...
将来の明暗を分けるのは、正しい習慣を身につけるか、間違った習慣を身につけるかにかかっています。概して日本人は控えめに自己表現をしてしまいますが、言葉とはお...
「いま、小さなことを多く積み重ねることが、とんでもないところへ行くただひとつの道なんだなというふうに感じています」これはイチロー選手が、メジャーリーグの年...
あなたにとって、理想のリーダー像とは?的確な指示をくれる人、チーム員に優しい人、叱るべきときに叱ってくれる人など、それぞれ求めるリーダー像は違うでしょう。...
イチローが前人未到の境地に達したのは、彼が生まれもってアスリートとしての能力を持ち合わせていたからではありません。彼に才能があるとすれば「自らの能力を活か...
現代では、チームのリーダーに女性が任命されることも少なくありません。中でも、子を持つ「母親」はそのポジションに最適なのだとか。そう主張するのは、ライターで...
「行動力」とは、前進する姿ばかりを指すのではありません。時に立ち止まり、自分を見つめ直すことこそが「行動力」なのです。それを踏まえて、部下から信頼されるリ...
会社や学校・あるいはスポーツのチーム、十分なコミュニケーションは取れているでしょうか?実はチームワークの生産性を上げるために最も大きな影響を与えるのは、「...
どんな組織のトップでも、周囲が期待するようなトップにふさわしい要素を最初から持っているわけではありません。「地位が人を作る」という格言がありますが、その地...