アメリカに、究極の「光る泥だんご」を追求する男がいた!
ニューメキシコ州アルバカーキに、究極の「光る泥だんご」を追い求め、日々研究と実験を重ねている男がいる。ブルース・ガードナーだ。
きっかけはある人物からこの「文化」を教わったこと。ウィリアム・ギブスンという名前を聞いてピンと来るだろうか。知る人ぞ知る著名な作家だ。SFやサイバーパンク、スチームパンクといった世界観に影響を与えた人物として知られている。
いくつか作品画像を紹介しよう。
幼いころにつくったことがある人も多いであろう「泥だんご」。砂をかけて磨くことで、まるで宝玉のごとく輝くが、見るとおわかりの通り、ただ光っているだけではない。
彼のストイックな1日は、まず土探しから始まる。
より素晴らしい泥だんごをつくるには、土の良し悪しも肝心だ。
ザクッ。
土を持ち帰ると、専用の器具へと移す。
網を使って、きめ細かな土へと再構築。
水を混ぜてだんごをこねていく。
砂をまぶし、磨く。
さらに、繰り返していく。
使用する素材によって、違った表情の作品が生まれるそうだ。
ズラリ。
輝きが眩しい。
自然にできる模様も魅力的だ。
途方もない数の作品が並ぶ。一体どれだけの修行を積んできたのだろうか。
ちなみに、彼がこの芸術品のルーツを辿って行き着いたのは、「日本泥だんご科学協会」なる組織だったそうだ。
ルーツは、日本?
英語名は「Association of Nippon Doroーdango Science(ANDS)」、日本語略称は「アンズ」。彼が参考文献としてHPに掲載していた、同協会の加用文男理事長を取り上げた「Web Japan」の記事には、泥だんご研究のきっかけが記されていた。
1999年、加用理事長は教育研究の一環として幼稚園を訪ねた。園児たちと泥遊びをしていると、ある子どもにこんなことを言われたそうだ。
「ホンモノの泥だんごを見せてあげる」。
そうして目の前に現れたのが「光る泥だんご」だった。とはいえ、他の作り手には再現できなかったらしい。そこで、電子顕微鏡を使った数百回に渡る分析を経て、誰にでも真似できる方法を確立したのが、何を隠そう加用理事長である。
無論、この特別な泥だんごを作って楽しんだ人々は過去にもいただろう。しかし、ごく一部の才能ある人々だけに許されていた遊びが、彼の手によって万人が楽しめる娯楽となったのだ。その功績は大きい。
そして、加用理事長が研究してきた作法を取り入れながら、独自のテクニックを加えて改良版を作ったと豪語するのが、ここで紹介しているブルース・ガードナーという男なのだ。最後に、彼の技法を紹介しよう。
ブルース・ガードナー式
「光る泥だんご」の作り方
ステップ1:土作り
キレイなコンテナに、水と土を入れる。土の種類によって水の量は異なるが、少しずつ混ぜながら、パン生地のような柔らかさになるまでゆっくりと追加していく。
ステップ2:コアをつくる
手の土をとり、両手で球体へと形作っていく。この時、できるだけ水分を絞り出す。形を丁寧に整える。もし欠損が出た時は、擦ったり、水を増やしたり、ギュッと圧縮すると消せる。ベトベトした球体ができたら、次だ。
ステップ3:カプセル層をつくる準備
片手で泥だんごを持ち、片手で砂をまぶしかける。上の動画にもあったように、親指でならしていく。これについては、加用理事長による説明が詳しい。が、そこに加えたいのは、砂が泥の水分を非常に急速に吸収してしまう点だ。亀裂が入らないポイントを見極める必要がある。
ステップ4:水分を外に出す
ビニール袋に泥だんごを入れ、20分待つ。形を保つために柔らかく平行な場所に置くように注意。袋の内面に水滴が出たら、表面が湿ってくる。そうしたら袋から取り出し、ステップ3をもう一度。ひび割れが始まる前にもう一度袋の中に戻そう。
このステップ3と4の手順を、表面が革製品並みの硬さになるまで繰り返す。だんだん泥だんごの水分が外に出づらくなるのが分かるだろう。ここまできたら、冷蔵庫に入れて乾燥を早めても大丈夫だ。が、水分が外に出やすくなるので球体の下部が溶ける心配がある。
ステップ5:最後のカプセル層をつくる
「光る泥だんご」の表層は、美しい砂によって作られる。2つの方法がある。
オンサイト:砂が豊富にあるのであれば、細かなものを軽く手でパッティングして、優しく撫でる。
オフサイト:もし砂が限られているのであれば、網戸を使って砂をふるいにかけ、細かくしよう。防塵マスクは忘れずに。そうして作った細かな砂で、泥だんごを撫でていこう。
こうして表面の水分を完全に吸収する(見た目は粉っぽくなる)。そして、再度新しいビニール袋にこの玉を入れる。よりぶ厚いカプセル層をつくるには、この手順を出来る限り繰り返すこと。袋から出した後に、砂があまりつかなくなったら、艶を出す準備は完了だ。
ステップ6:磨き
袋から玉を取り出し、20分乾燥させる。柔らかい布で慎重にさする。ここで水分が残っていれば、すべては台無しだ。しっかり乾いた状態で磨こう。
※加用理事長が書いた『白玉法』によると、磨いたからと言って輝きが増すわけではないので注意が必要だそうだ。
土と水の芸術品とも言われている「光る泥だんご」の世界をもっと知りたくなったというあなたは、彼のWEBサイトや「日本泥だんご科学協会」公認と書かれている「泥だんごのWEBサイト」を見てみよう。
多彩な作品の数々は見逃せない。動画は必見だ!